電車のドア上部や網棚など、乗客の目を引く場所に設置されている「電車内ビジョン」は、電車を利用する方々へ向けて、電車の中や車両の外に掲載する「電車広告」の一つ。デジタルサイネージの普及により多くの電車で採用され、今や首都圏を走る電車のほとんどで目にする電車広告となりました。電車内ビジョンはデジタルサイネージの特徴を活かした鮮明なクリエイティブ配信が可能な他、ニュースや天気予報などの他コンテンツと交えて配信されることで電車利用者に違和感なくアプローチできます。今回は電車内ビジョンについて、特徴や料金体系、事例を解説します。
電車内ビジョン(トレインチャンネル・東京メトロビジョン等)とは?
電車内ビジョンは、電車内に設置されたデジタルサイネージ型の広告を指します。電車内のドア上部や網棚近くに設置された液晶ビジョン内で配信され、映像によって電車利用者の関心を引く電車広告です。代表的な電車内ビジョンでは、JR東日本の「トレインチャンネル」や「まど上チャンネル」、東京メトロの「Tokyo Metoro Vision(東京メトロビジョン)」、都営地下鉄の「チカッ都ビジョン」西武鉄道の「Smileビジョン」などが挙げられます。電車内ビジョンは不特定多数の電車利用者にアプローチが可能。通勤で電車を利用するビジネスパーソンはもちろん、学生や主婦層など年齢や性別にこだわらず多くの人へ向けて訴求できます。また、静止画から動画まで幅広く掲載でき、企業のブランディングやキャンペーンなどさまざまな目的で利用されています。電車内ビジョンのサイズは鉄道会社や車両によって異なります。JR東日本のトレインチャンネル・では高さ223mm×幅304mmのものや、高さ230mm×幅380mmのものなど、さまざまなサイズのデジタルサイネージが用意されています。縦横比率は4:3、もしくは16:9が一般的です。
基本は15秒配信の電車内ビジョンが多く、掲載期間は1週間の短期間から放映可能です。JR東日本のトレインチャンネルでは最大26週間放映可能なプランも用意されており、長期的なプロモーションにも向いているでしょう。電車内ビジョンは主に「ロール放映」と呼ばれる放映形式を採用しており、15分~20分ごとに1度広告が放映されます。始発から終電まで繰り返し放映されるため、反復訴求効果を見込める電車広告です。
電車内ビジョンの特徴
電車利用者の目を引く位置に設定され、注目度が高い
電車内ビジョンの特徴として、1つめに乗客の注目度が高い点が挙げられます。電車内ビジョンは、電車利用者が特に密集するドア付近に設置されるため自然に乗客の目を引きます。また、広告枠だけでなく、天気予報やニュースなどのコンテンツを盛り込んで放映するため、他のコンテンツをチェックする流れで違和感なく内容を見てもらえる可能性が高いでしょう。
出典:ジェイアール東日本企画『MEDIA DATA2021』
ジェイアール東日本企画が発表した資料によれば、JR東日本のトレインチャンネルにおける商品興味関心度は55.1%、商品購入喚起度は43.1%という結果でした。どちらの数字も電車広告の代表格である「中づり広告」に次ぐ数字となっていることから、電車内ビジョンがいかにユーザーの心を引きつけやすく、効果的な広告展開が期待できるかが分かります。
デジタルサイネージの特性を生かし、多くのメッセージを伝えられる
2つめに、電車内ビジョンは多くの情報を伝えられるという特徴があります。静止画と動画を組み合わせるなどさまざまな表現が可能で、ポスター型の広告よりも多くの情報を盛り込めます。また、電車内ビジョンはデジタルサイネージの特性を活かし、鮮明でインパクトのある広告配信が可能な電車広告です。自然に目を引く動画広告は注目度も高く、見ている人を飽きさせません。ただし、音声は出ないため、テロップ表示などの工夫が必要です。
広告コストが抑えられる
3つめの特徴としては、電車内ビジョンはコストが抑えられ比較的利用しやすいという点が挙げられます。通常、ポスター型の広告では大量にクリエイティブを印刷する製作費や、広告を設置するための施工作業費などがかかります。しかし、電車内ビジョンはデジタルデータで入稿するため、それらのコストがかかりません。
地域的なセグメントが可能
路線を活かしたセグメントが可能です。電車内ビジョンは配信する路線を選択できるため、ターゲットが利用する路線に絞って広告配信ができます。地域のイベントなど、地元に密着したプロモーションにも向いています。
どのようなプロモーションを行うかによって、電車内ビジョンを活用するか、他の電車広告を利用するかなど方針は変わってきます。電車広告には、電車内ビジョンの他に中吊り広告やステッカー広告などもあります。それぞれの特徴について、以下の記事でまとめていますので、ぜひ、チェックしてみてください。
電車広告について徹底解説! | 「電車内」という限られた空間で展開できる広告媒体
電車内ビジョンの料金体系
電車内ビジョンの料金体系は、各鉄道会社によって異なります。ここではJR東日本の料金体系を例に紹介します。JR東日本では、「トレインチャンネル」「まど上チャンネル」「サイドチャンネル」が用意されています。「トレインチャンネル」は2002年よりJR車両のドア上部に導入されたデジタルサイネージで、広告枠の他、天気予報やニュースなどのコンテンツを配信します。プランは配信路線により大きく2つに分かれ、JR主要10路線に配信可能な全線セットプランと、路線を選んで配信する単線プランが用意されています。それぞれ基本の広告料金に加え、最大7素材までを追加できるオプション設定も可能です。
「まど上チャンネル」は、JR山手線、JR横須賀線、JR総武線快速の網棚上部に設置されている電車内サイネージです。3面並んだデジタルサイネージを利用でき、3面を連動させたインパクトのある放映も可能です。
「サイドチャンネル」はJR山手線、JR横須賀線、JR総武線快速の車両連結部に設置されたデジタルサイネージを利用できます。契約中は1社独占しての放映が可能で、乗客の高い認知が見込める電車内ビジョンです。
電車内ビジョンの事例
株式会社Jackery Japan Aceシリーズの交通広告
出典:【Jackery】TVCM/交通広告スタート!ジャクリ ポータブル電源史上最大出力のAceシリーズで、どんな時でも電気が使える。車中泊からBBQ、DIYまでアウトドアライフの新しい楽しみを発見!
株式会社Jackery Japanが扱う「Jackery ポータブル電源 Aceシリーズ 1500/2000」のプロモーション。TVCMの他、首都圏9社の電車内ビジョンを利用し広告展開しました。
災害時はもちろん、リモートワークやアウトドアでの電源確保に便利なポータブル電源。電車広告を利用することで、通勤中のビジネスパーソンや、アウトドア目的の乗客などに訴求できる広告展開となっています。
公益社団法人日本観光振興協会 「新しい旅のエチケット」動画の配信
出典:「新しい旅のエチケット」動画のトレインチャンネル等での公開のお知らせ
公益社団法人日本観光振興協会が行った、コロナ禍における旅行者への注意喚起を目的とした動画配信。空港や駅のデジタルサイネージの他、山手線などの電車内ビジョンで放映されました。飛行機や電車を利用する観光客へ向けた広告展開で、動画を活かした子どもから大人まで分かりやすい電車広告となっています。
エース株式会社 前持ちリュック「ガジェタブル」のプロモーション
出典:エース、快適通勤をサポートする前持ちリュック「ガジェタブル」の新CM を公開
バッグメーカーのエース株式会社が行った、前持ちリュック「ガジェタブル」の広告展開。首都圏JR主要10路線の電車内ビジョンを利用し、動画を放映しました。電車通勤のビジネスパーソンへ向けた電車広告で、動画の中では実際に車内で商品を利用するシーンを組み込むなど、購入後のイメージを沸かせる内容になっています。
まとめ
デジタルサイネージの普及により、ますます注目度が高まる電車内サイネージ。動画の特性を活かした視認性の高い電車広告で、ドア上部など人の密集する場所に設置されるため多くの人にアプローチできます。ポスター広告などの従来の交通メディアよりもコストを抑えられる点も含め、今後も多くの企業が電車内ビジョンでの広告配信を採用するでしょう。電車内サイネージは、今後も市場拡大が見込める交通広告の1つです。
電車内ビジョン以外にも、つり革広告や中づり広告など電車内で実施できる広告を幅広くお探しの方は、下記ページからチェックしていただけます。
首都圏の駅、電車広告をほぼ全て網羅した交通広告料金表もございます。併せてご覧ください。>2021年度版 交通広告料金表