屋外広告の一つとして普及しつつあるDOOH(Digital Out Of Home、屋外デジタル広告)。
昨今では、通信回線やディスプレイ技術の向上によって様々な場所で屋外デジタル広告を見るようになりました。アナログで広告を掲示するOOH(屋外広告)と比べて、即時性の高さや広告売買の方式によっては低単価での掲載が可能など多くのメリットがあります。
既存の大手広告代理店以外も自社のネットワーク技術を使い屋外デジタル広告事業に参入するなど、競争が激化しているのも特徴の一つです。
本日は、そんな今話題のDOOHについて事例とともに解説していきます。
DOOH(Digital Out Of Home、屋外デジタル広告)とは?
DOOHとはDigital Out Of Homeの略称で、デジタルサイネージを利用したOOH(屋外広告)の総称です。電車のドア上部に設置されているものや新宿の交差点にある大型なものなど、私たちの日常に溶け込み情報を発信してくれています。
企業の広告など決まった情報を配信し続けるDOOHもあれば、即時性を高めることに成功した「ダイナミックDOOH」や「プログラマティックDOOH」など、その広告出稿の形は様々です。
ビズ男(初心者)
DOOHはデジタルサイネージを使った屋外広告っていうことでいいんですよね?
電車内にあるような小さなものも含めてこう呼ぶんですか?
アドクロ先生
そうですね。家の外で見る屋外サイネージ、ビジョンという認識で良いと思います。
DOOHと一括りに呼んでいますが、今や広告としての機能も多岐にわたります。
ビズ菜(ベテラン)
「ダイナミックDOOH」や「プログラマティックDOOH」は最近よく聞くようになりましたよね。
アドクロ先生
そうですね。「ダイナミックDOOH」は天候など外部情報をリアルタイムで広告に反映させられること、「プログラマティックDOOH」はリアルタイムで広告枠を売買できることが特長です。
詳しく解説しますね。
OOH(Out of home、屋外広告)
屋外で見かける広告物全般を指し、工事現場の看板広告や、街頭でのサンプリングなどもこのOOHに該当します。技術の発展に伴って少しずつOOHの中でもDOOHが占める割合は大きくなってきています。
ビズ男(初心者)
OOHにはいわゆる看板以外のものも含まれるんですね。
DOOHが普及しても完全にOOHがなくなることはないわけですね。
アドクロ先生
屋外看板と訳されることが多いですが、小さな広告物などもOut Of Home、家の外であればOOHとされています。
DOOHではカバーできない部分もありますので、今後もある程度共存していくことになりますね。
ダイナミックDOOH
インターネットとの接続やセンサーやカメラなどIoT機器との連動によって、天候など周辺の外部情報をリアルタイムで反映させた表示が可能な屋外デジタル広告です。
広告が見られているリアルタイムの状況を反映させることが可能なため、より広告効果を高めることができると言われています。
ビズ菜(ベテラン)
国内だと埼玉高速鉄道の「ダイナミックビークルスクリーン」が話題になりましたよね。
これは電車内の乗客数や、車外の天候などを広告に反映させられるんですよね。
アドクロ先生
予約販売型が多いDOOHの中で、国内初となるインプレッション(広告視聴数)販売型で広告出稿が可能な点も「ダイナミックビークルスクリーン」の特徴ですね。
インプレッション販売型での広告枠提供は、DOOH上部のカメラで広告視聴数を計測することで実現させたそうです。
その他にも、東京メトロが企業広告を桜の開花情報とリンクした内容で発信するなど、現在では様々なシーンでダイナミックDOOHが活用されています。
プログラマティックDOOH
プログラマティックDOOHは、SSP(Supply Side Platform)とDSP(Demando Side Platform)を利用したRTB(Real Time Bidding)で広告枠売買が可能なDOOHです。
DOOHをインターネットやIot機器と接続することで、リアルタイムな広告効果が把握できるようになったことで、この広告枠の販売方式が普及したと言われています。
ビズ男(初心者)
SSP?DSP?RTB…?
すみません、説明をお願いします…!
アドクロ先生
ビズ菜さんと一つずつ説明しますね(笑)
RTBは広告視聴者の情報(オーディエンスデータ)を把握し、リアルタイムで広告枠を売買できるシステムのことを指します。
ビズ菜(ベテラン)
SSPはSupply Side Platformの略で、広告枠の売り手側が使用するシステムです。
DSPはDemand Side Platformの略で、反対に買い手側が使用するシステムで、SSPと合わせて利用することでRTBを可能にしています。
ビズ男(初心者)
なるほど!見られる人の数や頻度でDOOHの広告枠の料金を決めて、リアルタイムで販売しているんですね。
つまり買い手側は広告枠の空きが出たらすぐに掲載されるんですよね?
アドクロ先生
売り手と買い手の条件がマッチすれば即時的な広告出稿が可能です。
買い手側は月あたりの広告費や1枠あたりの出稿料、希望枠などを予め入力しておくことで、条件に合う広告枠への出稿が可能となります。
DOOHの仕組み
DOOHの仕組みにはスタンドアロン型、ネットワーク型、インタラクティブ型の3つの種類があります。
スタンドアロン型
表示したいデータをUSBなど外部メモリに保存し、DOOHと物理的に接続することでデータをやり取りする方式です。
比較的小さな看板などに用いられることが多く更新にかかる人的負担が大きいため、定期的に更新が必要な広告には不向きな方式と言えます。
ネットワーク型
主流になりつつある方式で、DOOH自体がインターネットと接続されており、広告データの更新などをインターネット回線を使って行うタイプです。
大型ビジョンなど直接人が移動しにくい場所に設置されていたり、更新頻度の高いDOOHに適したタイプで、プログラマティックDOOHはこのタイプが用いられます。
インタラクティブ型
回転ずし屋で見るものや、大手書店の蔵書検索などに用いられるタッチパネルなどがこのインタラクティブ型DOOHに該当します。事業者や広告主以外の第三者が何かしらの動作を行うことができるものを指し、タッチパネルであることが多くなっています。
消費者自身が選択したという認識が強くなるため、満足度の高い購買が可能とアパレル業界などでも使用されています。
DOOHのメリット
DOOHには様々なメリットがあります。ここではDOOHのメリットとして以下の3点を挙げたいと思います。
- 視認性が高い
- 即時性が高い
- ターゲティング精度の向上
詳しく解説します。
視認性が高い
高解像度のデジタルディスプレイは視覚的に引き立ち、人々の注意を引きやすくなります。記憶にも残りやすく、インパクトのある広告展開が可能です。注目を集めやすいので、SNSでの拡散も期待できる媒体です。
即時性が高い
DOOHは既存のOOHと違い、掲示物の更新をデータで行えるため、即時性が高い点が特徴の一つです。IoT機器を含むインターネットやSNSとの親和性も高く、「ダイナミックDOOH」のようにリアルタイムの情報を反映させた広告表示も可能です。
ターゲティング精度の向上
DOOHは、GPSやWi-Fiなどの技術を活用して、ターゲット層の属性や行動履歴に基づいた配信を行うことができます。これにより、広告の無駄打ちを抑え、より効果的なターゲティングを行うことができます。
DOOHの市場規模
現在DOOHの国内市場規模は拡大の一途を辿っています。
デジタルサイネージ広告市場においては、2019年時点では749億円だった市場規模が2023年には1,248億円と約1.7倍となることが予想されています。※デジタルサイネージ広告市場規模推計・予測 2018年~2023年 CCI(CARTA HOLDINGS)/デジタルインファクト調べ
同調査ではデジタルサイネージ市場としては、交通機関(タクシーなど)が市場の約6割を占めると報告されていますが、屋外広告などのDOOH市場の拡大も予想されています。
ビズ男(初心者)
最近、タクシーでデジタルサイネージをよく見かけますよね。
主にBtoBの広告が流れている印象はあります。
アドクロ先生
今後5Gの普及などで、デジタルサイネージ自体の増加と合わせて、その広告出稿方法なども大きく変わるかもしれませんね。
DOOHの設置事例
DOOHは一つの大きな広告媒体として注目され、次々と新たに設置されています。
新宿K-DGキングウォール
京王線新宿駅の改札上部に設置された大型のビジョンで、2020年6月1日から広告が掲載される予定です。画素ピッチ4mmのLEDビジョンを採用し、大画面ながら高画質での掲示が可能な屋外ビジョンとして注目されています。
ビズ菜(ベテラン)
西口と百貨店口の2か所に設置予定なんですよね。
確か画素ピッチが細かく適正視認距離が近いのが特徴でしたよね。
アドクロ先生
画素ピッチは通常6mm程度のLEDビジョンが多いそうです。
改札上部という特性上、近くでも鮮明に見られる点に留意して作られているようですね。
ツタヤエビスバシヒットビジョン
大阪・道頓堀にあるTSUTAYA戎橋店に設置された大型ビジョンです。
観光名所の一つ道頓堀を象徴する大型ビジョンで、訪れる人の多さから広告効果の高いDOOHとして注目されています。
プログラマティックDOOHとしてRTBでの広告枠売買が可能になった点も話題となりました。
ビズ男(初心者)
あの道頓堀のビジョンで広告枠を購入できるんですね。
かなり高額になりそうではありますね…。
アドクロ先生
価格を抑えられるプログラマティックDOOHというのが最大の特徴です。
その都度広告枠の購入を行えるので、長期契約で広告を出稿するOOHより高い費用対効果が期待できると言われていますよ。
DOOHを活用したサービス事例
DOOHと言っても広告出稿の方法などその利用方法は様々です。インプレッション販売型のDOOHや、動画データの作成から広告出稿までをサポートするなど、場所やニーズに合わせたサービスが展開されています。
駅のビジョンとYahoo!パネルへの同時掲載が可能
東京メトロエージェンシーとYahoo!JAPANが展開する「チラシビジョン」が提携し、チラシなどの静止画データから動画を作成、広告出稿までをワンストップで行えるサービスを提供しています。
作成されたデータは、東京メトロ主要各駅のビジョンとYahoo!ブランドパネルへの同時出稿が可能です。
ビズ菜(ベテラン)
Yahoo!ブランドパネルはYahoo!ホームページのトップに出てくる広告のことですね。
ワンストップで作成から出稿ができるので企業にとっては使いやすいサービスですよね。
アドクロ先生
ブランドパネルも東京23区内でのみ広告表示されることで、精度の高いターゲッティングが可能です。
価格も比較的安く提供されているそうですよ。
駅のデジタルサイネージ広告とYahoo!JAPANブランドパネルの同時配信が可能に。
Logicad DOOH
「LIVE BOARD マーケットプレイス」と連携し、国内初のインプレッション販売型DOOHを提供しています。
「LIVE BOARD マーケットプレイス」で一元管理されている都内32面のDOOHに対して、NTTドコモが提供する人口統計システムとSMN株式会社が培ったRTB「Logicad」を活用することで、インプレッション販売が可能となりました。
ビズ菜(ベテラン)
人の多い少ないや、天候などを一気に都内のDOOHに反映させることが可能なんですよね。
即時性と多くのDOOHへの広告掲示が可能で使い方次第ではかなり高い広告効果が見込めそうですね。
アドクロ先生
今後もこの「LIVE BOARD マーケットプレイス」は拡張されていくそうですよ。
今は個別のビジョンへの配信設定はできないそうですが、いずれそこも対応可能になるかもしれませんね。
SMN、DOOHを利用した広告配信サービス「Logicad DOOH」を提供
DOOHの今後
5G回線の普及に伴って動画広告市場は急速に拡大し、屋外デジタル広告市場は多数接続性によって更なる発展を遂げていくと考えられます。
かつては、DOOHと言えば渋谷の交差点のような大型のLEDビジョンが主流で、広告宣伝費が大きくのしかかってくるものが主流でした。しかし現在では、技術の発展やDOOH設置数自体の増加によって、従来のOOHよりも高い費用対効果が期待できるサービスが提供されています。
今後は大小さまざまなDOOHがIoT機器と接続され、気軽に広告出稿が可能なサービスなども台頭してくるのではないでしょうか。
各地の主要駅周辺や電車内など、今や私たちの生活とは切って切り離せないDOOH(屋外デジタル広告)。地域の情報や速報性のあるニュースが放映されているケースも多く、我々の生活インフラと言っても過言ではない存在力があります。
広告業界内でも、今注目の媒体としてスポットライトを浴びており、スピーディーにかつ効果的に試せる媒体として引き合いも多くなっています。
広告が出稿できるデジタルサイネージは下記で一覧で見ることができます。是非チェックしてみてください。