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月面着陸成功をアシストした「PR」のパワー | 森本進一
月をマーケティングする アポロ計画と史上最大の広報作戦 著者 / デイヴィッド・ミーアマン・スコット、リチャード・ジュレック
「なんで、こんなに技術が進化してるのに、1969年以来、月に行ってないの?」
子どもの頃、図鑑をめくりながらボクが抱いた疑問。
その答えを理解できたのは、この本に出会った大人になってからです。
“冷戦時代の宇宙開発競争にアメリカが勝利することができたのは、ソビエト連邦にはなかった「マーケティングの力」を最大限に活用したからである。” (本書より引用)
ベトナム戦争の最中、政府予算の4%を超えるアポロ計画を成功させた背景には、「ソ連より先に月面を踏む」という競争心と「人類の未来を切り開く挑戦」という共感を呼ぶストーリーがありました。
また、NASAは新聞、雑誌、ディズニーの番組、映画『2001年宇宙の旅』など多様なメディアを活用し、宇宙探査をわかりやすく伝えて「宇宙の民主化」を推進しました。
さらに、資金や人材不足を解決するため、企業の協力を積極的に引き出しました。
"「ソ連に先駆けてアメリカが月に到達することを可能にしたのは当社です。」"(本書より引用)
このように、契約企業や下請け企業が自社技術をアピールする好機と捉えたことで、NASAは彼らの協力を得てムーブメントを拡大しました。
この本を読めば、広告とPRの違いってなに?と多くの方が抱きがちな疑問もクリアになるのではないでしょうか。
第三者との合意形成を通じて意識変化を促すPRの可能性を感じられる一冊です。
1961年、ガガーリンの乗ったボストーク1号に人類初の有人宇宙飛行で先を越されたアメリカは、ケネディ大統領の決断により、1960年代のうちに人類を月に送る「アポロ計画」を立てる。
そのための予算は250億ドル。この膨大な金額を国民に納得させるために、史上最大のマーケティング作戦が始まった。
新聞、雑誌、ディズニーのテレビ番組、映画『2001年宇宙の旅』などを通じて、NASAは月面開発を売り込んだ。日本人も驚いたアポロ11号の月着陸テレビ中継や、大阪万博アメリカ館の「月の石」は、こうしたマーケティングの一環だったのだ。
冷戦時代の宇宙開発競争にアメリカが勝利することができたのは、ソビエト連邦にはなかった「マーケティングの力」を最大限に活用したからである。
そして、宇宙開発によって新しい技術が次々と誕生したのと同様に、現代のマーケティング手法についてもアポロ計画が発端になっているものが多い。
「人類がまだ火星に到達していないのは、つまるところ、火星探索事業のマーケティングが失敗に終わったからだろう」(本文より)
マーケティング・PRの専門家であり、宇宙ファンの著者が、これまで語られることがなかった「史上最大のマーケティング作戦」としてのアポロ計画の姿を描きだす。
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