新聞と言うとアナログな媒体と思われがちですが、SNSやインターネットとの親和性は高く、たびたび新聞で出された広告が話題になる事もあります。
今回は、特に面白い新聞広告7選をまとめました。
大日本除虫菊株式会社 キンチョールの折り紙型新聞広告を掲載
大日本除虫菊株式会社が販売するキンチョールの新聞広告です。紙面の半分以上を黒い面と白い線が占めていて、下側にはキンチョールの商品パッケージがデザインされています。キンチョールの新聞広告だとわかるものの、紙面の大半を占める黒い面と白い線がいったい何なのかすぐにはわかりません。
実は黒い面と白い線は折り紙になっていて、紙面左下に記載されたQRコードを読み取ると作り方を説明した動画にアクセスできます。この動画は55分弱あり、動画の通りに折り紙を折っていくとゴキブリが完成します。キンチョールはハエや蚊が退治できることはよく知られていますが、それらの害虫以外にゴキブリも退治できるとわかる非常に面白い新聞広告です。
同社がこうした面白い新聞広告を出したのは、ネット上での話題性を狙ってのものです。一目見ただけではどんな新聞広告なのかよくわからないことが話題になるのではないかと、宣伝部は期待したのです。その期待通り、この新聞広告はSNSを賑わせました。斬新で見た人を自然と引きつける面白い新聞広告です。
味の素株式会社 「最初の晩餐」にて新聞広告賞を受賞
出典:新聞広告データアーカイブ「新聞広告賞2013 第33集」
2013年3月24日に大分合同新聞に掲載された「最初の晩餐」は、新聞広告賞を受賞しました。広告タイトルからイメージできる通り、参考モデルになったのはレオナルド・ダ・ヴィンチが生んだ名作「最後の晩餐」です。
広告では9人の赤ちゃんが離乳食を初めて食べ、かわいらしいさまざまな表情を見せてくれています。赤ちゃんには、甘いや酸っぱいや苦いなど味覚のテーマがそれぞれ設定されています。赤ちゃんたちがこれからいろいろな味を経験しながら成長していくことをユーモアたっぷりに表現している、面白い新聞広告です。
赤ちゃんが毎日体験する晩餐を陰ながら支えていきたいという同社の企業理念が自然と伝わってくるため、高評価を獲得して新聞広告賞を受賞する運びとなりました。現役子育て世代の心をつかんだ面白い新聞広告です。
株式会社幸楽苑 年末年始に全店休業する新聞広告の「0億円事件。」と「人間は、不便に戻れる。」を掲載
出典:幸楽苑HP「0億円事件」
2019年12月31日、株式会社幸楽苑は年末年始に全店休業を伝える新聞広告の「0億円事件。」と「人間は、不便に戻れる。」を、それぞれの媒体にて掲載しました。
「0億円事件。」とは、前年に発表した「2億円事件。」と関連しています。年末年始に休業すると約2億円の損失となるため、前年は「2億円事件。」と題した面白い新聞広告を掲載しました。前年と同じように全店休業しても、前年比で売上が減少するわけではありません。そこで継続性の意味を込めて、今度は「0億円事件。」と題した面白い新聞広告を掲載しました。
また「0億円事件。」以外に「人間は、不便に戻れる。」も掲載しました。便利が当たり前になったことが人に負担をかけ過ぎていることを訴えかける意味が込められており、前述の「0億円事件。」に負けず劣らず面白い新聞広告です。
新聞広告の内容は大きな反響を呼び、同社が開設したSNSのアカウントには過去最高数のいいねがつきました。
アース製薬株式会社 危険な虫への注意喚起を促すAR体験型新聞広告を掲載
2021年6月4日、アース製薬株式会社は、消費者に危険な虫への意識を高めてもらうためのAR体験型新聞広告を各紙に掲載しました。同社は従来「殺虫剤」と称されていた商品ラインナップを「虫ケア用品」へと変更しました。これは「殺虫剤」に含まれる「殺」の文字が、怖いイメージを与えてしまうからです。
新聞一面には大きく「閲覧虫意」と印字され、4文字の真ん中にはQRコードがあります。このQRコードを読み取ることでリアルな虫のARを体験できる、面白いアイデアの新聞広告です。
この新聞広告が面白いのは、虫が1匹たりとも紙面に掲載されていない点です。見た人に「どんな虫が危険なんだろう」と、自然と興味を持たせる構成です。身近に潜む危険な虫についてよくわかる面白い新聞広告です。
株式会社豊島園 「としまえん」の閉園前に感謝の意を伝える新聞広告を掲載
出典:としまえん新聞広告に、あしたのジョー「Thanks.」まっ白な灰になった遊園地
2020年8月31日に閉園したとしまえんを運営していた株式会社豊島園は、閉園前に面白いアイデアの新聞広告を掲載しました。新聞一面には大人気ボクシング作品の「あしたのジョー」の主人公矢吹丈が、椅子に座って下を向く姿が描かれています。左上に「Thanks.」の文字と右下にはとしまえんのロゴがあるだけで、他には一切文字が書かれていません。
非常にシンプルですが、見ただけでどんな思いが込められているのか伝わるインパクトの強い新聞広告に仕上がっています。
としまえんは、開園から95年弱の長い歴史があった遊園地でした。それだけに今まで出された広告は多種多様でしたが、最後はシンプルながらもメッセージ性の強い面白いアイデアの新聞広告を出しました。明るくて笑える内容にはせず、広告に描かれている矢吹丈のように、すべて出し切ったことを伝える内容でした。見た人が思わずとしまえんの感慨にふけるような新聞広告でした。
大日本除虫菊株式会社 「ゴキブリムエンダー」のユニークな新聞広告を掲載
出典:大日本除虫菊株式会社 新聞広告「もうどう広告したらいいのかわからないので。」
大日本除虫菊株式会社は、新発売の「ゴキブリムエンダー」をPRする新聞広告を掲載しました。家の中のゴキブリを一網打尽にできるのが売りのゴキブリ駆除剤です。商品の特長を消費者に深く理解してもらうため、KINCHOの頭文字に関連した設定シーンをQRコードで読み取る形式の面白い内容にしました。
広告の上部には「もうどう広告したら~」という見た人を驚かせるような内容の言葉が書かれています。コロナ禍で消費者の生活がどうなるかわからず広告担当者は頭を悩ませていましたがそのまま広告にする方針となり、今回の面白い新聞広告を出すことになったのです。
また発端は新聞広告ですが、それだけでは終わらせずSNSと連動させて拡散させる狙いもありました。コロナ禍で外出を控えネットの利用が増えた消費者をターゲットにした新聞広告です。
株式会社電通 「敵は、嘘。」の30段新聞広告で数々の賞を受賞
2019年1月7日、株式会社電通の制作スタッフは「敵は、嘘。」と題し嘘をメインテーマにした新聞広告を、読売新聞と日刊ゲンダイの全国版に掲載しました。新聞広告の一面には、イタリアのローマにある真実の口に人が手を入れようとする写真があります。右下には「敵は、嘘。」のキャッチコピーがあり、その左側には広告の説明文が記載されている面白い構成です。
世界のいたるところに嘘がはびこっている現状を憂慮し、同社の制作スタッフは制作しました。毎日のようにフェイクニュースが流れ、本当のことが見えにくくなっている時代に警鐘を鳴らす内容です。
この新聞広告には、嘘が当たり前になっているからこそ嘘についてもう1度向き合って欲しいという制作スタッフの切実な願いが込められています。メッセージ性の強さが高く評価され、2019年の広告電通賞・TCC賞・JAA広告賞を受賞しています。
まとめ
内容が非常に面白い新聞広告7選をまとめて紹介しました。
大日本除虫菊株式会社やアース製薬株式会社のように、昨今はWebと連動した面白い新聞広告が目立ってきています。また味の素株式会社のように、企業理念が伝わるような面白いアイデアの新聞広告もありました。
面白い新聞広告にはいろいろなパターンがありますので、各社が出稿する今後の新聞広告に注目していきましょう。