我が国日本は現在超高齢化社会を迎えています。これは、総人口の内、21%が65歳以上の高齢者で占めることを表し、内閣府が発表した『令和4年版高齢社会白書』には、2021年時点で総人口の28.9%が65歳以上の高齢者であると記載されています。この超高齢化社会を迎えた日本において、人口の約3割を占める『シニア』を対象とした『シニアマーケティング』が注目されるようになりました。今回は『シニアマーケティング』について、解説していきます。
シニアマーケティングとは?
シニアマーケティングとはターゲットをシニアに絞って行うマーケティング全般を指します。マーケティングとは、顧客のニーズ調査や、商品開発、販路の選定から顧客獲得後の満足度向上まで、4P(Product、Price、Promotion、Place)などで表される『売れる商品の仕組みづくり』と定義されます。つまりシニアマーケティングは、シニアのニーズを把握し、シニアに向けた商品開発、販路選定などを通してより良い商品・サービスをシニアに届けるための手段、と考えられます。最近までは、今では情報源として当たり前となったインターネットやSNSなどといったITツールはシニア世代には難しいとされてきました。このマーケティング業界では周知の事実だったシニアのIT知識に対する認識は、この数年で改められてきています。今でも若年層に比べると紙媒体を中心としたオフライン広告が高い効果を期待できる点は変わりませんが、ここ数年、オフライン広告とWebサービスなどを組み合わせたマーケティング手法がシニアマーケティングにおいても注目されつつあります。
シニア市場について
シニアマーケティングが注目されるようになったものの、シニア市場の正確な把握は今でも難しいとされています。これはシニア世代と同じ立ち位置にいるマーケターがいないことや、今でもオフライン広告が主流でありデータ収集が難しいことなどが理由に挙げられます。ですが、近い将来、人口の1/3が65歳以上のシニアになると言われているため、シニアマーケティングはこれからの日本においては必要不可欠な考え方と言えます。そのため、まずは現在のシニア市場と今後予想されるシニア市場の動きをある程度把握しておくことが重要です。内閣府が発表の『令和4年版高齢社会白書』によると2019年時点で65歳以上の家族がいる世帯数が国内総世帯数に占める割合は約49%と約半数を占めます。勤労しているシニア世代は増加の傾向にあるようですが、依然として高齢者世帯の所得はその他の世帯と比べるとかなり低い水準にあります。対してシニア世帯の貯蓄額(資産)はその他の世帯と比べても比較的多く、バブル期に稼ぎ頭だった現在のシニア世代では、退職金などまとまった収入もあり、現在の収入に反して自由に使えるお金は比較的多いと考えられます。
そのため、シニア世代は家族や趣味にお金を気兼ねなくお金を投じる人も多いため、シニアの割合が増えるとともにシニア市場も急成長を続けています。
シニアの分類
シニアとは一般的に勤労を終えた65歳以上の高齢者のことを指す言葉です。シニアマーケティングにおいてはしばしばこのシニアを属性ごとに更に3つに分けて考えられます。
シニアの分類 ~アクティブシニア~
アクティブシニアはシニアの中でも最も消費に対して積極的です。アクティブシニアとは、年齢に捉われず気持ちが充実しており、自身のやりたいことに積極的に取り組むシニア層の人たちを指します。そのため、健康や運動に興味・関心が高く、自身の興味のある事柄に対して積極的に消費活動を行うという共通の特徴があります。
シニアの分類 ~現実派シニア~
アクティブシニアに対して現実派シニアと呼ばれる人たちは、贅沢品にはあまり興味がなく、消費行動も生活必需品など最低限に留まる傾向にあります。消費行動自体は派手ではありませんが、仲間内での集まりなどコミュニティへの帰属意識は高く、落ち着いた余暇を過ごすことを好む人たちと考えられています。
シニアの分類 ~ネガティブシニア~
ネガティブシニアはアクティブシニアの対極に位置するシニアを指し、何事にも無気力・無関心の人たちがこう呼ばれます。興味のある事柄が少ないため、現実派シニアと比べても更に消費行動は少なくなります。そのため、シニアマーケティングのターゲットとしてはアクティブシニア、現実派シニアのどちらかが対象となります。
シニアマーケティングの手法
新聞広告
新聞広告とは新聞紙面を利用したオフライン広告のことを指します。新聞紙面全15段(1ページ)を使った大掛かりなものから、記事の間に広告を挟み込む記事中広告など広告出稿の形は多岐にわたり、その費用も広告スペースや掲載する紙面によって様々です。
全15段のように比較的大きなスペースを広告に利用できる記事下広告では、写真や画像などを利用することもできるため、企業のブランディング・認知向上や新商品の宣伝など幅広い用途で利用されています。
記事下広告の更に下段、2~3段を使用する突き出し広告は、紙面の端に掲載できるというメリットを活かしてクーポン券などを広告と合わせて掲載する手法も多く見受けられます。
新聞広告は既にある流通ルートを利用して広告宣伝が可能なため、不特定多数の人へリーチできる点もメリットの1つです。特に発行部数の減少が騒がれる近年でも、シニア層の購読率は高い水準を維持していることなどから、シニアマーケティングにおいては最もポピュラーで有効な広告手法と言えます。また、新聞広告は公共性の高い新聞紙面を利用した広告手法のため、広告内容にも高い信頼性を感じる消費者が多い点も特徴です。
その他、新聞広告の種類やメリット、「段」の仕組みなど、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
新聞広告ってどんな広告?紙媒体を代表する「新聞広告」の仕組みなどを徹底解説!
雑誌広告
雑誌広告とは週刊誌や月刊誌、季刊誌など定期発行されている雑誌を利用した広告手法です。雑誌の表2(表紙裏)や表3(裏表紙の裏)、表4(裏表紙)を利用した純広告と、記事の体裁を取った記事広告の2種類に大きく分類されます。
シニアマーケティングにおける雑誌広告の最大のメリットは、シニアの生活に根付いたメディアに広告宣伝ができる点です。雑誌広告は、趣味や生活情報などシニアが情報収集をするために利用しているメディアに広告出稿を行う広告手法です。そのため、広告の内容への興味・関心も高くなる傾向にあります。
インターネットが全年代に普及してきたとは言え、シニア層には未だ紙媒体のメディアが根強い人気を誇っています。その中でも定期的に購読される雑誌を利用したシニアマーケティングは、高い注目度や広告が繰り返し見られる反復性などが特徴です。
その他、雑誌広告の特徴やメリットについて、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
雑誌広告とは?純広告や記事広告などの種類やメリットついて徹底解説!
フリーペーパー
フリーペーパーは人の往来が多い場所を中心に無料で配布される紙媒体の広告物全般を指します。配布場所としては駅やコンビニ、スーパーマーケットなど不特定多数の人が訪れる場所が主流です。
シニアマーケティングを考える場合は、当然ながらシニアが頻繁に訪れる場所での配布が好ましいです。主な施設としては、病院、介護施設や温泉施設、地域の集会場や地元の飲食店など、シニアの利用者が多い施設が候補に挙がります。このように、シニアマーケティングにおけるフリーペーパーの最大のメリットは、エリアターゲティングがし易い点です。
また、フリーペーパーにはさまざまな種類があります。フリーペーパーの種類や配布方法など、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
フリーペーパー広告って効果はあるの? | 広告枠サイズや配布方法が様々な紙媒体
ポスティング・折込チラシ
ポスティングや折り込みチラシは既にある顧客データや新聞や情報誌などの流通ルートを利用して、消費者の自宅に直接広告物を配布する広告手法です。
シニアマーケティングにおけるポスティング、折込チラシの最大のメリットは、比較的安価で多くのシニアに直接広告物が配布できる点にあります。若年層とは違い積極的に多くのエリアを移動するわけではないシニアにとって、自宅に直接届けられる情報は非常に重要な意味合いを持ちます。そのため若年層に比べると直接ポスティングされた広告物に対する興味・関心も高くなる傾向にあり、シニアに絞ったポスティングや折り込みチラシは一定の効果が期待できます。
ポスティングの特徴や事例など、ポスティングについては以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
ポスティングって何?広告効果やそのメリットについて徹底解説!
同封同梱
同封同梱広告とは、印刷物や消費者が購入した商品などと合わせて広告物を送付する広告手法を指します。折込チラシ、ポスティング同様、自宅に直接広告物が配布されるため、消費者の興味・関心も高くなる傾向にあります。
シニアマーケティングにおける同封同梱広告のメリットは、自身が購入した商品やクレジットカードの利用明細のように必要としているものに同封同梱されているため、安心感を与えられる点にあります。数多くのチラシがポスティングされるようなエリアの場合、単体で投函されている広告物に不信感を抱くシニアも少なくありません。同封同梱広告はこの不信感を極力排除でき、かつ、開封した際に必ず手に取るため、費用をかけて配布した広告物が内容に目を通されないまま廃棄されるリスクを最小限に抑えられる点も魅力の1つです。
その他、同封広告と同梱広告の違いや、同封広告・同梱広告のメリットなど、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
同封広告・同梱広告ってどんな広告?その違いやメリットについて解説!
会員誌
会員誌とは会員登録をした消費者にのみ限定で配布される雑誌のことを指します。生活や暮らし、健康などへの興味・関心が高いシニアは特に会員誌の購読者が多い層と言われています。
シニアマーケティングにおける会員誌のメリットとしては、ターゲティングの容易さが挙げられます。購読者のほとんどがそのジャンルに興味があることがわかっているため、雑誌の内容と親和性の高い商品・サービスの広告宣伝においては高い効果が期待できます。
また繰り返し読み返される雑誌も多く広告の反復性も期待できるため、シニアマーケティングとは相性の良い広告手法と考えられます。
Webサービス(シニア向けSNSなど)
シニアマーケティングにおいてはオフライン広告、特に紙媒体の広告手法が高い効果が期待できると考えられています。とは言え、近年では60歳以上のインターネット利用者も増えてきており、シニアマーケティングといえ、Webサービスを利用したオンライン広告を一切使わないという選択は機会の損失になりかねません。
最近では、シニアマーケティングにおけるオンライン広告として、シニア向けSNSを利用した広告配信が注目されています。中でも富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社が提供している『らくらくコミュニティ』は会員数200万人以上のシニア向けSNSとして話題になっています。
Web広告の種類やメリットなどについては、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。WEB広告とは?その種類や課金方式、概要について徹底解説!その他、シニア向けのオフライン広告について、以下の記事で紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。シニア、アクティブシニア、高齢者向けの集客広告を徹底解説!
まとめ
情報量が多く展開も早い動画広告などはシニアマーケティングには不向きと言えます。対して、じっくりと時間をかけて読む新聞広告や雑誌広告のような紙媒体の広告手法はシニアマーケティングと相性が良いと考えられます。このように従来のマーケティング手法とは少し違った考え方、アプローチが必要なケースも多いため、その他のマーケティングと区別され、シニアマーケティングはその用語とともに注目されています。
シニアマーケティングとはシニア(一般的に65歳以上の高齢者)にターゲットを絞ったマーケティング手法全般を指し、近年ではシニア世代に特化したSNSなどを利用したオンライン広告なども積極的に利用されています。超高齢化社会と言われる日本国内では今後さらにシニア市場は拡大していくと考えられているため、多くの企業がシニアマーケティングと向き合う必要があると言われています。
シニアマーケティングではターゲティングの対象となるシニアを大きく3つに分類して考えられます。
シニアマーケティングでターゲットとなるのは主にアクティブシニアと現実派シニアで、中でも自身の興味のある事柄に積極的にアクティブシニアがシニア市場の大半を占めています。シニアマーケティングに有効な広告手法は数多くありますが、その中からリーチしたいシニアの属性に合った広告手法を選ぶことが重要です。
今後もますます拡大していくシニア市場。拡大する市場規模に対して未だ知見が追い付いていないシニアマーケティングも、今後様々な企業が研究を重ね、より精度の高いマーケティングが可能になっていくはずです。今回紹介したシニアの分類や手法毎のメリットなどを参考に、自社の商品・サービスを効果的にシニア世代にアプローチしてみてはいかがでしょうか。