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広告炎上に向き合う、見えない教育者の責任 | 中村ホールデン梨華
足をどかしてくれませんか 編 / 林 香里 著者 / 小島慶子 ほか
「どうやったら炎上しないでしょうか?」 広告主や広告代理店の担当者からそのような質問をされることが昨今増えている。『足をどかしてくれませんか。』は、この問いに対する本質的な答えを提供している。本書は、広告や企業コミュニケーションにおけるDEI(多様性、公平性、包括性)の重要性を説いている。
影響力のある企業が大衆とコミュニケーションを図る際、主に二つの点に配慮すべきだ。それは「リプレゼンテーション(代表性)」と、「見えない教育者」としての責任である。
リプレゼンテーションの向上とは、メディアが実社会を反映すること。メディアは、理想化された非現実的な美を提示し、社会の実態とかけ離れていた。その結果、好ましくないステレオタイプが生まれてしまった。企業コミュニケーションにおいて、現実世界とメディアの表象を近づけることが炎上予防の第一歩である。
見えない教育者としての責任とは、発信者の視聴者の価値観形成への影響力を認識することである。弱者と企業のような強者の価値観の衝突による炎上リスクに対応するには、広告企業は見えない教育者としての自覚と、弱者を守る視点を持つ必要がある。
本書は、ジェンダーの視点からメディアを分析し、女性やマイノリティの声をメディアに反映する重要性をわかりやすく訴えている。これは、AD-LAMPが取り組む市民の声を広制作に取り入れる活動の根底にある考え方と通じる。
〈みんな〉が心地よい表現を考える
男性中心に作られるジャーナリズムの「ふつう」は社会の実像とズレている。
メディアが世界を映す鏡なら、女性の「ふつう」も、マイノリティの「ふつう」も映してほしい。
――女たちが考える〈みんな〉のためのジャーナリズム。
「家事をするのはお母さんだけ」と断言するCM、いじめを笑いの種にするテレビのバラエティ。
たびたび炎上するメディアのトップは、ほぼ男性で占められ、女性たちには決定権がない。
メディアには「理想の女性」が闊歩し、女たちのリアルも声も消されている。
メディアが世界の鏡なら、女やマイノリティの姿も映してほしい。
誰もが住みやすい社会にするために、メディアはどのように変わるべきなのか。
ジャーナリスト、研究者、エッセイストらが女性としての体験から、メディアのあるべき姿を考える。
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