経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2021年9月分の広告業売上高について解説します。
広告費全体では前年同月比120.7%と大きくプラスに
全体の売上高としては5,180億円と、前年同月比で120.7%と大きく上昇しています。前年はまだまだコロナの影響が残っていたため、その反動によるものが大きいですが、2021年9月も緊急事態宣言の影響を受けたカテゴリーについては売上高が伸び悩む結果となりました。
4マス全体は前年同月比108.7%。テレビは大きく増加
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,346億円。前年対比では108.7%となっています。
新聞広告は前年対比91.9%と減少。この減少は2021年8月から2カ月連続で続いており、緊急事態宣言やコロナ感染者増加による先行きの不透明さの影響が伺えます。
雑誌広告も前年同月比99.6%とわずかに下落。2021年6~8月は前年対比でプラスが続いていましたが、やはりコロナ前の水準には回復していません。
テレビCMは前年比112.5%と回復。緊急事態宣言下において在宅時間が増えたことで、テレビCMの視聴効果を狙い、出稿を増やした企業が多かったと考えられます。
ラジオ広告は前年比97.4%と6月から引き続き増加が見られません。ただ、4マスの中では比較的コロナの影響を受けにくく、広告費の増減が少ないカテゴリーになります。
インターネット広告は125.1%と大幅増加
2020年10月から前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。9月は前年比125.1%となっており、若干の減少傾向にあるものの、引き続き高い水準を維持しています。若干の減少傾向については、感染者減少によってインターネット広告以外にも広告予算を割り振る企業が増えてきた事が想定されます。
交通広告は94.9%と再びの減少、屋外広告はコロナ前の水準までほぼ回復
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると屋外広告が127.2%と、反動増による数字ではありますが、コロナ以前の水準まで回復しつつあります。
交通広告は94.9%。2021年7~8月には一時回復傾向にありましたが、9月には再び減少。お盆の期間が終わり、8~9月に緊急事態宣言が実施されたことにより、公共交通機関の利用客が減ったことが影響していると考えられます。
折込・ダイレクトメールは90.3%。こちらも緊急事態宣言の影響により若干の減少を見せていますが、過去に実施された緊急事態宣言期間の大幅減少ほどには至っていません。
コロナの影響を受ける前、2019年9月との比較
前年対比ではコロナの影響による反動が大きい為、2019年の同月との数字を比較してみました。広告費全体では100.9%で、コロナ以前の数字に戻りつつあります。
カテゴリー別に見ると、インターネット広告が161.5%と増加が見られます。その他のカテゴリーは、新聞76.4%、雑誌55.3%、テレビは96.1%、ラジオは81.2%と、4マス媒体の中でも回復度合いに大きな差があります。屋外広告は98.1%、交通広告は56.0%、折込み・ダイレクトメールは66.2%と、こちらはコロナ以前より大きく減少しています。
緊急事態宣言期間が明けて人出が増えたことにより、広告費にはどのような動きが見られるのか、引き続き注視していきます。