「モンスター」は“ライフスタイル”の一部と表現
レッドブルと同じくエナジードリンク業界を牽引する存在であるのがモンスター。
彼らもまた街中でのゲリラ的なサンプリング活動やスポーツアスリートとのコラボなどで一気に知名度を拡大しています。
単なるドリンクではないことを強調
これは公式ホームページにも記載されていますが、モンスターは単なるドリンクではなく、
缶に込められたライフスタイルであると表現しており、商品にも「力強く前へ動き続けろ。」や「クールにすばやく前へ動き続けろ。」などのようにそれぞれコンセプトが込められています。

モンスターはレッドブルと同じくスポーツチームへのスポンサーも同じく行っていますが、アーティストたちへのスポンサーも強く行っており、「アスリート、アーティストたちが試合や本番前に摂取することで爆発的なパフォーマンスを得られる」というイメージ定着をさせることに成功しています。
若者を徹底的に狙う
前述したように、スポーツに加えてアーティストたちへのスポンサーを行うことで若者に対するアプローチを強めており、そのアーティストとコラボしたキャンペーンも定期的に開催し、特にSNS上で大いに盛り上がっています。
また、モンスターはレッドブルと比較して1缶当たりの容量が多く、これも若者から支持を集める理由ともいわれています。
調査によると、実際にモンスターを飲んでいる年代で1番多いのは10~20代の若者です。
スポーツ関連のスポンサーをしているところや街中でランダムにサンプリングを行っている部分を見るとレッドブルと似たような戦略を取っているかのように見えますが、ターゲットを若者に絞り徹底的にアプローチしていることがわかります。
共通しているのは顧客理解とメッセージ性
この2社を通して共通しているのはどちらも顧客理解が非常に深い部分と商品のメッセージ性が強いことです。
戦略自体がとても優れているのはもちろんですが、「この商品を手に取った時に顧客にどういう状態になっていてほしいのか」が非常に明確です。
仕事が大量に残っていて残業をしなければいけないときや、学校に提出する課題を徹夜でこなさなければならないとき、とにかくエネルギーが必要な時はレッドブルを飲むというイメージを定着させているのです。
テレビCMでよく見かけるようになったレッドブルも商品発売当時から大々的なマス広告を用いたプロモーションを行っていたわけではありません。
前述したレッドブルの学生に対するアプローチなど、自社商品のメッセージ性を訴えてなおかつそれに当てはまる人をファンにすることでバイラル的に顧客を伸ばしています。
商品の質を上げればすべて解決するわけではない
では、エナジードリンクの事例から今すぐにでも真似ができる要素はどこにあるのでしょうか。
それは「顧客理解」の部分です。
レッドブルのようにテレビCMや全国でのサンプリングなど大規模なプロモーションを展開できなくとも、改めて自社の顧客の理解を進め、顧客が本当に求めているものは何かを突き詰めることはすぐにでもできることです。
今回の事例も、単なるエネルギー補給であれば必ずしもエナジードリンクを飲む必要性はなく、他の有名なドリンクでもいいはずです。
しかし、レッドブルやモンスターと同じくらい街中でサンプリングを行い、SNSでドリンクのイメージ付けを行い、スポーツやアスリートを通して消費者とコミュニケーションを行ってるメーカーをなかなか想像できないと思います。
わざわざエナジードリンクを選ぶのはどういう場面で飲むべきかを消費者が理解しており、頭の中で第一想起されるように設計できているからです。
彼らはこのような顧客理解が十分になされていたからこそ、「必ず受け入れられる」と確証を持ってまずはスモールコミュニティであるエクストリームスポーツや学生たちの中にファンを作りだしました。
これはたとえ食品を取り扱っていようがツールを取り扱っていようが同じことで、日々サービスを利用していただいている顧客から直接話を聞き、客観的に見た商品の強みは必ず理解しなければなりません。
例えば、プロテインは筋力向上のために飲むというイメージが強いと思いますが、実際のアンケートを見ると年代や性別によって「美容のため」「栄養不足を補うため」と筋力向上以外の理由も見えてきます。
ここ最近では女性向けのおしゃれなパッケージのプロテインも出てきていますが、それらも顧客を理解した結果の施策と言えます。

引用:プレスリリース
今回の事例から「今よりも商品の質を上げれば自動的に顧客も増え売り上げも上がるはず」という考えは少しリスクがあるように感じます。
それよりも商品を誰に使ってほしいのかを改めて言語化し、数が少なくても商品へ熱烈な思いを持つファンを増やすことのほうが重要でしょう。
今や世界を代表する企業となったレッドブルですが、その成長の秘訣をマーケティングの側面から覗くことですべての企業が真似をできる施策や考え方が見つかります。
顧客とのコミュニケーション設計にお困りの方や、顧客獲得に課題を抱えている方のお役に立てることを願っています。
