経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2021年6月分の広告業売上高が発表になりました。
広告費全体では前年同月比110.5%と大きくプラスに
全体の売上高としては4,398億円と、前年同月比で110.5%と大きく上昇しています。コロナの影響を色濃く受けた前年6月からの反動ではありますが、ほとんどのカテゴリーがプラスに転じており、全体的な広告自粛の流れは底打ち感も見られてきています。
4マス全体は前年同月比125.1%。ラジオ以外はプラスに。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,320億円。前年対比では125.1%となっています。
新聞広告は前年対比104.4%と回復。2021年2月から4カ月連続で前年同月比プラスとなりました。2020年6月時点での前年同月比が76.4%でしたので、反動でプラスには転じているものの、コロナ前の水準には回復していません。
雑誌広告は前年同月比137.0%と大幅増加。コロナ以降で初めてプラスに転じていますが、こちらも2020年6月時点の前年同月が44.5%と大幅減だった反動に過ぎず、長期的な下降トレンドは継続しています。出版社も紙面から電子版への転換に力を注いでおり、今後もこのトレンドは継続すると見られます。
テレビCMは前年比129.6%と大きく回復。前年の反動もありますが、2019年の水準に戻りつつあり、4マスの中では最も回復傾向が強いカテゴリーとなっています。
ラジオ広告は前年比93.5%と、4マスの中では唯一の減少。元々ラジオはコロナの影響が少なかったカテゴリーであり、前年の下落が少なかった事も一因です。
インターネット広告は136.1%と大幅増加。引き続き一人勝ち状態。
2020年10月から前年同月比でプラスが続いているインターネット広告。この6月も引き続き前年比136.1%と、大幅に数字を伸ばしています。コロナの影響による落ち込みを回復するどころか、他のカテゴリーから予算を奪うような形で一段上のステージに到達した感があります。
交通広告は94.7%と、依然回復の傾向が見られず。
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、屋外広告が122.3%と数字を伸ばしていますが、こちらも反動増による数字であり、本質的な回復までは至っていません。
交通広告は94.7%。こちらは反動による増加も見られず、依然厳しい状況が続いています。通勤客は前年からかなり回復してきているものの、引き続き観光客は回復が鈍く、広告費の数字も戻ってきていません。
折込・ダイレクトメールや海外広告、SP・PR・催事企画といったカテゴリーも前年同月比ではプラスですが、こちらも前年の大幅減からの反動の範疇を越えていません。
コロナの影響を受ける前、2019年6月との比較
前年対比ではコロナの影響による反動が大きい為、2019年の同月との数字を比較してみました。広告費全体では91.5%と減少していますが、徐々にコロナ以前の数字に戻りつつあります。
カテゴリー別に見ると、インターネット広告が155.0%と大幅増加。その他のカテゴリーは、新聞79.8%、雑誌61.1%、テレビは92.6%、ラジオは79.1%と、4マス媒体の中でも回復度合いに大きな差があります。屋外広告は83.1%、交通広告は62.6%、折込み・ダイレクトメールも69.8%と回復に至っていません。
広告費全体としては数字を戻しつつあるものの、紙媒体・屋外広告は苦戦が続き、インターネット広告への予算集中が続いています。ワクチン接種が広がる中でも、再びコロナ感染者数が増え始めた7月以降はどのような数字変化が生じるのか、引き続き注視していきます。