経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2020年12月分の広告業売上高が発表になりました。引き続き新型コロナウイルスの影響を受けつつも、やや回復が感じられる数値となりました。
新型コロナウイルス流行以降では、最も前年比での減少幅が少ない月に
2020年12月の広告業全体の売上高は5,063億円と、前年同月比で91.3%。引き続き前年割れではあるものの、新型コロナウイルス流行以降では、最も減少幅の少ない月となりました。外出自粛の影響を受けやすい交通広告などは引き続き厳しい数字が続くものの、広告費の最も大きいテレビが前年超えになるなど、これまでとは少し違った動きも出始めています。
テレビが102.3%と、コロナ以降初の前年比プラスに
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの広告費は合計約1,618億円。前年対比では99.9%と、前年とほぼ同じ水準に回復しました。
新聞広告は前年対比94.0%。4~8月は60~70%台で推移していたのに比べると、かなり回復してきています。元々紙からWEBメディア化が進んでおり、新型コロナウイルス流行以前も前年比90%前後で推移していましたので、コロナ以前の水準に戻ってきています。
雑誌広告は前年比78.4%と引き続き大きく下落しています。4月以降の前年比40~50%台といった水準からは回復傾向が見て取れますが、引き続き厳しい状況です。書店では不特定多数の人が雑誌を手に取る為、ウイルス感染の警戒感も引き続き影響しているのかもしません。
テレビCMは前年比102.3%と、コロナ流行後初めて前年対比で増加しています。インターネット広告にシェアを奪われる傾向が長期的に続いていましたが、正月三が日のテレビ視聴率が過去10年で最高になるなど、年末も外出せずに自宅でテレビ視聴する場面が増え、改めて価値が見直されています。
ラジオ広告は前年比88.3%と、引き続き下落してはいるものの回復傾向にあります。音声SNSとしてclubhouseが大きな注目を集めるほか、ラジコやSpotify向けの音声広告の人気が高まるなど、改めて注目されつつあります。
インターネット広告は統計開始以降初の単月1000億円を突破
10月にコロナ以降初めて前年対比を上回ったインターネット広告。12月も前年比108.8%と、3カ月続けて前年同月比をクリア。2006年のインターネット広告費の統計開始以降、初めて単月で1000億円の大台を突破しています。
百貨店が密を避けるために、福袋の販売を年末に前倒しし、かつネットでの販売に切り替えるなど、コロナの影響でEC化が更に進む中、インターネット広告に広告費が集まる傾向が継続しています。
交通広告は前年比62.1%と、引き続き厳しい状況
4マス、インターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると、交通広告が62.1%と引き続き厳しい状況が続いています。クリスマスイルミネーションの自粛など、年末イベントの中止も多く、外出減の影響を大きく受けています。
屋外広告は前年比70.7%と、11月の46.5%からは回復していますが、引き続き落ち込みが続いています。ロードサイドを中心とした野立看板は一定の需要が続いているものの、都心部の短期看板などはその影響が大きく、回復の糸口が見えてきていません。
折込・ダイレクトメールは84.1%。ダイレクトメールについては在宅者をターゲットに出来るため、一定の回復は見込まれてきていますが、スーパーなどの集客チラシについてはまだ自粛ムードも高く、折込広告は引き続き厳しい状況が続いています。
前年対比は前月(2020年11月)と比べて回復傾向
11月と12月の各カテゴリー毎の前年対比を一覧で比較してみました。12月は広告費全体の前年対比が91.3%と、2020年4月以降としては下げ幅は最も縮小しています。インターネット以外にも、テレビといった在宅にマッチした媒体に回復傾向が出始めています。
とはいえ、1月には改めて東京都などに緊急事態宣言が発令され、GOTOトラベルも全国的に中止になるなど、状況に変化も出てきています。1月以降の数字にどういった影響を与えるのか、引き続き注視していきます。