経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2020年10月分の広告業売上高が発表になり、全体としては前年対比87.0%と、引き続き新型コロナウイルスの影響を反映した数値となりました。
引き続き前年割れも、コロナ以降では最も回復
2020年10月の広告業全体の売上高は3,991億円と、前年同月比比較で87.0%と引き続き大きく減少。一方で新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発動された2020年4月以降としては、下げ幅は最も縮小しています。
カテゴリー別の動向を見ていくと、全国的にパニックとなった4月、5月とは違い、比較的回復傾向に見られるカテゴリーと、そうではないカテゴリーに差が出来始めています。
4マスの中では雑誌広告が前年比64.8%と最も下落
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,381億円。前年対比では93.6%と、広告費全体の落ち込みに比べて健闘しています。
4月以降は前年対比60~70%台で推移していた新聞広告は、前月9月には83.5%と回復傾向を示すと、本10月においては91.9%と回復。新型コロナウイルスの発生前とほぼ同等の下げ幅まで回復してきています。
雑誌広告は前年比64.8%と引き続き大きく下落。4月以降の前年比40~50%台といった水準からは若干の回復傾向は見られますが、それでも引き続き厳しい状況。雑誌広告はコロナ以前から前年比で90%前後で推移しており、下げ止まりを見せていません。
一方でテレビCMは4マスの中でも最も回復。未だ前年比マイナスではあるものの、前年比95.8%まで回復してきています。外出自粛で自宅でテレビを楽しむ機会も増えている事が要因でしょうか。
ラジオ広告は前年比85.7%。在宅勤務中にラジオを聞きながら作業する人が増えたりと、4マスの中ではコロナ以降の下落率が最も低く強さを見せていましたが、本10月においては新聞やテレビほどの回復とはなりませんでした。
インターネット広告が唯一前年比をクリア
インターネット広告も、コロナ後の2020年4月以降はマイナス成長を続けていましたが、本10月においてはカテゴリー中唯一となる前年超え。前年比105.3%と復活を果たしています。2020年1月に前年同月比でマイナス成長となり、限界が叫ばれ始めたインターネット広告ですが、EC企業などコロナ禍を味方につけて業績を伸ばす企業が、これまで抑制してきた広告費を、積極的に使用し始めてているのが要因の一つと思われます。
屋外広告、交通広告は引き続き大きくマイナス
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、屋外広告が前年比63.4%、交通広告が62.4%と引き続き大きく下落しています。各社割引などのキャンペーンを積極的に行っているものの、外出自粛によるリーチ減少への懸念は未だに強いようです。SP・PR・催事企画といったカテゴリーも前年比76.4%と、引き続きイベント自粛などの影響下にあります。
一方で、折込・ダイレクトメールのカテゴリーは、スーパーなどの集客を目的としたチラシの消滅により、5月には前年比36.8%と大きく減少しましたが、本10月は89.8%と回復傾向。巣ごもりの中、自宅に届くメディアとして改めて注目が高まってきています。
前月(2020年9月)と比べると、回復傾向にある
前年との比較ではなく、もっと短期的な比較、前月の売上数値との比較で見ると、広告費全体は98.8%とほぼ同程度の数値。4マス全体では111.6%と回復傾向にあり、新聞111.3%、テレビ112.6%と伸びています。交通広告は99.7%とほぼ横ばいの数値。折込・ダイレクトメールは115.9%と回復しており、インターネット広告も104.7%と伸びています。一方で屋外広告は75.3%と大きく下落しており、直近ではコロナの影響を最も受けていると言えます。
10年前(2010年10月)との比較
10年前の10月、2010年10月の数字と見比べてみます。
広告費全体としては96.2%と若干の下落。コロナの影響を考えれば、思ったほど全体としては落ち込んでいません。4マス合計の数字は80.2%。カテゴリー毎にバラツキがあり、新聞が60.0%、雑誌が38.9%、テレビが89.4%、ラジオが72.9%となっています。
一方でインターネット広告は249.0%と、コロナ禍においても10年前より倍以上に増加しています。その他のカテゴリーでは、屋外広告68.8%、交通広告72.5%と、こちらはコロナの影響をダイレクトに受けています。