「F1層」とは広告業界やマーケティング業界で使用される用語で、ターゲットの区分を表します。20歳~34歳の女性を指す「F1層」は、独身女性が多く自分のために自由にお金が使える世代。そのため、F1層は昔から広告やマーケティングにおいて最も重要視すべき層だと言われています。一方で、性別や年齢だけでターゲット像を把握するのは難しいとし、近年は「F1層」「F2層」といった考え方を古いとする意見もあります。今回は、広告やマーケティングにおいて重要な「F1層」について、その特徴や人気のメディアを紹介します。
F1層とは?
「F1層」とは、広告業界やマーケティング業界で昔から使用されてきた用語です。企業が新商品のリリースや広告を打つ際に想定するターゲットについて、性別と年齢をもとに大まかに分けたうちの1つの層を指します。具体的には、「F1層」の「F」は性別の「女性(Female)」、「1」が年齢の「20歳〜34歳」の意味。つまり、「F1層」は「20歳~34歳の女性」を示しています。他にも、「男性(Male)」を意味する「M」や、12歳以下の「子供(Child)」を意味する「C」などの区分が広告業界において使用されてきました。
近年の少子高齢化の影響で、日本におけるF1層の人口は年々減少しています。総務省統計局の発表によれば、2021年4月時点の日本人総人口は1億2541万人。女性の内訳を見ると、「F1層」にあたる20歳~34歳の女性人口は931万人、「F2層」にあたる35歳~49歳の女性人口は1,251万人、「F3層」にあたる50歳以上の女性人口が3,258万人でした。総務省統計局の資料からも、F1層は女性の中で一番人口数が少ない層だとわかります。
しかし、広告やマーケティングにおいては、依然としてF1層が一番重視すべき層という考えが強いです。実際に、「月9」などに代表されるドラマやテレビ番組は、多くがF1層をターゲットに制作されています。
F1層の特徴
F1層が広告業界やマーケティング業界において重視される理由として、20代前半~30代の女性ならではの特徴が考えられます。ここからは、マーケティングの鍵を握るF1層の3つの特徴を紹介します。
購買意欲が強い
F1層の1つめの特徴は、購買意欲が強い点です。20代~30代前半といえば、社会に出て自分でお金を稼ぐようになる世代。加えて、近年の晩婚化の影響でF1層は未婚者が多く、他の層と比べて自分のためにお金を使える年代と言われています。そのため、広告業界やマーケティング業界では、F1層をターゲットにすれば購買につながりやすいと考えられてきました。一方で、F1層は社会に出たばかりの年代にあたるため、F2層やF3層ほど経済力が高くありません。「プチプラ」という言葉の浸透が示す通り、近年では、F1層は特にコスパが良いものを好むとも言われています。具体的な例として、ユニクロやH&Mなどに代表される「ファストファッション」、3COINSなどの「100円、300円ショップ」、音楽や動画などのエンタメ分野を中心とした「サブスクリプションサービス」の流行が挙げられます。
自己投資に積極的
F1層の2つめの特徴は、自己投資に積極的な点です。特に20代前半は学生から社会進出を果たし、周りの影響を受けて物事の考え方が変わるなど、内面も大きく変化する年代。そのため、F1層は美容やファッションなどの自分磨きに勤しむ人が多い傾向にあります。また、他の層と比べると自由な時間とお金があるため、飲み会や旅行などの遊びも欠かせません。
20代後半にさしかかるとスキルアップに積極的になるのも特徴です。20代後半は、女性にとって結婚や出産などのライフプランを考え始める年代。同時に仕事においても、「このまま今の仕事を続けるか」「結婚したら仕事との両立はどうするか」といったキャリアプランを考え始めます。そのため、資格取得に励んだり転職活動をしたりと、今後の生き方を見据えての行動が増えていきます。
流行に敏感
F1層の3つめの特徴は、流行に敏感な点です。特に、20代の若手世代はSNSを好み、「バズる」というワードに反応。SNSに投稿し、大勢の反応を集めるようなインパクトのある商品に引かれがちな傾向があります。また、ファッションやグルメなどの必要な情報を、「ハッシュタグ」を利用してSNSで情報収集するのもF1層の特徴。クチコミが盛んな世代でもあり、SNSを利用して発信する他、他の人のクチコミを参考にして購入する商品を選ぶ場合も多いです。
F1層に人気のメディア
ここからは、F1層に人気のメディアを紹介します。
インフルエンサー
F1層は「Instagram」や「YouTube」などでメイクやヘアスタイル、ファッションなどの発信を行う「インフルエンサー」を好みます。以前は女性がメイクやファッションを参考にする人物といえば、雑誌やテレビに登場する芸能人やモデルでした。しかし、インフルエンサーは芸能人よりも一般人に近く、自身にとって身近な存在。テレビや雑誌よりも参考にしやすい点が魅力です。
SNS(Instagram)
F1層にとって欠かせないツールといえば「SNS」です。特に人気が高いのが「Instagram」。「インスタ映え」の言葉が示す通り、視覚的にインパクトのあるものを好んで投稿し、「いいね」の数で評価している人も多い傾向があります。そもそも、SNSはリアルタイムな情報が見られるため、若手世代はテレビや雑誌よりもインターネットを情報源にしていると言われています。F1層を取り込むために、Instagramを中心としたSNSアカウントを開設する飲食店やアパレル企業も最近は少なくありません。また、SNSはちょっとした暇つぶしやコミュニケーションツールとしても活用され、通勤中の電車でもスマートフォンを片手にSNSを利用している人が多く見られます。
スマホアプリ
F1層はスマホアプリを最も活用する世代です。近年は多くの企業が専用のスマホアプリをリリースしており、好きなファッションブランドのセール情報など、アプリでの情報収集は欠かせません。また、「Amazon」や「楽天」などのネットショッピングや「メルカリ」に代表されるフリマ出品を行う人も多いです。
雑誌(ファッション、美容、ヘアスタイル誌など)
F1層が好む雑誌は、「ファッション」「美容」「ヘアスタイル」を中心に扱ったものなど。その他、20代~30代前半の女性をターゲットとした雑誌には、関連して「恋愛」や「デート」などのトピックも豊富に盛り込まれています。
なお、F1層をターゲットとしたファッション雑誌は提案するスタイルが幅広いのも特徴。「ViVi」「Ray」などのおしゃれ系や「MORE」などの働く女性へ向けたナチュラル系・キレイ系など、多くの雑誌が販売されています。豊富な雑誌の中から、F1層はそれぞれの趣向にあった雑誌を選んで読んでいると考えられます。
その他
他にも、F1層は「サブスクリプションサービス」を好んで利用しています。コスパの良いものを好む若手世代にとって、毎月定額で好きなだけ利用できるサブスクリプションサービスは非常に便利な存在。人気が高いメディアとして、「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」などの動画配信サービスや、「Spotify」「AWA」などの音楽サービスが挙げられます。なお、近年はブランドバックをレンタルできる「Laxus」や、1回につき3つのアクセサリーをレンタルできる「SparkleBox」など、ファッション分野でのサブスクリプションサービスも増えています。
F1層向け広告の例
まとめ
消費意欲が高く、自由にお金を使える世代にあたる「F1層」。「広告業界やマーケティング業界において最も重要なターゲットです。しかし、「F1層」や「F2層」での区切りではマーケティングが不十分だという考えも否めません。近年の広告やマーケティングにおいては、性別や年齢以外の細かい人物像まで想定してターゲットを設定すべきという意見が増えています。特に、F1層は人によって「未婚か既婚か」「子供の有無」などのライフステージが異なる世代です。また、職業や収入、趣味によっても消費傾向は変わるかもしれません。そこで、最近は新しいマーケティング手法として「ペルソナマーケティング」を採用する場合も多いです。ペルソナとは「F1層」などの区分をさらに細かくした考え方で、職業や家族構成、性格といった細かいところまでターゲットを想定する手法です。今後の広告業界では、「F1層」の考え方に加え、「ペルソナマーケティング」に代表する新しい考え方も加味してマーケティング戦略を行っていくのが重要です。