経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2021年4月分の広告業売上高が発表になりました。全体の売上高としては、前年同月比で114.0%と大きく上昇しています。前年4月から本格的に新型コロナウイルスによる影響を受け始めており、その反動が大きな要因ですが、徐々に回復の傾向は見え始めています。
広告費全体では前年同月比114.0%と大きくプラスに
2021年4月の広告業全体の売上高は4,547億円と、前年同月比で114.0%。新型コロナウイルスの流行が拡大し、初めて緊急事態宣言が発出され、大きく売上が落ち始めた2020年4月との比較になるため、その反動で大きなプラスの数値となっています。
本年4月も、東京を中心に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されている中、売上を戻しているカテゴリーや、まだ売上を戻しきれていないカテゴリーなど、その差がより明確になりつつあります。
4マス全体は106.7%。新聞・テレビ・ラジオが回復する中、雑誌は更にダウン。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,331億円。前年対比では106.7%となっています。
新聞広告は前年対比115.8%と回復。ただ、新聞広告は申込みから出稿までのリードタイムが他媒体に比べて短いため、コロナの影響を受け始めるのが早かったカテゴリーの一つ。2020年4月時点での広告費全体の前年同月比が80.6%だったのに対し、新聞広告は66.8%と、いち早くコロナの影響を受けていました。その結果、本年4月の数字に関してはより反動が大きく出ているため、プラス幅が大きくなっています。
雑誌広告は前年同月比68.2%と引き続き大きく下落。前年4月もコロナの影響を受け始めていますが、それと比較しても回復の兆しが見えてきていません。短期的なコロナの影響というよりも、デジタルシフトという長期的な動きがコロナの影響でより加速しているように見えます。
テレビCMは前年比107.3%と回復。前年の反動もありますが、本年4月も緊急事態宣言等の影響もあり、レジャーよりも巣ごもりといった傾向は強まっており、数字を戻してきています。
ラジオ広告は前年比102.9%と、こちらも僅かながら回復。4マスの中では最もコロナの影響を受けていないカテゴリーではありますが、やや回復傾向にあります。
インターネット広告は136.4%と大幅増加。単なる反動ではない強い伸び率
2020年10月から前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。この4月も引き続き前年比136.4%と、大幅に数字を伸ばしています。2020年4月時点の前年同月比が100.9%でしたので、反動と言うよりも純粋に数字を伸ばしています。他のカテゴリーが苦戦する中、広告費の投資先が更にインターネット広告にシフトしている様子が見て取れます。
交通広告69.2%、折込・ダイレクトメールは161.4%と大きく回復
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、交通広告は69.2%。緊急事態宣言等によるレジャー需要の低下や、リモートワークの定着化などにより、未だ数字が戻ってきていません。
今回数字として目立ったのが折込み・ダイレクトメールのカテゴリー。前年同月比で161.4%と大きく回復しています。ただ、新聞広告と同様に、こちらも前年コロナの影響をいち早く受けたカテゴリーで、2020年4月時点の前年同月比は45.8%と大きく数字を落としていました。今月の数字はその反動による影響が大きく、まだ本格的な回復には至っていません。
コロナの影響を受ける前、2019年4月との比較
前年対比ではコロナの影響による反動が大きい為、2019年の同月との数字を比較してみました。広告費全体では96.9%と僅かに減少していますが、コロナ以前の数字に戻りつつあります。
一方でカテゴリー別に見ると、インターネット広告が182.8%と大幅増加。その他のカテゴリーは、新聞77.4%、雑誌50.5%、屋外広告65.0%、交通広告54.3%と軒並みマイナス。インターネット広告一人勝ちという結果になっています(海外広告は伸びていますが、母数となる数字が小さいためブレ幅が大きく、単純に伸びているとは言えない)。
引き続きコロナ感染による自粛ムードが続く中、一方ではワクチン接種に目処が立ち始め、アフターコロナのイメージも少しずつ見えてきています。今度広告費の数値がどのように変化していくのか、引き続き注視していきます。