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DEI視点で切り拓く、新時代のストーリーテリング | 橋口幸生
訂正する力 著者 / 東 浩紀
今年7月に、DEI専門のクリエイティブ・チーム、「ボーダーレス・クリエイティブ」を電通社内で立ち上げました。私にとってDEIとは「当たり前を疑い、新しい当たり前をつくること」です。たとえばジェンダー平等であれば、「男の方がえらい」という「当たり前」に対して、「実はそんなこと無くない?」という問いを立てるのがDEIです。DEIを取り入れた海外の映画やドラマの世界では、これまでメディアに登場する機会が少なかったマイノリティを起用した作品が続々登場し、大ヒットしています。エミー賞史上最多受賞の『SHOGUN 将軍』が良い例です。広告でも海外を中心にDEI視点の事例が増えています。日本もこの潮流を避けることは出来ません。
そんなDEIに取り組むビジネスパーソンにお薦めしたい本が東浩紀さんの『訂正する力』です。東さんは訂正する力を「過去との一貫性を主張しながら、実際に過去の解釈を変え、現実に変化する力」と定義しています。ビジネス用語で言うと「ストーリーテリング」です。成功例として挙げられているのが明治維新です。幕藩体制だった日本を「もともとは天皇の下、一つにまとまった国だった」と再解釈することで、近代国家に作り変えました。このように「新しい当たり前」をつくるのに欠かせないのが「訂正する力」なのです。
東さんに反感を持っているリベラル寄りの人にこそ、読んでほしい一冊です。
日本にいま必要なのは「訂正する力」です。保守とリベラルの対話にも、成熟した国のあり方や老いを肯定するためにも、さらにはビジネスにおける組織論、日本の思想や歴史理解にも、あらゆる局面で「訂正」は大きな「力」になります。人が生きることにとって必要な哲学を実践的に示した決定版です。
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