最近、企業ブランドの確立を目的とした広告である“企業広告”を出稿する企業が増えてきています。類似する商品・サービスが増え続ける中で、ただ、商品・サービスを説明した売り上げを伸ばすための広告ではなく、企業・ブランドを好きになってもらう事が目的の広告が増加傾向にあります。また、CSR広告と言われる地域社会への社会的貢献をアピールした広告も多く見るようになりました。
今回は、企業広告を中心にCSR広告や商品広告との違い、事例等を説明します。
企業広告とは?
企業広告は、企業の事業や活動紹介、企業理念やポリシーなどを伝える広告を行うものです。企業のイメージアップを図って、社会的な認知を図ることを目的としています。多くは企業イメージを広告で表現することが多いのですが、社会への意見広告が行う場合や事業の決算状況を広告にするようなケースも登場しています。
また、企業広告は様々な媒体を活用して行われていますが、最近ではSNSも活用した企業広告も多く行われています。拡散力のあるSNSの活用は、幅広い層への知名度、認知度向上が期待できるメリットがあります。
最近よく言われる「ブランディング」でも、企業の商品やサービスのブランド力向上をSNSを活用して図るケースが多く見られます。他の競合商品やサービスとは異なる自社のブランド力をアップさせる広告戦略が重要視されてきているとともに、幅広くSNSで企業広告を行う事例が増加傾向にあります。
企業や商品、サービスへ愛情を持ったファンを増やすことで「企業ロイヤリティ」を高めていくことが重要な時代です。企業広告が、イメージやブランド力、ロイヤリティを高めるために重要な役割を担っていると言えるでしょう。
商品広告、CSR広告との違い
企業広告が変化してきていることをご紹介しましたが、ここで、あらためて企業広告と商品広告、地域社会に向けたCSR広告との違いについても考えてみます。
商品広告との違い
企業広告と商品広告の違いは、企業広告は企業や団体のイメージやポリシー、意見を主張することを目的とし、商品広告は商品やサービスを紹介し売上や業績アップにつなげることを目的とするものです。
本来、目的を異にするものでしたが、最近では、商品広告も商品を元に、それを愛用してくれることや愛着を持ってくれることを目的とした「ブランディング」や「ロイヤリティ」を高める広告も増加。商品広告と企業広告が目指すものはあまり違いがないものになってきていると言えます。
CSR広告との違い
企業が地域社会に向けてCSR(Corporate Social Responsibility)広告、企業の社会的責任をアピールする広告を出すことも、最近では増加しています。CSR広告としては、環境、地域社会との共存、人権、コンプライアンスの遵守などをアピールする広告を掲載するものです。
また最近では、SDGsも注目を浴びていて、持続可能な開発目標として17の世界的目標、169の達成基準、232の指標があり、これらの実現をアピールすることも一つの企業の社会貢献としてイメージアップに繋げるものとなっています。
企業の社会的貢献を企業広告として打ち出していく傾向は強まり、企業広告としてCSR広告が重要になってくることでしょう。
イメージや主張、メッセージ性のある企業広告の成功事例
実際に企業広告の中でも、主張、メッセージ性のある広告が高い注目を浴びています。多くの商品やサービスがあふれる中で、企業や団体のイメージやメッセージ性を強めることが最も効果的な販促にもなっています。
イメージやメッセージ性を強調した企業広告、社会問題に対する主張や自社の使命などをしっかりアピールした広告を行うことで、ブランド力や企業ロイヤリティに繋げる企業が増加。最近の企業広告がどんな形で行われているのかについて、事例を紹介します。
宝島社のメッセージ性の強い企業広告
出典:【5/11(火)掲載 企業広告】ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戰えというのか。このままじゃ、政治に殺される。
さまざまなファッション雑誌を発行している株式会社宝島社がコロナ禍で出した企業広告として、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戰えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」というコピーの広告があります。
宝島社では1998年から企業広告を行っており、今回の企業広告ではコロナ禍での警鐘メッセージを出したものです。多くの人々が抱く思いを文字にした企業広告で、コロナにもっと科学の力で対抗したいという強い姿勢をインパクトのあるコピーで示しています。インパクトの強い企業広告となっていると言えます。
無印良品の全世界同時展開のテーマ性のある企業広告
出典:無印良品メッセージ「気持ちいいのはなぜだろう。」展開について
無印良品の40周年を記念した企業広告も、無印良品が展開する全ての国や地域のWebサイトで同時に展開した点が特徴となっています。
「掃除」をテーマに、「気持ちいいのはなぜだろう。」という素朴な疑問を考えてもらう広告です。世界中で誰かがいろいろな方法で掃除をしているから気持ちがいいのだというメッセージが込められています。
見えない所で行われている誰かの行為への気づきを伝える広告で、無印良品の企業としての姿勢、商品開発の姿勢を伝えることができています。無印良品のブランドの質を感じさせる広告と言えます。
PR TIMESの文字だけの企業広告
出典:たとえ読まれなくても、ぜんぶ書く。PR、14の使命を日経新聞に掲載 [PR TIMES企業広告]
「たとえ読まれなくても、ぜんぶ書く。PR、14の使命」を日経新聞に掲載したのがPR TIMESの広告です。自社の使命を14個箇条書きにして掲載しています。
「たとえ読まれなくても、ぜんぶ書く」と前書きしている所に、企業の姿勢を感じさせる魅力ある広告です。この広告によって、明文化して伝えることを大切にする企業だということが伝わるでしょう。他との差別化、ブランディングを図っている広告です。
資生堂 美の提供を通じて世界へ貢献していく決意表明の企業広告
出典:2019年4月8日、企業広告「ビューティーの未来を、熱くしよう。」を展開
資生堂が147回目の創立記念日に掲出した企業広告も、企業の使命や決意について長文のコピーによってPRされています。
日本国内の新聞に掲出されたこの企業広告は、資生堂の新しい研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター」をバックに、美の提供を通じてよりよい未来の実現へ向けて貢献していく、という資生堂の決意を表現しています。
「資生堂グローバルイノベーションセンター」を美の革新のシンボルとすることで、企業のブランド力を高める広告となっています。
まとめ
企業広告は、最近ではイメージを売り、ブランディングし、企業ロイヤリティを高めるものが増えています。一品一品の商品広告を出すことも必要ですが、他企業と差別化を図るには、長く愛されるように企業全体を一つのブランドとして扱うような広告を出していくことが重要です。
商品広告も商品だけでなく企業のイメージをアピールするものが増加しています。商品を元にした企業のブランド力をアピールすることがとても大切となってきています。
また、企業広告では商品を作るに至った理念やポリシー、企業の姿勢を企業広告で打ち出していきますが、企業の社会貢献をアピールするCSR広告も増加しています。そして、SNSで多くの意見があふれていく中で、企業としての意見を主張することも必要なケースがあります。社会に対する意見広告がブランディングに向けて大切な時もあります。SDGsといった環境、地域社会を始めとした持続可能な社会にむけての取り組みを主張するなど、積極的にCSR広告を行っていくことも大事な企業広告となる時代です。
商品広告やCSR広告との違いを考えるというのではなく、トータルに捉えて企業広告を行っていくことが重要になってくると言えます。