経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2022年9月分の広告業売上高について解説します。
広告費全体では前年同月比91.3%とマイナスに
全体の売上高としては4,668億円と、前年同月比で91.3%と減少しています。
前年9月は新型コロナウイルス感染症の影響により緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発令されている状況ではあったものの、オリンピック・パラリンピックの影響により広告費が大幅に増加しました。
今回の広告費の若干の減少はこの落差によるものと考えられます。
4マス全体は前年同月比92.8%。雑誌以外はマイナスに。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,208億円。前年対比では92.8%となっています。
新聞広告が前年対比94.6%と減少した一方で、同じ紙媒体である雑誌は110.6%と大幅に増加。雑誌広告はしばらくマイナスが続いていましたが、約1年ぶりにプラスとなりました。
テレビは91.8%とマイナスの結果に。コロナの影響を受けにくいカテゴリーであるラジオは今回も95.3%とほぼ横ばいでした。
インターネット広告は前月に引き続き102.2%とプラスに。
2020年10月から前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。2022年9月は前年比102.2%となっており、ほぼ横ばいとなりました。2021年12月以降、減少傾向となっているインターネット広告費ですが、2022年に入ってから加速した世界的インフレが大きな影響を及ぼしていると思われます。現在はまだプラスを維持していますが、世界情勢による影響はしばらく続くと思われ、今後マイナスに転じるかもしれません。
屋外広告は112.8%と大幅増加。交通広告・折込・DMは横ばいに。
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると屋外広告が112.8%と大幅に増加。交通広告は101.2%、折込・DMは105.3%とほぼ横ばいという結果になりました。2021年9月と比べ、新型コロナウイルス感染症の影響は残りつつも人出が増えているため、好調だったことが考えられます。
一方でSP・PR・催事企画は88.9%、海外広告は18.2%と大きくマイナスに。2021年のオリンピック・パラリンピック開催の反動が大きい項目であったことがわかります。
コロナの影響を大きく受けた2020年9月との比較
新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった2020年9月と比較し、どこまでの回復が見られたのかを調べました。まず、広告費全体は108.8%でほぼ横ばいとなりました。2020年は4~5月に緊急事態宣言が発令されましたが、2020年9月頃には徐々に経済活動が再開しており、コロナ前ほどではありませんが広告費も増えつつある時期でした。その為、2022年9月との差が少ないという結果になったと思われます。
カテゴリー別に見ると、新聞、ラジオ、屋外広告、交通広告、海外広告は大きくマイナスとなりましたが、その他はほぼ横ばいかプラスという結果になりました。インターネット広告費は127.1%と大きく増加しており、コロナに加え、デジタルシフトの影響も感じさせます。SP・PR・催事企画も133.3%と大幅に増加しており、回復傾向にあることが分かります。
新聞もデジタルシフトの影響を大きく受けているためか、85.1%とマイナスに。
屋外広告88.5%、交通広告84.4%とこちらも大幅減少。2020年9月は自粛期間のマイナスを取り戻すように屋外広告・交通広告の出稿が増えていたことが分かります。
コロナ第7波が落ち着いてきた2022年9月でしたが、今年はコロナだけでなく世界的インフレの影響も大きく、各カテゴリーごとの数値の動きにも変化が見られました。2022年10月には日本国内で多くの商品の値上げが実施されるなど、インフレの影響はどんどん大きくなっており、広告費にどのように影響を与えるのか、引き続き注視していきたいと思います。