多数の購読者に閲覧してもらえることが魅力の新聞広告には、バラエティに富んださまざまな事例があります。今回は、新聞広告の事例7例をピックアップしそれぞれの新聞広告の内容について紹介します。
トラック運転手の標準運賃に対する理解を広めるための新聞広告
出典:【きつめのやばい】状況下のトラックドライバーに対する【標準的な運賃】理解促進PR
一般社団法人大阪府トラック協会は、未曾有のコロナ禍においても欠かせない職業であるトラック運転手の標準運賃に関する新聞広告を掲載しました。コロナ禍においても、トラックによる輸送は社会にとって欠かせません。ですが過酷な労働環境や運転手の高齢化が原因で、トラック運転手の数は年々減り続けています。
この厳しい状況を打破するため、令和2年に国土交通省はトラック運転手の標準運賃を明示しました。これはに国が以前から推進している、働き方改革の一環です。社会に欠かせない職業のトラック運転手を経済的に支えるには、荷物を輸送する依頼主などに対して標準運賃への理解を広める必要があります。
トラックの後方扉部分に「きつめのやばい」と、誰が見てもわかるように大きく印字されています。この言葉は、大ヒット作品の「鬼滅の刃(きめつのやいば)」のアナグラムです。
トラック運転手への不当な賃金や労働環境を是正するため、全方位に対して切実に訴えかけた新聞広告です。
「進撃の巨人」コミックス最終巻の34巻発売を記念した新聞広告
出典:『進撃の巨人』最終巻でエレンが異世界転生⁉ ~朝日新聞 朝刊に最終巻予告の15段広告を掲載~
2021年6月9日に、大ヒット漫画「進撃の巨人」の34巻が発売されました。同作はコミックスの累計発行部数が世界で1億部以上を記録している、歴史的大ヒット漫画です。同作をもとにしたハリウッドでの映画化が決定しているなど、日本が世界に誇れる漫画作品です。
34巻は同作のコミックス最終巻でその発売を多くの人に告知するため、朝日新聞に大きな広告が掲載されました。
新聞広告は、同作の主人公のエレンが異世界(日本)に転生するという内容です。この新聞広告は作者の諫山創先生が完全な新作として描き下ろしており、34巻の内容を期待させる予告となっています。作者の諫山創先生は、これまでコミックスの巻末にて今回の新聞広告のような、いわゆる“嘘予告”と呼ばれるコンテンツの掲載を継続していました。その流れがあっての新聞広告なので、多くのファンから注目を集めて話題になりました。
「宇崎ちゃんは遊びたい!」のコミックス6巻の発売を告知する新聞広告
出典:【本日!】『宇崎ちゃんは遊びたい!』5紙朝刊で一斉全面広告!
2021年3月9日、株式会社KADOKAWAは人気漫画「宇崎ちゃんは遊びたい!」6巻の発売を告知するため、朝日新聞や読売新聞など計5紙に新聞広告を掲載しました。
同作は、累計の発行部数が紙と電子の合計で150万部を突破している大ヒット漫画です。2020年7月~9月には、待望のテレビアニメが放送されました。アニメ放送で同作はさらに人気に火がつき、2期の制作が決定しました。漫画ファンにとってもアニメファンにとっても注目の作品です。
そんな飛ぶ鳥を落とす勢いがある同作の6巻の発売を告知した新聞広告の内容は「ウザいというより、ウザカワです。」がキャッチフレーズの短い漫画です。キャッチフレーズは同様ですが、漫画から切り取られたシーンは各5紙でそれぞれ違います。同作のヒロイン宇崎花のウザカワな魅力が、余すところなく伝わる広告の出し方です。
ファンが5紙すべてに目を通したくなるほど、非常にユニークな新聞広告です。
「学校は行かなくてもいい」の著者の小幡和輝さんが新聞広告でメッセージを発信
出典:『学校は行かなくてもいい』著者の小幡和輝は、中高生の自殺が最も多い9月1日に、故郷和歌山の新聞に広告を掲載しました。
2020年9月1日のわかやま新報で「学校は行かなくてもいい」の著者の小幡和輝さんが、新聞広告という形式で多くの人に向けメッセージを発信しました。
広告に派手な装飾は一切なく、小幡和輝さんの非常にシンプルなメッセージだけが掲載されました。「9月1日の自殺者数を少しでも減らしたい」という、小幡和輝さんの強い願いがこもった新聞広告です。
ウソを夢に変えるエイプリルドリームプロジェクトの新聞広告
出典:4月1日。April Foolを、April Dreamに。「夢」を発信する企業の募集を開始
2021年2月25日、株式会社PR TIMESはウソを夢に変えるエイプリルドリームプロジェクトの実施を前に、参加を広く募集する新聞広告を日本経済新聞に出しました。
これまで4月1日は、ウソで人を楽しませるエイプリルフールとして認識されてきました。ですがこれからはウソを夢に変え、夢の日にしたいと同社は願っています。そこでエイプリルドリームプロジェクトの実施とその参加者を集めるために新聞広告を出しました。紙面には「ウソつきをヒーローにしよう。」のキャッチコピーと、テリーこと湯村輝彦さんのピンクを基調として描かれたイラストが掲載されました。
エイプリルドリームプロジェクトは、2020年から始動しています。コロナ禍ながら多くの企業と人がこの活動に参加し、ウソではなく夢についてそれぞれ発信しました。新聞広告には、2020年に参加した企業の社名が掲載されています。「ウソつきをヒーローにしよう。」という強いメッセージがこめられた新聞広告です。
「PR、14の使命」を表明した新聞広告
出典:たとえ読まれなくても、ぜんぶ書く。PR、14の使命を日経新聞に掲載 [PR TIMES企業広告]
2020年8月24日、株式会社PR TIMESは「PR、14の使命」という新聞広告を日本経済新聞に掲載しました。同社はプレスリリースを配信するサービスを行っており、この新聞広告では「PR、14の使命」として、今PRに必要だと考える14項目を箇条書きでわかりやすく表明しています。
「PR、14の使命」は、今後の同社の在り方やプレスリリースに対する決意表明を新聞広告に掲載しています。もちろん読んだ人にPRについて考えてもらう啓発の意味もあります。
新聞広告は文字だけでイラストはなく、非常にシンプルな構成です。同社のPRへのスタンスがよくわかる新聞広告です。
長引くコロナ禍で飲食店を守るための意見が掲載された新聞広告
出典:【5/24(月)企業広告】「獺祭」日本経済新聞に意見広告を掲載しました
2021年5月24日、旭酒造株式会社は、飲食店を守るための意見広告を日本経済新聞に掲載しました。
収束の兆しが見えずどこまでも長引くコロナ禍により、全国の飲食店は窮地に立たされています。コロナ禍に耐え切れず飲食店が次々と閉店すれば、納入業者も含めて飲食業界全体が大きな損失を被ります。同社は飲食店を守ることは人の命を守ることにもつながると、新聞広告にて意見を発しました。感染拡大も飲食店の閉店もさせないためには何が必要なのかを、多くの人に広く訴えかけています。
飲食店をはじめとした飲食業界が活力を取り戻さないことには、地域及び日本全体の経済は上向きません。より合理的な対策とは何なのかを考える機会となったのではないでしょうか。
まとめ
個性豊かな新聞広告のさまざまな事例を7例、ピックアップして紹介しました。ユニークな漫画による新聞広告や、広告主の切実な思いがこもったメッセージ性の強い意見広告など、各社の工夫を感じられる広告の数々でした。
コロナ禍の厳しい状況が続いていますが、そんな中でもさまざまなアイデアをもとに新聞広告が制作されています。今後も引き続き注目していきましょう。