CCI社より2020年のデジタルサイネージの市場規模が発表されております。2020年516億、2024年1022億で、5年で約2倍の規模になる予想されています。
(引用:CCI社「デジタルサイネージ広告市場調査」
ただ、2019年の発表によると2020年は873億と予想されており、昨年の予想からは下方修正となっています。春から夏にかけての外出自粛により、交通機関や屋外施設、商業施設などにおけるデジタルサイネージと生活者の接触数は一時的に大きく減少し、市場規模にも反映されています。
商業施設・店舗のサイネージが急拡大
2024年までに一番拡大が予想されているのが、商業施設・店舗のサイネージです。小売店側においては、対面販売に代わる来店者との新たなコミュニケーション手法として、あるいは収入手段としてデジタルサイネージ広告への投資意欲がますます高まっています。従来は、来店者の待ち時間が長い美容院や調剤薬局を中心に市場が拡大していましたが、不動産店舗内(ハウスコム)や飲食店内(スシロー)など、チェーン店舗を中心に様々なサイネージが出てきております。
また、産婦人科待合室(アットリンクビジョン)やオフィス内(OFFICE DE MEDIA)などターゲットの絞りやすいサイネージが増えてきており、ブランディング以外でのサイネージを利用した広告出稿も増えてきています。大型ビジョンだけではなく、タッチパネルや呼び出しベルを利用したサイネージも出てきており、今後はチェーン店だけでなく、各個店での利用拡大も予想されます。
市場規模の大きい交通サイネージ
交通広告サイネージ市場は、2020年で全体の61%を占めており、2024年でも54%と半分以上で一番大きな割合を占めています。2016年以降、タクシー事業者と広告事業者との連携が進み、首都圏を中心に急速な普及が見られました。経営者にダイレクトにリーチしやすいタクシーサイネージは、BtoB・経営者向けの広告の希少さもあり、急速に需要が膨らんだと同時に価格も高騰しました。2019年の調査では、2013年に75億まで拡大すると予想されています。
(引用:CCI社「デジタルサイネージ広告市場調査」)
タクシーサイネージもコロナの影響を受けております。タクシーサイネージ大手のフリークアウト社(IRIS社)の決算によると、ピーク時の半分となっておりますが、今後はサイネージ搭載車の増加やエリアの拡大、経済環境の回復に沿って、また拡大していくと考えられます。
(引用)フリークアウト社『2020年9月期 通期決算説明資料』
Tまた、鉄道車両や駅施設でもサイネージの設置が進んでおります。JR東日本は、ドア上のほか荷棚上部にもデジタルサイネージが設置されている新型車両を横須賀・総武快速線を2020年12月より順次導入すると発表しています。(JR東日本)また、駅のプラットフォームの線路に面する部分に設置される可動式ホームドアも、利用者の転落防止・接触事故防止ニーズの高まりを受け設置が加速され、同時にホームドアデジタルサイネージも増加すると考えられます。
駅構内のコンコース内ジャックや10M以上幅の大型広告、駅コンビニサイネージなどメニューも豊富になりつつあります。元々集客力のある駅のメディアは、エリア内で集客には有効な媒体でした。メニューの充実により柔軟性が一層高まり、ブランディングやターゲットにも効果を発揮してくると思われます。
屋外サイネージはゆっくり
ビジネスインサイダーの記事によると、アメリカではブランド認知を促す「アッパーファネル」として位置付けられていた屋外サイネージが、デジタル化やデータ・ドリブン型へのシフトが進み、2023年までにアメリカの屋外広告全体に対してDOOHの割合は42%に達すると見られています。
一方、日本の屋外看板のデジタル化比率は、海外に比べると非常に低いといわれています。日本では看板メディアを所有しているオーナーが小口で数多く、サイネージ化するにも手間やコスト等それぞれのオーナーと交渉していかなければならず、今後も増加ペースは他に比べると低いと予想されます。
一方、富裕層をターゲットとした高級タワーマンションの掲示板サイネージなど区分されないその他サイネージは、今後もユニークな広告メニューの開発・導入が期待されています。