ビジネスマン、とりわけ経営層を狙える交通広告として今なお人気の高いメディアであるタクシー広告。タクシー広告というと、ヘッドレストについたモニター型のデジタルサイネージを想像しがちですが、他にも様々な種類があり、広告特性や出稿のポイントも異なってきます。
今回は、タクシー広告について種類や効果、金額感を広告のプロ目線で解説します。
タクシー広告とは?
交通広告とは電車やバス、駅構内などの公共交通機関に掲出できる広告ですが、その中でも、タクシーの車内や車体を利用した広告メディアのことをタクシー広告と言います。電車広告やバス広告とは異なり、他に人が居ないクローズドな空間で商品・サービスの広告宣伝ができる事が強みとなっています。
リーチできる人数で見たら、利用者数が多い電車広告やバス広告の方が有利ではありますが、タクシー広告は商品・サービスについてより深い商品理解を得られやすいといったメリットもあります。
タクシー広告は、よく見かける「デジタルサイネージ」を使った動画広告を始め、「レシート裏面広告」や「車内リーフレット設置」、「手渡しサンプリング」などプランも様々。また、「大企業の本社が多い周辺エリア」など、ある程度エリアを選定することも可能です。
タクシー広告の効果を最大化するためには、広告の出稿目的を整理し、予算に合わせた効果的なエリアやプランを選定する必要があります。
タクシー業界について
タクシー広告についてご紹介する前に、簡単にタクシーの業界について説明します。
タクシーの台数
出典:一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会‐東京のタクシー2020
一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会によると、2018年時点の全国のタクシー総台数は227,451台、うち東京都内で47,618台(全国の20.9%)となっています。
全国的にタクシー離れが進んでいるといった話も聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
出典:一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会‐東京のタクシー2020
確かに全国で見ると、ピークの平成18年273,740台としても10万台以上減少していますが、東京都内のタクシー台数で見れば、最も台数が多い平成20年に比べても、そこまで大きく減少していないのが現状です。
タクシーの営業エリア
タクシーは基本的に営業エリアが決められており、タクシー需給量のバランスを維持するため「タクシー事業者は乗車地、降車地のどちらかが営業エリア内でなければならない」とルールが法令で決められています。
例えば、東京都内であれば、「西多摩交通圏」「北多摩交通圏」「特別区・武三交通圏」の3エリアに分類されます。北多摩交通圏のタクシーであれば、西多摩交通圏内で乗車した利用者を北多摩交通圏内まで乗せる事はできますが、特別区・武三交通圏内まで乗せる事は出来ません。
タクシー広告を出す際も「東京都内全域で出したい」のであれば、3エリアそれぞれの営業所のタクシーに出稿する必要があるので、是非覚えておいてくださいね。
タクシーの利用料金
タクシーの料金は全国一律となっておらず、都道府県ごとに料金が異なっています。
物価や各地域の最低賃金等の数字を反映しており、例えば東京(23区・三鷹市・武蔵野市)エリアは、距離1.052㎞までで初乗り料金は410円、大阪は距離2㎞までで初乗り料金は680円となっています。
東京では元々、距離2㎞までで初乗り料金730円となっていましたが、2017年の初乗り距離に変更で現在の価格となりました。新料金体系になったことで、1台当たりの利用者との接触数は増えているようです。
タクシーの利用者属性
タクシー利用者数は多くの地域で年々減少していると言われていますが、 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会によると、平成30年度のタクシーによる輸送人員数は1,390,797,000人。日本の人口は約120,000,000人なので、単純計算で1人当たり年間10回ほど使っていることになります。
タクシーの利用者属性で見ると、20歳以上の利用者については月に複数回利用するケースが多くなっています。これはタクシーが電車やバスに比べ、利用料金が高いことが理由だと思われます。
また、60才以上のシニア層には日常生活の足として、買い物やちょっとした移動で利用されています。
出典:タクシーに関するアンケート調査結果(2019年)-一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会
タクシーはビジネスでの利用シーンが多いのも特徴です。決裁権を持つ会社経営者などは通勤でも利用しているケースが多く、利用率が高く出ている傾向にあります。
出典:タクシーに関するアンケート調査結果(2019年)-一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会
タクシー広告の種類と特徴
タクシー広告の種類や特徴について紹介します。従来は車内にステッカーやリーフレットを貼付する形式でしたが、現在は助手席後方に設置されたディスプレイでサイネージ広告を配信するスタイルが主流になっています。乗客は乗車中に目の前のディスプレイで広告を視聴します。動画形式なのでサービスや商品の理解を深めやすく、都心部のタクシーはビジネス利用が多いため、BtoB向けサービス、特にSaaS系のサービスに最適な広告手法として注目されています。
デジタルサイネージ(動画広告)
車内ステッカー広告
リアステッカー広告
ラッピング広告
アドケース(リーフレット)
サンプリング
タクシー広告を実施する3つのメリット
アドクロ内でも問い合わせの多いタクシー広告。実施するメリットは大きく下記3点と考えています。
平均利用時間が「18分」と長く、利用者が広告への理解を深めやすいこと
他の交通広告にはないメリットの一つが「接触時間の長さ」です。
目的地までの距離やエリア特性によってばらつきがありますが、タクシー利用時間は平均18分程度と言われています。この間、利用者は他のメディアには触れず、タクシー内のメディアのみに集中できる格好となります。
また、他の交通広告とは異なり、必ず「座った状態=リラックスした状態」で広告を閲覧することができるため、広告内容への理解度が通常の交通広告に比べて高い傾向にあります。
その他、バス広告や空港・機内広告などの交通広告については以下の記事で詳しくまとめています。料金や利用者属性はタクシー広告とは異なってきますので、広告を出したい商品・サービスに合わせて使い分けてみてくださいね。
Web広告では狙いにくい「経営幹部」や「社長」層が狙えること
タクシー広告はBtoB(対企業向け)サービスを宣伝できる交通広告として活用されています。
タクシーサイネージで放映されていた「テレシー」の広告
タクシーサイネージで放映されていた「Sky」の広告
タクシーは社長、会社役員層の利用も多く、決裁権者をターゲティングすることができる交通広告です。決裁権者からの問い合わせを狙うことができ、スムーズに商品導入に繋がった事例も。
ちなみに、タクシー広告以外にもBtoB向け広告は多数存在します。BtoB広告に関する考え方や媒体例をまとめた記事もございますので、併せてご覧ください。
実施は営業所単位でミニマムスタートが可能
タクシー広告というと、「価格が高い」「ロットが大きい」といった印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、実は数十万単位でスモールスタートを切る事が可能な交通広告です。
例えば、タクシーの「車内のリーフレット設置」は1カ月当たり数千円/台で実施ができます。最小ロットも1営業所単位の実施となるので、小さい営業所であれば数千円×20、30台で実施が可能。
まずはエリアを絞ってミニマムスタート、反響を見ながら拡大していく戦略が組みやすい点も、交通広告の中で人気の高い理由の一つのようです。
タクシー広告事例
日清食品株式会社
タクシーを使った広告宣伝の例として、日清食品株式会社の「日清のどん兵衛」タクシーの事例あります。
株式会社ディー・エヌ・エーが提供する、次世代タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」(現在は株式会社Mobility Technologiesが提供)が実施した、「PROJECT MOV」の一環として行われた「0円タクシー」
出典:次世代タクシー配車アプリ「MOV」 新たな移動体験を実現する取り組み「PROJECT MOV」始動
契約スポンサーと「MOV」の広告宣伝費によって乗客が支払う利用料金を無料にするモデルで展開。スポンサーとなった日清食品株式会社の「日清のどん兵衛」タクシーは、2018年12月5日(水)13:00~12月31日(月)までの期間、都内対象エリアで約50台運行しました。
車内外のラッピングはもちろん、車内サイネージでは動画コンテンツが放映、ご乗車のお客様を対象に「日清のどん兵衛天ぷらそば」をプレゼントするなど、タクシーを広告媒体として上手く活用した例と言えるのではないでしょうか。
「MOV」公式のツイート。0円タクシー利用者がハッシュタグ「#どん兵衛タクシー」を付けて投稿、拡散される事で広く話題となりました。
まとめ
タクシー広告は交通広告の中でも、ターゲティングや問い合わせの質に重きを置いた広告媒体。電車やバスに比べると、利用者数やリーチできる人数は少なくなってきますが、1人1人の広告理解度は格段に高い傾向にあります。
また、密室という空間の中で、サイネージや窓ステッカー、リーフレット、サンプリングと多彩な広告メニューで見込み客を囲い込むことが可能。
タクシー広告を成功させるためには、各商品の特徴を把握し、総合的に検討した上で出稿を決定することが重要です。本記事を参考に、タクシー広告を検討されてみてはいかがでしょうか?