経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2021年5月分の広告業売上高が発表になりました。全体の売上高としては、前年同月比で128.9%と大きく上昇しています。前年5月は2020年の中でも最も売上が下がった月だった為、その反動が大きな要因ですが、徐々に回復の傾向は見え始めています。
広告費全体では前年同月比128.9%と大きくプラスに
2021年5月の広告業全体の売上高は3,952億円と、前年同月比で128.9%。前年は新型コロナウイルスの流行が拡大し、4月に初めて緊急事態宣言が発出された影響から、年間を通しても最も売上が落ち込んだ5月との比較になるため、その反動で大きなプラスの数値となっています。
殆どのカテゴリーが反動増となっている中、依然回復の兆しの見えないカテゴリーもあり、コロナの影響による明暗がよりはっきりと見えてきています。
4マス全体は広告費全体と同じく128.9%。雑誌だけが唯一ダウン。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,324億円。前年対比では128.9%となっています。
新聞広告は前年対比110.4%と回復。2021年2月から3カ月連続で前年同月比プラスとなりました。新聞広告は申込みから出稿までのリードタイムが他媒体に比べて短いため、コロナの影響を受け始めるのが早かったカテゴリーの一つ。2020年5月時点での前年同月比が70.6%でしたので、回復というよりは前年の落ち込みの反動と捉えられます。
雑誌広告は前年同月比94.4%と下落。4マス媒体の中では唯一の減少となっています。前年5月もコロナの影響を大きく受け始めていますが、それと比較しても回復の兆しが見えてきていません。短期的なコロナの影響というよりも、デジタルシフトという長期的な動きがコロナの影響でより加速しているように見えます。
テレビCMは前年比133.6%と大きく回復。前年の反動もありますが、2019年の水準に戻りつつあり、4マスの中では最も回復傾向が強いカテゴリーとなっています。
ラジオ広告は前年比107.8%と、こちらも回復。4マスの中では最もコロナの影響を受けていないカテゴリーではありますが、やや回復傾向にあります。
インターネット広告は144.1%と大幅増加。コロナ以降で最も高い前年対比。
2020年10月から前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。この5月も引き続き前年比144.1%と、大幅に数字を伸ばしています。コロナの影響による落ち込みを回復するどころか、他のカテゴリーから予算を奪うような形で一段上のステージに到達した感があります。
交通広告91.0%、折込・ダイレクトメールは179.4%と大きく回復
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、屋外広告が101.1%、交通広告は91.0%。ゴールデンウィーク期間中の帰省・観光への自粛要請が引き続き続く中、未だ数字が戻ってきていません。
4月に続き、数字として目立ったのが折込・ダイレクトメールのカテゴリー。前年同月比で179.4%と大きく回復しています。ただ、新聞広告と同様に、こちらも前年コロナの影響をいち早く受けたカテゴリーで、2020年5月時点の前年同月比は37.0%と大きく数字を落としていました。今月の数字はその反動による影響が大きく、2019年以前に比べてもまだまだ回復には至っていません。
コロナの影響を受ける前、2019年5月との比較
前年対比ではコロナの影響による反動が大きい為、2019年の同月との数字を比較してみました。広告費全体では95.8%と僅かに減少していますが、コロナ以前の数字に戻りつつあります。
カテゴリー別に見ると、インターネット広告が168.3%と大幅増加。その他のカテゴリーは、新聞78.0%、雑誌54.9%、テレビは97.6%、ラジオは82.3%と、4マス媒体の中でも回復度合いに大きな差があります。交通広告は61.5%と大きくマイナス、折込み・ダイレクトメールも66.3%と回復に至っていません。
引き続きコロナ感染による自粛ムードが続く中、オリンピックを直前に控えた6月はどういった数字になるのか注視していきます。