経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2020年11月分の広告業売上高が発表になり、引き続き新型コロナウイルスの影響を反映した数値となりました。
11月上旬からのコロナ感染者増に伴い、再び下落率拡大
2020年11月の広告業全体の売上高は3,972億円と、前年同月比で80.9%と引き続き大きく減少。11月頭からのコロナ感染者数の再拡大に伴い、再び下落傾向になりました。屋外広告、交通広告といったコロナの影響を受けやすいカテゴリーがある一方、コロナの影響を受けにくいインターネット広告だけが前年対比をクリアするという図式が、より鮮明になってきています。
4マスの中では雑誌広告が前年比59.8%と最も下落
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,433億円。前年対比では90.6%と、広告費全体の落ち込みに比べて健闘しています。
新聞広告は前年対比89.2%。4~8月は60~70%台で推移していたので、それに比べると下げ幅は縮小しています。新型コロナウイルスの発生前とほぼ同等の前年対比まで回復してきていますので、コロナの影響は少ないと言えます。
雑誌広告は前年比59.8%と引き続き大きく下落。4月以降の前年比40~50%台といった水準からは若干の回復傾向は見られますが、それでも引き続き厳しい状況。誌面のWEB化が進む中、コロナ禍でその傾向が加速しています。
テレビCMは前年比92.5%と、コロナ以前と同等の前年対比まで回復。引き続き外出自粛のため家で過ごす時間が増えていることもあり、コロナの影響を感じられない水準まで回復してきています。
ラジオ広告は前年比91.8%と、引き続き下落してはいるものの、コロナ以降としては最も回復。インターネットラジオの普及により、媒体としての価値が見直しされる傾向にあり、PCやスマホなど他の作業を行いながら聞く方も多いため、ラジオCMからWEB検索へのアクションに繋がりやすい点などが改めて注目されています。
10月に続き、インターネット広告が唯一前年比をクリア
10月にコロナ以降初めて前年対比を上回ったインターネット広告。11月の調査においてもカテゴリー中唯一となる前年超え。前年比107.9%と復活を果たしています。コロナの影響を受ける前の前年11月時点では、前年対比100.0%でしたので、コロナ以前よりむしろ伸びていることになります。
企業が未消化の広告費予算の投入先を検討する際、インターネット広告は最もコロナの影響を受けにくい媒体として選ばれる傾向が強いのも、要因の一つと思われます。
屋外広告は前年対比46.5%と、コロナ以降最大の下落率
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、屋外広告が前年比46.5%と、コロナ以降でも最大の下落率となりました。コロナの感染状況が予測できない中、契約の更新や新規の出稿を控える動きが鮮明になっています。交通広告も65.1%と引き続き大きく下落しており、このあたりの予算がインターネット広告に振り分けられていると推測されます。
SP(サービスプロモーション)・PR・催事企画のカテゴリーも前年比64.4%と、自粛ムード再燃の影響を受け、再び下落率が拡大しています。
前年対比は前月(2020年10月)と比べても悪化
10月と11月の各カテゴリー毎の前年対比を一覧で比較してみました。10月は広告費全体の前年対比が86.9%と、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発動された2020年4月以降としては下げ幅は最も縮小したものの、11月に入り再び下げ幅が拡大しています。ラジオ、交通広告、海外、インターネット以外のカテゴリーは全て11月の方が前年対比が悪化しています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受ける広告業売上高。第3波の拡大と緊急事態宣言の発動が、今後どのように影響していくのか、引き続き注目していきます。