経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2021年3月分の広告業売上高が発表になりました。新型コロナウイルス流行以降では、初めて全体の前年同月比がプラスに転じています。
新型コロナウイルス感染拡大以降、初めて前年同月でプラスに
2021年3月の広告業全体の売上高は7,029億円と、前年同月比で100.4%。新型コロナウイルスの流行が拡大した2020年4月以降で初めて前年同月比を超える売上高となりました。コロナ感染拡大以前から見ても、2019年9月以来の前年同月比超えとなっており、コロナ禍でも好調を維持していたインターネット広告以外にも、複数のカテゴリーで前年超えとなっています。
3月末に決算の締めを迎える企業が多い中、年間の広告費予算の消化目的で、駆け込み需要があったことが大きな要因と見られます。
新聞が前年同月比103.9%とプラスに。4マス全体では96.7%
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,712億円。前年対比では96.7%となっています。
新聞広告は前年対比103.9%と、2019年9月以来久々に前年同月比でプラスに転じています。コロナ禍でも90%前後の月が多く、他のカテゴリーに比べて減少幅は少ない方でしたが、ここでのプラス転換はやや意外です。
雑誌広告は前年比68.3%と引き続き大きく下落しています。4月以降の前年比40~50%台といった、ショック的な水準からは回復していますが、全体的に改善傾向が見られたこの3月でも、引き続き厳しい状況が続いています。
テレビCMは前年比97.1%と、引き続き4マスの中では低い下落率を保っています。これまで不透明だったテレビCMの効果を可視化出来るツールなどが各企業から続々リリースされており、改めてその価値観が見直され始めています。
ラジオ広告は前年比85.8%と、引き続き下落してはいるものの、コロナ以降一貫して同程度の水準を保っています。
インターネット広告は115.5%と引き続き好調
2020年10月から、前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。この3月も引き続き前年比115.5%と、全カテゴリーの中で最も伸びたカテゴリーとなっています。検討から実施まで短期間で行える為、余った広告費予算の投入先として、引き続き数字を伸ばしています。
屋外広告95.6%、折込・ダイレクトメールは102.9%と回復
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、交通広告は63.1%。緊急事態宣言によるリモートワークの促進や、卒業旅行などの春休みシーズンの観光需要の減少など、交通広告には厳しい環境が続いています。駅近郊で開催されるイベント告知といった、交通広告で多い出稿パターンも、引き続き見る機会が少なくなっています。
屋外広告は前年比95.6%と、コロナ禍以降では最も下落率が少ない月となりましたが、社会情勢的に回復はイレギュラー的なものだと考えられます。
折込・ダイレクトメールは102.9%と、こちらも久しぶりにプラスに転じていますが、一斉配布により経費計上がしやすい点などから、年度予算の消化先として選ばれたのかもしれません。
前年対比は前月(2021年2月)と比べて回復も、一時的か
2月と3月の各カテゴリー毎の前年対比を一覧で比較してみました。3月は広告費全体の前年対比が100.4%と、2月に比べて回復したカテゴリーが多くなりました。
年度末で余った広告費予算の消化先として、一時的な回復であるといった見方も出来ますし、4月以降、まん延防止法や東京・大阪といった主要都市の緊急事態宣言の再発令などもあり、再度減少傾向になる可能性も否定できません。各カテゴリーの動きについて、今後も引き続き注視していきます。