JetB株式会社は、全国の企業経営者・役員・会社員を対象に、生成AIの導入率に関するアンケート調査を実施した。これは2024年5月にMicrosoftとLinkedInが公開したデータにおいて、職場でのAI利用率は世界全体で75%であるのに対し日本では32%に留まったという結果を受け、日本企業のAIに対する認識や業種別の活用状況を把握する目的で行ったものである。
調査概要
調査方法:インターネット調査
対象者:全国の経営者・役員・会社員100人
調査時期:2024年10月24日
生成AIを導入している企業は22%に留まる
「生成AIを業務に導入していますか?」との質問に対し、半数以上の57%が「いいえ」と答えた。すでに導入している企業は22%に留まり、未導入だが検討中という企業は21%となった。導入が進まない理由としては、生成AIの効果的な活用には専門知識が必要なため、社内にAIに詳しい人材がいない場合に導入のハードルが高くなっている可能性が考えられる。
意外な業種?医療・福祉とソフトウエア業界での導入に課題
続いて、現在生成AIを活用しておらず、導入予定もないと回答した企業に対して、所属業界について質問した結果が下の表になる。これを見ると、「その他メーカー」の10.5%に続き、「医療・福祉」と「ソフトウエア」が同率で8.8%となっている。
特に規制が厳しく人命が関わる医療分野では、新しい技術である生成AIの導入には慎重であることがうかがえる。一方、一見するとAIと相性の良さそうなソフトウエアの分野でも、生成AIの導入に慎重な姿勢が見られた。ソフトウェア業界では既に高度なアルゴリズムや技術が確立されているため、生成AIが生成するコードや設計の品質を保証することが難しいという課題があるためだろう。特にバグやセキュリティの脆弱性は、ソフトウェアの品質に直接影響するため、生成AIの導入には十分な検討が求められる。
3割が生成AIの出す情報の正確性を不安視
「生成AIを導入する上で不安に感じていること」を質問したところ、最も多かったのは「情報の正確性」の29.4%であった。次いで、「コスト」と「セキュリティ」を不安に感じるという回答が同率の11.8%という結果となった。
情報の正確性については、生成AIは学習データに基づいて動作するため、元のデータに誤りや偏りがあった場合、間違った回答が出されることが懸念としてあるだろう。また、生成AIが誤った情報や事実と異なる回答を提供した事例が過去に報告されており、その影響で信頼性に対する不安が高まっている可能性もある。
コスト面の不安としては、初期投資や運用費用に対するコストパフォーマンスが疑問視されている可能性がある。セキュリティに関しては、生成AIの利用に際して入力したデータが外部に保存・共有されるリスクがあり、企業機密や顧客情報の漏洩、プライバシーの侵害などが不安材料として挙げられそうだ。
現在、生成AIの進歩は初期に比べ飛躍的に進歩したと言われているが、業界によっては実際に業務に取り入れることに対する根強い不安があるようだ。
導入の際には、社員がAIの仕組みや利用方法を理解できるよう研修を行い、操作に対する不安を軽減することが生成AIのスムーズな導入につながるだろう。また、同業他社での成功事例を積極的に調査・共有することで、導入へのイメージを具体化し安心感を高めることができるのではないだろうか。
生成AIの利用には、手動で行っていた作業が自動化できることによる労働時間の短縮や、人件費を削減できるなどのメリットがある。また、新しい視点や発想のアイディア出しにも効果を発揮し、マーケティング、製品開発、広告制作などに広く利用されている。今後も新たな業種での生成AI導入によって、業務の質の向上や企業の競争力がより高まっていくことが期待される。