主要SNSの中でも、今最もユーザー数が伸びているTikTok。15秒~60秒で配信される短尺動画ブームの牽引役であり、スマホの画面いっぱいに表示される縦長のフォーマットは没入感を得やすく、次々にレコメンドされる動画は飽きが来ず、「TikTokを見ていたらあっと間に時間が経っていた」という経験のある方も多いのではないでしょうか。
動画プラットフォームの大先輩であるYouTubeもショート動画の人気が高まり、FacebookやInstagramでもリール動画の閲覧数が爆発的に増加するなど、他のSNSもTikTokの動きに追随しています。
TikTokのユーザー数
TikTokを運営するByteDance社のリリースによると、2021年9月時点でTikTokの世界のユーザー数が10億人を突破したと発表されました。
TikTokの日本の利用者数は約1200万人程度と推測(参照:総務省『令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』)されています。
年代別に見ると10代、20代の利用率が高いですが、この世代が徐々に20代、30代とスライドしていく事を考えても、もはや無視の出来ない存在になっていることは明らかではないでしょうか。
出典: NTTドコモ モバイル社会研究所ホームページ『ソーシャルメディアの利用率[年代別]』
TikTokユーザーの特徴
暇つぶし目的での閲覧が多く、ニュートラルな状態のユーザーが多い
TikTokの利用シーンとして最も多いのが「暇つぶし」としての使われ方です。
InstagramやFacebookは友人やフォロー相手の投稿閲覧が中心になるのに対して、TikTokではアプリ起動時のホーム画面が「レコメンド」になっている事からも分かるように、フォローしているに関わらずにレコメンドされる動画をひたすら見るといった行動をするユーザーが多いのが特徴です。
所属するコミュニティ内の情報に限らず、自分が興味のある情報は欲しいといったマインドのユーザーが多いので、広告もコンテンツとして楽しまれる傾向にあります。
広告への印象が良い
TikTokユーザーは広告もエンタメコンテンツの一つとして捉える傾向があります。
長尺の動画に無理やり割り込むように広告が表示されるのではなく、次々に見ていく短尺動画の一つという認識があるため、広告に対する嫌悪感も発生しにくく、広告自体も他の動画と同様にすぐにスキップできるため、強制的に見せられてると言ったマイナスイメージを持つユーザーが少ないのでしょう。
実際に、他の主要SNSプラットフォームと比較しても、好感度が1.29倍という調査結果が出ています。
TikTok広告の配信面
TikTok広告の管理画面を通じて出稿をする際は、TikTokアプリ本体はもちろんのこと、Pangleというアドネットワークを利用した配信も可能です。
TikTokへの配信
TikTokアプリ内に広告を表示することができます。TikTok閲覧時には音声をONにしているユーザーが多く、広告も全画面で表示されるので、自社の魅力を存分に伝えることができます。
Pangleへの配信
TikTok以外の国内の様々なジャンルのアプリやWEB上に広告配信が可能なプラットフォームで、マンガアプリやゲームアプリなど、ネットワーク全体のDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)は7000万以上となります。
TikTok広告の種類
TikTok広告は、大きく「予約型」と「運用型」2つの種類に分けられます。
予約型
比較的大規模なブランディングを目的として実施され、純広告に近いメニューが「予約型」と言われます。予約型の中でも「TopView」「Reach & Frequency」「Branded Mission」という3つのメニューがあります。
TopView
TikTokアプリ起動時に最初に再生される音声付きのフルスクリーン動画で、TikTok広告の中でも最もインパクトのある広告枠です。CPM(広告が1000回表示された場合の費用)での課金となりますが、最低出稿金額は500万円以上となります。また、厳密なクリエイティブ審査があります。
Reach & Frequency
インプレッション、リーチ、フリークエンシーを事前に予約し、CPMを確定した状態で申し込みができるメニューです。「Top Feed」というおすすめフィード上で最初の広告枠(4番目)を指定して購入できるものと、「Standard Feed」という順番を指定できずにランダムで表示されるものの2つがあります。
Branded Mission
クリエイターに対してミッションの参加条件を設定(1,000人以上のフォロワーを有するクリエイター等)し、条件を満たしたクリエイターから動画の応募を募ります。広告主側は優れた動画コンテンツをクリエイターと一緒に作り上げることができ、クリエイター側にもインセンティブが発生することで、両者ともにメリットがある仕組みです。
1000万インプレッション保証のMission Standardコースは903万円~、2000万インプレッション保証のMission Megaは1806万円~となります。
運用型
リスティング広告やFacebook広告などと同様に、最低予算無しで少額からスタートできるのが、運用型のメニューになります。管理画面を通じて常に進捗を確認しながら、クリエイティブなどをブラッシュアップしていき、長期的な運用をベースにした広告メニューです。
TikTok広告の課金形態(運用型)
TikTok広告で選択できる課金形態は4種類あります。メインはoCPMと言われるインプレッションベースでの課金となります。
インプレッション課金型(CPM)
CPMとはCost Per Mille(コスト・パー・マイル)の略で、広告が1000回表示された場合の費用を指します(マイルはラテン語で1,000を表します)。システムが自動で露出を高め、可能な限り多くのユーザーにリーチします。
最適化インプレッション課金型(oCPM)
CPMの進化版といえる課金形態で、単純に露出回数を高めるのではなく、システムがコンバージョンまたはアプリインストールイベントを完了する可能性が高いと判断したユーザーを対象として広告配信を行います。
動画視聴単価(CPV)
CPVとはCost Per View(コスト・パー・ビュー)の略で、動画広告を1回再生された場合の費用を指します。TikTokでは視聴者が広告を最短6秒視聴した場合、または最初の6秒間に動画とインタラクションした場合(どちらか先に起こった方)に、支払い義務が発生します。
クリック課金型(CPC)
CPCとはCost Per Click(コスト・パー・クリック)の略で、広告を1回クリックされた場合の費用を指します。広告が表示されるだけでは課金がされないので、認知度アップよりも会員登録や資料請求などのコンバージョンを重視する場合にオススメの課金体系です。
常に上記の課金方法のいずれかを選択できるのではなく、広告キャンペーン開始時に選択する「目的」別に選べる課金形態は異なります。
キャンペーンの目的一覧
TikTokの運用型広告をスタートする際、最初にキャンペーンの目的を選択する必要があります。目的によって課金形態などが変わりますので、自身にあったものを選択しましょう。
リーチ
ブランド認知の基本となる目的。広告をより多くのユーザーに認識してもらいたい場合に使用します。フリークエンシーキャップ(同じユーザーに広告を何回まで表示させるか)の設定が可能。
課金形態:CPM
動画視聴数
動画視聴数の最大化を狙いたい場合に使用します。ユーザーが6秒以上動画を視聴するか、6秒以内に何らかのエンゲージメントを行った場合課金対象となります。
コミュニティインタラクション(CI)
自社サイトやLPへの誘導ではなく、自前で持っているTikTokアカウントのフォロワー獲得を目的としたい場合に使用。oCPMおよびCPCでの課金となります。
トラフィック
自社サイトやLPへの誘導をメインに行いたい場合に使用。CPC及びoCPMでの課金となります。
リード生成
資料ダウンロードなどに必要な名前やメールアドレスといったリード情報を、TikTokアプリ上で入力させることができます。一度自社サイトのフォームに遷移することで起きる離脱の可能性を減らすことができるので、見込み客を獲得したい場合に最適です。課金形態はoCPMとなります。
アプリプロモーション
アプリの宣伝に適したキャンペーン目的。アプリへのクリックやインストール、アプリ内イベントと連動したプロモーションができます。CPC及びoCPMでの課金となります。
WEBサイトのコンバージョン数
自社サイトやLPからのコンバージョン数を最大化するのに最適なキャンペーン目的。CPC及びoCPMでの課金となります。
商品販売
広告を表示したユーザーを商品購入に誘導するのに最適なキャンペーン目的。商品カタログをTikTokの管理画面と連携することで、動的に動画を出し分けてくれます。oCPMでの課金となります。
TikTok広告のターゲティング
TikTokでは他のSNS広告と同様に、様々なターゲティング設定が可能です。大きく分けて、4つのターゲティングメニューが用意されています。
デモグラフィック
性別:男性 / 女性
年齢:13~17歳、18~24歳、25~34歳、35~44歳、45~54歳、55歳以上
ロケーション:国、都道府県(市区町村単位での指定はできません)
言語:ユーザーのアプリ言語設定に基づき配信
購買力:TikTok広告を通じた購買行動に基づき配信
興味/行動
興味
特定のコンテンツへの興味に基づいてユーザーをターゲティングします(金融サービス、ゲーム、ビジネスサービス等)
動画とのインタラクション
過去15日間にTikTokでエンゲージした動画に基づいて、ユーザーをターゲティングします。
クリエイターとのインタラクション
TikTokでフォローまたは視聴したクリエイターに基づいて、ユーザーをターゲティングします。
ハッシュタグとのインタラクション
過去7日間にTikTokで視聴したハッシュタグに基づいて、ユーザーをターゲティングします。
デバイス
ユーザーのデバイスに基づいたターゲティングが可能です。
カスタムオーディエンス
既に何らかの接触があるユーザーのリストを作成し、そのユーザーに限定して配信したり、逆に除外設定することもできます。
カスタマーファイル
電話番号やメールアドレスなど、既にお持ちの顧客リストをTikTokにアップロードすることが出来ます。アップロードしたリストとTikTokのユーザー情報が紐づけされます。
エンゲージメント
TikTokアプリ内の自社アカウントページや投稿した動画に接触したユーザーに対してターゲティングできます。
アプリイベント
自社アプリの特定のイベント(インストール、チュートリアルの完了、支払い情報の登録、レベルの到達など)を完了したユーザーに対してターゲティングが可能。
WEBサイトへのトラフィック
自社サイトへ訪問したユーザーや、自社サイト内で特定のアクション(会員登録、検索、購入など)をしたユーザーに対してのターゲティングが可能。予めTikTokピクセルと言われる効果測定用のコードをサイトに埋め込んでおくことで機能します。
リードジェネレーション
リード生成型の広告を利用したユーザーからターゲットリストを作成。例えば、リードフォームは開いたけど情報を送信しなかったユーザーに対してのリターゲティングが可能になります。
Business Accountオーディエンス
下記のイベントを完了したオーガニックプロファイルをお持ちの場合に限り、ご自身の TikTokビジネスアカウント を使ってオーディエンスのリターゲティング ができる、新しいカスタムオーディエンスタイプです。
・フォロー
・プロフィール訪問
・ 動画視聴(2秒・6秒・100%視聴)
・動画エンゲージメント(いいね・シェア・コメント)
類似オーディエンス
上記で作成したリストに似たユーザーのリストを作成することができます。「狭い」「ノーマル」「広い」に分けられ、「狭い」ほど類似性が高くなります。
TikTok広告の配信フォーマット
広告主が広告用に動画素材を用意して配信する「Diversion」、クリエイターや企業のオーガニック投稿を利用して広告配信を行う「Spark Ads」、更に複数の静止画を組み合わせて配信できるカルーセルフォーマットがあります。
Diversion
「詳細を見る」などのCTAボタンクリックや、左スワイプをすることで外部のLPやアプリストアに直接遷移させるフォーマットです。
Spark Ads
自社で動画を作るのではなく、クリエイターが投稿した動画を広告として配信することができる、TikTok広告ならではの配信フォーマットです。例えば、TikTok内のインフルエンサーにPR動画の登録を依頼したとします。その中から気に入ったPR動画に対して広告費を使って露出を高めることが出来ます。
自社で動画クリエイティブを作成しなくても良い点や、TikTokでバズる動画を作ることに長けているクリエイターの動画を使うことができるので、広告色も少なく共感を生みやすいクリエイティブを使用できるという点でも、是非活用したいフォーマットです。
カルーセルフォーマット
複数の静止画を横並びに表示できるフォーマットです。TikTok広告を始めたいが、動画クリエイティブが無くて出来ないという方にオススメ。他のSNS広告などで展開している素材をそのまま使えるので、制作工数の削減ができます。
TikTok広告の成功事例
ニトリが新生活者向けTikTok施策 若年層の来店が前後比2倍に
新生活需要が高まる3月に合わせ、TikTokクリエイターを起用し、ニトリの商品について生活者目線で伝える動画を投稿。実際の利用シーンをイメージしやすい表現にすることでユーザーの利用意向を高め、実店舗への来店につなげた。
ニトリは期間中の購入者へのアンケートから、若年層の来店数が「TikTok」によって、実施前比で2倍に上昇したと分析している。
グーネット、TikTok広告で車購入の認知と利用意向を大幅向上!低リーチ単価、高成果の戦略とは?
施策の実行後、第三者機関に調査を依頼したところ、TikTok広告は他の動画プラットフォームと比べ、CPMが2分の1、CPCが7分の1程度だったことがわかり、大変驚きました。安価にユーザーにリーチすることができ、認知や利用意向の向上効果も非常に高かったので、投資対効果がとても高いプラットフォームであることが実感できました。
おわりに
以上、TikTok広告の特徴について説明しました。
基本的にはFacebookやInstagramといった他のSNS広告と仕組みは同じですし、管理画面のキャンペーン構造なども一緒なので、SNS広告経験者の方には取り組みやすいプラットフォームだと思います。
まだ本格的に広告運用を開始している企業も、他のSNSに比べれば少ないので、先行者メリットのある段階から取り組んでおきたいSNSです。
動画の制作やインフルエンサーの活用なども含めて本格的に運用したい場合には、TikTok広告が得意な広告代理店に依頼するのも一つの選択肢です。代理店の選び方については以下もご参照下さい。