国立大学で導入が進む大学施設内のネーミングライツ(命名権)。第2回目のインタビューは国立大学法人宮崎大学です。ネーミングライツ導入の背景や各施設の特徴について施設環境部企画管理課次長の湯野様、施設環境部企画管理課施設マネジメント係長の瀬戸山様にお伺いしました。
スローガンは「世界を視野に地域から始めよう」
――宮崎大学の特色を教えてください。
本学は「世界を視野に 地域から始めよう」のスローガンのもと、生命科学、環境科学、エネルギー科学、食の科学などを中心に、分野を超えた、融合的で特色ある高度な学術研究成果を世界へ発信しています。
教育学部、医学部、工学部、農学部、地域資源創成学部の5学部からなる総合大学で、学生は5,500人弱、附属学校園の生徒・児童が1,200人強、常勤の教職員が約2,300人程度在籍しています。九州地域出身の学生が多く、特に宮崎県出身の学生が多いのが特色です。
主要キャンパスは、木花キャンパス、清武キャンパス、船塚キャンパス及び花殿キャンパスの4か所です。
木花キャンパス:教育学部・工学部・農学部・地域資源創成学部 |
医学部がある清武キャンパスには医学部附属病院も設置されています。その他に農学部の実習用の演習林及び水産実験所などを含めると11のキャンパスが県内に点在しており、様々な取り組みを行っています。
スローガンにあるとおり「地域との連携」を重視していて、いろいろな公開講座を実施しています。農業体験・林業体験・マラソン体験などは本学キャンパスを使って地域の方にも参加いただいています。
地域住民が利用できる附属図書館などの施設にもネーミングライツ制度を開放
――宮崎大学ではどのような施設でネーミングライツを募集されていますか?それぞれ特徴を教えてください
ネーミングライツを実施しているのは主に木花キャンパスです。
メインストリート
メインストリート
キャンパスを南北に貫き、理系の建物と文系の建物をつないでいる道路がメインストリートです。中央には大学生協や図書館などがあり、学生の活動の中心になっています。
メインストリート沿いへの看板設置や、既存掲示板への企業案内の掲示等を想定しています。企業様にとっては学生リクルートや認知度向上のメリットがあると考えています。希望ネーミングライツ料は100万円(年間/税別)です。
工学部B棟
工学部B棟1階111講義室
工学部の講義室等のネーミングライツです。部屋により異なりますが、希望ネーミングライツ料は10万円~20万円(年間/税別)です。
部屋の入り口扉付近にネーミングの表示やリクルート掲示板の設置を想定しており、ネーミングの表示場所やデザイン・大きさなどは協議により決定します。すでに2021年3月から1部屋について、福岡にある空調等の各種設備工事の設計・施工を行う会社様と契約を締結しており、契約会社様からは工学部学生のリクルートが目的と伺っています。
宮崎大学附属図書館
宮崎大学附属図書館:建物全体でのネーミングライツ可能
木花キャンパスの中心に位置する附属図書館で、2020年7月からの1年間で約147,000人が利用しています。
建物全体への命名だけでなく、1階のイベント・展示会を開催できるオープンスペースや3階の授業やゼミなどができる各居室に個別に名前を付けることもできます。
3階itanoma:授業、イベント、ゼミ、グループ学修等で利用
希望ネーミングライツ料は、建物全体の場合500万円(年間/税別)、ワークスペースや居室は15万円~(年間/税別)になります。
「『共創の場』としての図書館」をコンセプトに2020年に7月にリニューアルオープンしました。本学は地域連携を重視しており、学生や教職員だけでなく、地域の方々も利用可能です。学生のリクルーティング目的だけでなく、地域の方へのアピールも可能です。(※2021年8月現在、新型コロナウイルス感染防止のため、一般の方の入館を制限中。)
募集要項に記載しているとおり、どの施設もホームページや広報誌を通じて愛称の普及に努めますので企業のイメージアップ戦略が期待できます。
- 公式ホームページでの紹介
- 構内案内図
- 各種印刷物(大学概要(約2,000部)、イベントの案内文等)
- 就職情報掲示板での紹介
- 対象施設にパンフレット、掲示板を設置し、イメージアップ・リクルート活動が可能
なお、希望ネーミングライツ料に達しない場合でもご応募は可能です。
――太陽光発電システムのネーミングライツ契約を締結したと伺いました。
地場企業のニュースターコミュニケーションズ株式会社様と契約を締結し、2021年4月から集光型太陽光発電システムの愛称を「NSCエネルギースクエア」としています。募集開始してからすぐに応募がありました。
本学ではキャンパス内の各所に様々な種類の太陽光発電を計約210kW設置しており、高効率化等に向けた研究・実証実験を実施するだけでなく、発電した電力を学内の教育研究活動で消費しています。今回締結した「集光型太陽光発電システム」は、レンズで集光した太陽光を最適な角度で受けられるように自動でパネルを動かし太陽を追尾する仕組みです。
この太陽光発電システムは、地元の小中学生の課外授業等において見学の対象にもなっています。地域の方とともに環境問題を考えていくきっかけとなればと思っています。
NSCエネルギースクエア除幕式風景
ネーミングライツ対象施設も増加予定、企業のニーズを聞きながら提供内容を改良していく
――ネーミングライツ制度を導入されたのはいつからですか?始められた理由など教えてください。
2020年7月からです。対象施設は大規模改修を終えたばかりで注目度も高い附属図書館から始めました。その後、企業にニーズのありそうな太陽光発電設備や工学部の講義室等へと徐々にラインナップを増やしてきました。
ネーミングライツ制度の導入は、施設の維持管理費の確保が一番の目的です。本学を含む国立大学は、運営費交付金が削減されており、それに代わる収入を探らなければならないという事情があります。研究活動に対するお金は、国からはもちろん、寄附金制度や「宮崎大学基金」などで、本当にいろいろな方からご支援いただいています。ただ、建物の維持管理など関しては制度が十分ではありません。ネーミングライツを通じて新たな収入源を確保できればと考えています。ネーミングライツに関しては建物や部屋に名前を付与できるため、その維持管理への利用は企業様からもご理解いただけるものと考えています。
――募集のプロセスを教えてください。
HPに募集要項を掲載していますので、内容をご確認の上、申込書の提出をお願いします。応募は随時受付中です。応募から1か月経過後に他社からの応募を締め切り、学内の委員会で決定します。表示名や表示内容、企業案内の掲載等については、契約締結時に企業様と打ち合わせをしていきます。全体としては契約まで2か月程度と考えています。
――今後の展開を教えてください。
地域とのかかわりを重視していますので、地元宮崎に興味を持っていただけている企業や、宮崎を盛り上げていきたいとお考えの企業とご一緒させていただきたいと思っています。
今後もネーミングライツの対象施設数は増やしていきたいと思っています。学生への周知や知名度向上の施策は、募集要項に記載してあるものだけでなく、企業様からの要望や提案も前向きに検討していきたいと思っています。
※記載の内容は、2021年9月1日現在のものです。