リスティング広告やSNS広告など、いわゆる運用型のWEB広告は、定額からスタートでき費用対効果の測定もできるので、新しい商品・サービスをPRするにあたり、まず最初に取り組みたい広告手法です。
設定はWEB上で完結し、支払いもクレジットカードがあればできるので、最短で当日から広告配信がスタートできます。簡単に始められる一方で、本格的に運用していく場合、自社運用(インハウス)ではなく、専門の広告代理店への依頼を検討するケースもあります。
この記事では、広告代理店に依頼する際のメリット・デメリットや、依頼する際に注意しておきたいチェックポイントを解説します。
代理店に依頼すべきか、自社運用(インハウス)か
リスティング、SNS広告といった運用型広告は、アカウントさえ持っていれば、自分でも比較的簡単にスタートできます。
いずれのプラットフォームで配信するにしろ、月の広告費予算が10万円未満であれば、まずはご自身で一度配信してみることをオススメします。一度自身で設定から広告配信を行うことで、将来的に広告代理店に依頼する際にも丸投げではなくしっかりと内容を把握することが出来るようになります。
試しに自社運用でトライアルしてみて、「この反応なら予算を上げればもっとブーストできるかも?」といった手応えを感じ、月の広告費予算が10万円を超えてきたら、一度広告代理店への外注も検討してみることをオススメします。
同じ広告文や画像・動画を使って一時的に成果が上がったとしても、同じクリエイティブを使い続けていけば徐々に効果は落ちていきます。常に新しいクリエイティブを作ってはA/Bテストを繰り返し、勝ち筋を見つけていく作業は自社で行い続けるのは結構大変なものです。
具体的な代理店に依頼することで起きるメリット・デメリットについては以下で詳しく説明します。
WEBの運用型広告を代理店に依頼するメリット
リソースの心配が不要(後回しにしないですむ)
運用を代理店に依頼する事で、自社のリソース不足を心配する必要がなくなります。
広告の専任担当者を付けられる場合を除いて、多くの企業では運用型広告を行う人は、それ以外の業務も兼任しているはずです。メイン業務に追われて広告運用にまで手が回らない場合もありますし、広告担当者がいたとしても、リスティング広告がメインでSNS広告は優先順位が下がる、などといったケースはよくあります。
お客様対応などの緊急度の高い業務よりも、広告運用を優先できる会社は少ないですよね。目の前のお客様と真摯に向き合っている会社であればあるほど、広告が後回しになっていく…というケースはよく耳にします。
代理店に依頼することで、後回しにしないで済みますし、定例のレポートやミーティングがあることでペースメーカー的な役割も期待できます。
他社で得たノウハウを使えるので、成功までのスピードが早い
WEB広告の運用代行をしている広告代理店は、様々なクライアントの案件を運用しています。過去に様々なチャレンジや失敗を繰り返しているので、代理店には様々なノウハウが蓄積されています。自社で運用する場合、ある程度の失敗を織り込んだうえでのスタートとなりますので、成果が安定してくるまでは数ヶ月かかります。
代理店に依頼する場合は、安定運用まで最短でたどり着くことができます。特に自社の商品・サービスと近い広告の運用実績がある場合は、信頼して依頼することができます。
最新情報を把握している
リスティングやSNS広告などは、日々新しい配信面やフォーマットが誕生していきます。管理画面のリニューアルも頻繁で、数年前のマニュアルはもはや使い物にならない、といった事もザラにあります。GoogleやMETAなどの媒体社側としても、新機能や今後の方向性などは代理店向けのセミナーや勉強会で積極的に共有をしているので、代理店はリニューアル情報などをいち早くキャッチすることができます。
「費用対効果が徐々に悪化していると思ったら、リニューアル前のフォーマットで配信し続けていた」などといった、情報のキャッチアップができなかった事に起因するリスクを軽減することができます。
WEBの運用型広告を代理店に依頼するデメリット
手数料がかかる
広告代理店に依頼する場合、広告費用の他に運用手数料が発生します。この手数料を広告費の一部として捉えるか、広告運用に関わる人件費を外出ししたとして外注費として捉えるかは会社の方針によりますが、広告費として捉える場合は費用対効果が悪くなる場合があります。
自社のノウハウが貯まらない
広告代理店に依頼することで、代理店のノウハウを使って成功までのスピードを上げることはできますが、あまりにも代理店に任せきりにしてしまうと自社のノウハウが貯まらず、成功するも失敗するも代理店頼み、といった状況が生まれてしまします。
外注するにしても、ある程度WEB広告の概要は理解したうえで、定例ミーティングを通して作業内容や設定などを把握していくことが必要になります。
代理店の分類
WEBの運用型広告を依頼できる代理店には、大きく分けて3つの規模に分けられます。分類を知ることで自社にあった代理店選びの参考にしてください。
大手
月の広告費目安:1000万円~
運用担当一人あたりのクライアント数:3社程度
ナショナルクライアントをメインクライアントとする大手の代理店の場合、経験豊富な担当者が多く、社内で共有されている成功事例も多く、教育体制もしっかりしているため人材の平均レベルが高いといった傾向があります。
一方で、月予算が数百万円程度の場合、新人が担当したり、下請けのリスティング業者に再委託する場合もあります。
中堅
月の広告費目安:100~1000万円
運用担当一人あたりのクライアント数:3~10社
月の予算が1000万円未満であれば、中堅どころの代理店が対象となります。
比較的経験豊富な担当者が多く、数百万円の予算でもエース級の担当者が付く場合があります。
一方で、会社によっては担当あたりのクライアント数が多すぎる場合があったり、実績のある業種に偏りがある場合もありますので、得意業種・不得意業種はよく確認するようにしましょう。
中小
月の広告費目安:10~100万円
運用担当一人あたりのクライアント数:10社以上
月の予算が100万円未満の場合、中小規模の広告代理店が対象となります。
大手・中堅では断られるような低予算から依頼が可能で、元大手で実績のある担当者が独立したケースなどでは、低予算でもエース級の担当者が付く場合もあります。
一方で、担当者によるレベルの違いが大きかったり、担当者あたりのクライアント数が多く、改善提案より運用中心となるため、依頼者側にある程度の知識が必要になります。
また、月予算が30万円未満の場合は、手数料が割高になる場合もあります。
広告代理店選びのチェックポイント10選
1、料金体系(手数料、最低予算)
運用型広告の手数料は、広告費の20%が一般的です。
広告費として100万円発生した場合、運用代行手数料は20万円となり、支払額の合計は120万円となります。広告費を基準として外掛けするケースが多いですが、中には手数料も含めた総額費用の20%が手数料という内掛け方式で計算している代理店もあります。
この場合、総額100万円の内訳は(広告費80万円、運用手数料20万円)となり、広告費をベースにした換算だと25%の手数料となります。手数料を確認する際には、何を基準に話しているかをしっかり把握していないと、後々トラブルとなります。
また、パーセンテージではなく固定費型を採用している代理店もあります。月の広告費のレンジによって、10万円までは手数料2万円、20万円までは4万円といった形でレンジにより価格が変動するケースが多いです。
月の最低予算については代理店ごとに取り決めがありますので、最初に問い合わせる際に月の予算については必ず伝えることをオススメします。話を詰めてから、予算が足りずに依頼できないとなると、お互いに時間の無駄になります。
2、担当者の実績
自身の商品・サービスと類似したクライアントの実績があるかも、必ず確認しましょう。運用代行をしたことがある、という事も大事ですが、その際にどれくらいの成果を上げることができたかに答えられるようなら更に安心です。「弊社のようなサービスの運用実績はありますか?」と質問してYESだった場合には、「どれくらいの成果が出ましたか?」と続けて質問するようにしましょう。
ただしこの実績は、会社としての実績よりも、担当者個人の実績が重要になります。会社としては様々な商品・サービスの運用実績があっても、ついた運用担当者が新人だった場合は成果を出すのは難しくなります。月の広告費予算が1000万円以上の顧客をメインにしている大手代理店に対し、月数百万円の依頼をすると、経験の浅い担当者がアサインされることもあります。
逆に月の広告費予算が少額でも、中小の代理店や、大手代理店で経験豊富なスタッフが独立してスタートしたばかりのスタートアップの場合には、会社のエース級の担当者がアサインされるケースもあります。
3、担当者との相性
運用型広告は長期的な取り組みとなるので、窓口となる営業担当や運用担当者との相性も重要になります。自社の商品・サービスについて、よく事前調査をしていて興味を持ってくれているかは、面談時の質問の量や質で判断できます。
予算や運用ルール、自社の強みばかりを一方的に説明して、商品・サービスや実現したい将来像などについての質問が殆ど無い場合は注意が必要です。また、話すスピードや間などが自分の好みに合っているか、話していて心地よいかといった感覚的な部分も大切です。
ヒアリングや提案時の担当者が気に入って契約したのに、運用開始したら一切出てこない、といったケースもあるので、事前面談時の担当者が運用開始後も継続して担当してくれるかは必ず確認しましょう。
4、レポート、ミーティングの頻度
代理店からの報告は、レポートと定例ミーティングで実施されます。
レポートは様々な形式がありますが、契約後のトラブルを防ぐためにも、レポート頻度に関しては事前に確認をしておいた方が良いでしょう。月に1回なのか、週に1回なのかなどで費用が変わるケースもあります。
定期的にエクセル等で送付される場合もありますし、代理店側でレポート閲覧用のツールを用意してあり、前日までの数値を随時確認できる場合もあります。もともと自社で運用していた管理画面の操作権限を代理店に付与する場合は、リアルタイムで数値把握が可能です。
レポートは数字の羅列であり結果なので、それを元に「なぜ、その数字/成果なのか?」「次月の改善アクションは何か?」といったようなPDCAサイクルを回すために行われるのが定例ミーティングです。
ただ、ミーティングの頻度が高ければ高いほど良いといったわけではありません。例えば、インスタ広告は設定変更後、数週間程度の機械学習を経てようやく本来の成果が出始めます。機械学習中が終わる前に軌道修正をしていくと、かえってミスジャッジを招く恐れもあります。月予算が1000万円以上で短期間で機械学習が済むケースを除いては、ミーティング頻度は月1回程度が妥当です。
レポートはなるべく短サイクルで、ミーティングは月1回程度、その他疑問点は都度確認できる体制が理想です。
5、契約期間、解約時のルール
多くの代理店が契約期間に応じて料金を設定しています。1カ月から契約可能な代理店もあれば6カ月が最低契約期間となる代理店もあり各代理店によって異なります。運用型広告は日々の改善によって成果が出るまで一定の期間が必要となるため、3カ月程度の期間を設けている代理店が多いです。
また、契約期間満了後は自動更新になる場合や契約期間内でも中途解約が可能な場合もあります。契約期間を確認する際は解約時のルールと期間内での中途解約が可能かも含めて事前に確認しておくことが重要です。
運用の成果が十分ではない場合、将来的に代理店の乗り換えや自社運用に切り替える可能性も考え、解約の際に広告アカウントの移管が可能な代理店なのかも事前に確認しておきましょう。移管に応じてもらえず新しいアカウントを作り直すことになると、これまでのアカウントに蓄積されたデータを活用できず成果を出すまでに時間がかかってしまうリスクがあります。
6、管理画面の閲覧権限
広告代理店を選ぶ上での基準として、代理店から広告アカウントへの閲覧権限を付与してもらえるかも、確認が必要です。
閲覧権限をもらうことができれば、広告主側で管理画面の「操作履歴」を閲覧できるので、代理店が日々どんなことをしているのかを把握できるようになります。また、キャンペーンやキーワードごとの消化コストを閲覧できるので、なにに広告費が使用されているのかがリアルタイムで把握できるようにもなります。
ノウハウの流出を避けるため開示しない、という代理店もありますし、もともと自社で所有・管理している広告アカウントを代理店に編集権限を付与するという形であれば公開OKという場合もあるので、必ず事前に確認しましょう。
参考:Google広告管理画面
7、担当者一人あたりのクライアント数
運用担当者がどれくらいのクライアントを担当しているかは、代理店ごとに方針がかなり分かれる部分になります。
代理店も商売ですので、1クライアントあたりの月の広告予算が大きければ、少ないクライアント数でもビジネスとして成り立つのに対して、低い予算から対応してくれる代理店の場合には、たくさんのクライアントを担当しないと収益が成り立ちません。予算は少ないけど担当クライアントは少なくして欲しい、というのは無理な話なので、自身の予算感にあった代理店を選ぶ必要があります。
1人あたりの担当者数:~5社程度
・改善提案などの手厚いサポートが期待できる
・月予算は数百万円以上が目安
1人あたりの担当者数:5~10社程度
・標準的なサポートが期待できる範囲
・月予算は100~300万円程度が目安
1人あたりの担当者数:10社~20社以上
・予算が50万円未満の場合はこのケースが多くなる
・コンサルティング的なスタイルよりも、運用代行に徹するスタイルが多い
1人あたりの担当者数:20社以上
・定例ミーティングは行っていない場合が多い
・コンサルティング的な部分は期待するのが難しく、あくまでも運用代行という認識が必要
8、バナーや動画、LP制作までできるか
ディスプレイ広告やSNS広告の場合、画像や動画などのクリエイティブが成功の鍵を握ります。複数の画像・動画を作成した上でのA/Bテストを繰り返していく必要がありますし、出稿するクリエイティブだけではなく、遷移先となるLPの出来によっても成果は大きく変わりますので、社内に制作のリソースがない場合は、制作の依頼も可能な代理店を選ぶほうが安心です。
9、取り扱い可能な媒体の種類
GoogleやYahooのリスティング広告や、Facebook、Instagram、LINE、X(旧Twitter)、TikTokなどのSNS広告、各種DSPなど、取り扱い可能な媒体の種類についても確認しておいたほうがいいでしょう。
取り扱い可能な媒体が多いと、SNS広告では認知度アップを中心に行い、具体的なキーワードで検索した時にリスティングでコンバージョンさせる、といった複合的な施策も検討できますし、様々な媒体を一斉にテストして、効果の高い媒体に絞り込むと言ったやり方も期待できます。
10、各媒体の公式パートナーに認定されているか
各媒体では、取り扱っている代理店の実績に応じて公式パートナーを認定するプログラムがあります。
運用金額やクライアント数、広告ポリシーへの準拠など様々な基準をクリアした代理店だけが認定されますので、認定バッジがあることで一定の安心感があります。
過去の実績による認定になるので、運用代行のスキルは非常に高いものの、創業間もない代理店などはまだ認定されていないケースもあります。
まとめ
運用型広告で成果を出すには、日々のPDCAをどれだけ回し続けられるかが重要なポイントになります。広告代理店に依頼する場合、代理店の担当者の実力によって成果は大きく違ってきますし、一度契約すると解約したり、次の代理店に切り替えたりするのは作業量としても心理的にもハードルが高いものです。
当記事の代理店選びのチェックポイントを参考に、信頼できるパートナーを見つけることで、事業成長に役立てていただければ嬉しいです!