検索に活きる!1日100円からの電柱広告マーケティング(後編)

前編では、電柱広告を企画営業をしながら、「電柱広告のキムラ」として活動する株式会社東広の木村隆氏に話を聞き、事例を中心に電柱広告の魅力について紹介した。


後編では、“業務改善”や“WEB検索”など知られざる電柱広告の副次的な効果について話を聞いた。

実は業務改善に繋がる電柱広告

木村氏によれば、現状、電柱広告を活用している企業は、“店舗をお持ちのビジネスをされている企業”が多いという。
【店舗をお持ちの企業様の設置が多いそうだ。木村氏のInstagramより引用】

例えば、不動産会社が将来の売買で選んでもらうために、特定のマンション近くの電柱で広告を出したり、学習塾を運営する企業が学校近くと近所のスーパー近くで電柱広告を出すことで、親子をターゲティングする事例はよく見られるそうだ。

「電柱広告は“広告”というキーワードが付く以上、集客や宣伝をメインとした媒体と思いきや、業務改善に繋がるという一面もあります」と木村氏。

「例えば、雑居ビルの上の階に入居しているクリニックや飲食店のケースの場合、ビルのオーナーさんの意向でウインドマーキングが出来なかったり、袖看板が出せないケースも少なくないので、表札代わりに出稿する方もいらっしゃいます。」
【ビルの袖看板イメージ。最近はビルオーナーの意向で看板が出せないケースが多いそう】

店舗を目指していたお客様が迷って電話が入れば、その対応が発生する。また、仮にビル入り口に置き看板を出すとしても、出し入れの作業に多少なりとも時間がかかると考えると、それが1日約100円で解決できるとすれば確かにコスト的なメリットも大きいのかもしれない。

電柱広告は単なる宣伝ツールにとどまらず、店舗の方向指示や識別しやすいマークとしての機能を果たし、迷客の減少や店舗へのスムーズな誘導にも寄与するツールとなるようだ。

電柱広告は「検索に活きる」

業務改善という側面で電柱広告を見てきたが、やはり気になるのは電柱広告が実際に集客に繋がるかということだ。この疑問について、電柱広告を始めとする屋外広告は「集客はもちろん、検索に活きます」と木村氏は話す。

「ある歯科医院様に聞いたお話ですが、商圏を絞って無意識に見てもらう環境を作るため、電柱広告を必ず設置するそうです。そうすると、そのエリア内にお住まいの方に無意識に見てもらえる状態が作れる。これが検索に活きます。

例えば、地名+歯医者と調べたら、少なくとも5以上は候補が出てきます。その中で選ぶ場合、全く知らない候補よりも“街で見かけた”ことがあり、無意識のうちに“知っている”状態になっていれば、選ばれる確率が高くなるそうです」

【「渋谷 歯医者」で地図検索した様子。30以上の候補が表示されたが、表示された情報だけであれば、場所と口コミの軸で判断してしまいそうだ】

アナログなイメージがある電柱広告がWEB施策の効果を促進しているのは興味深い。

「あとは、クリック後の受け皿となる自社HPをしっかり作っておけば自然と予約が入ると教えて頂きました。」

「色数は4色まで」エリアによって異なるデザインのルール

掲載までに時間がかかるイメージの強い屋外広告だが、電柱広告については問い合わせから取付まで約1カ月ほどで対応可能という。

エリアによってクリエイティブのルールが異なるため、出稿したいエリアの屋外広告物条例などを確認しておく必要があるそうだ。例えば、東京都では「背景に黒色・赤色・黄色が使用できない」「色数は4色まで」「写真は使用不可」などのルールが存在する。

「実際、クリエイティブは弊社で作らせて頂く事の方が多いです。ルールを熟知した人間が、何パターンか出させていただいて、それをたたき台にして、希望に近づけていくっていうイメージです。」
【普段広告を見慣れている筆者も思わず「デカっ!」と驚いた電柱広告の実物。こちらルール通りに作成したデザインとのこと】

最近は「電柱広告で面白い事をやってみたい。」と木村氏に相談が来るケースも多いよう。そういった問い合わせが入った際は、“面白い”基準をすり合わせた上で企画とセットで提案しているそうだ。

「使い方とかは、やっぱりルールや事例を熟知している電柱広告のプロがアドバイスができる部分であると思っています。最近だと、電柱広告からしたら一番遠い存在であろう、WEB領域でSNS運用を中心にビジネスをしている企業が、自社の宣伝を電柱広告に出してUGC獲得に繋げた事例もありました。」

効果計測でアンケートを取る時は「書き方」に要注意!

最後に、電柱広告をはじめとする屋外広告を実施する際、「効果計測の方法に注意する必要がある」と木村氏が教えてくれた。

企業によっては、初来店時にお客様に「何を見て来店したのか」をアンケートするケースは少なくない。選択の候補に「LINE」「Instagram」「HP」「折り込みチラシ」「駅広告」「電柱広告」と項目が並ぶ中、大半の方は来店までの間で“最後に見た”項目を選択するため、例えば実際は「電柱広告を見てHPを調べた方」もアンケート上では「HP」と回答してしまう事が多いそうだ。

結果、アンケートから、屋外広告の効果がないと判断して辞めてしまうケースも多いようで、“以前に比べて成果が落ちたけど、何故かわからない”状態に陥る事があるという。
メディアは複合的に機能して消費者に行動を促すもの。「どれを見たことがありますか」と複数回答とするだけでインパクトが変わるようだ。

100年以上の歴史がありながら、まだまだ知らない方も多い電柱広告。工夫次第で屋外広告の新しい選択肢になると言えそうだ。

(取材協力:株式会社東広