名古屋鉄道は、株式会社電通名鉄コミュニケーションズとの連携により、電車内の中吊り広告に新しい価値を見出す「うえむくとうわむくプロジェクト」を2024年10月28日より開始している。
このプロジェクトは、中吊り広告を見上げることで気持ちや世の中が良くなるきっかけを創出することを目指している。第1弾として、愛知県の地域課題である「フラワーロス」に着目した「MORE FLOWER」を実施する。
愛知県は花卉出荷量で全国1位を誇るが、規格外の花が廃棄される問題を抱えている。この課題に対し、ドライフラワーフローリストの堀祐次郎氏が運営する「merry_go_round」と協力し、廃棄予定の生花をドライフラワーとして再利用した中吊り広告を製作。対象となる車両は2200系1編成で、2024年10月28日から11月17日までの期間、一般車4両に装飾される。
【企画のポスタービジュアル】
さらに、掲出後のドライフラワーは2024年11月20日から22日まで、名鉄名古屋駅の改札内に設置される専用ラックにて無料配布される予定だ。これにより、SDGsの目標である「つくる責任、つかう責任」の実現に向けた取り組みとして、花の新たな価値創造と環境問題への対応を目指している。
本企画を担当した、電通名鉄コミュニケーションズ(DMC)コピーライターの巽洋子氏によれば、「MORE FLOWER(モアフラワー)」プロジェクトは、2023年夏に名古屋鉄道からの「中吊り広告の価値向上」という課題をきっかけに始動したという。社内から集まった168件のアイデアの中から、名古屋鉄道との協議を経て選ばれた企画だそうだ。
クリエイティブ面では、本物のドライフラワーにこだわったことが特徴的だ。巽氏は「ドライフラワーフローリストの堀さんの作品の魅力を最大限に活かすため、透明の真空パックという形で車内掲出における課題をクリアした」と説明する。また、フラワーロスという社会課題に対しても、重いメッセージではなく、通勤・通学者が自然に「花って素敵だな」と感じられるようなデザインとメッセージング手法を採用。さらに、掲出後の作品を自由に持ち帰れるようにすることで、家庭でも継続して花を楽しめる工夫を施したという。
展開方法として中吊り広告を選んだ理由について、巽氏は「スマートフォンを見ながら俯きがちな電車内で、ユニークな中吊り広告によって人々の気持ちを上向かせたい」という想いがあったと語る。また、広告会社向けには「一定時間、生活者と同じ空間にある中吊り広告には、まだまだ可能性がある」とし、新たなアイデアによる中吊り広告の可能性に期待を寄せている。
「これからも見た人の気持ちや世の中が上向くようなアイデアを発信していきたい」と巽氏は今後の展開に意欲を示した。
名古屋鉄道は今後も、従来にない革新的な中吊り広告を通じて、広告媒体としての価値向上と社会課題の解決に取り組んでいく方針だ。