アドクロ編集部が毎月お届けする「ネットで話題となった面白い広告」。東京都内を中心に、SNS上でバズったり、話題になった面白い広告をまとめました。今回は2024年5月に話題となった広告5事例を紹介します。
“プニプニ”唇の衝撃 リアルゴールドの広告
東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナードにコカ・コーラシステムのエナジードリンクブランド「リアルゴールド」の広告です。
TVアニメ「キングダム」とのコラボレーション企画の一環で、WEB謎解きイベント「謎解き!モヤモヤ軍からの解放」に合わせ、謎解きの第1問目として「このおうきなプニプニの唇は誰だ!?」の立体広告が展開。謎解きをすると純金(リアルなゴールド)がもらえるといった内容になっていました。
実際に唇を見てみると光沢感が妙にリアルさを出しつつも、触ってみると"プニプニ"していて、クオリティへのこだわりを感じます。存在感のインパクトから、SNSでも写真付きでの投稿が見られました。また、作品のファンなら察しがつくレベルの問題難易度であったことも、SNSでの投稿を加速させた要因であったように感じます。
一見、リアルゴールドの広告とは気づかないような、商材の直接的な訴求が少ないながら、見た人が「なんだろう?」と気になって検索したり、アクションを起こしたくなるようなデザインになっていました。キングダム好きな人も、そうでない人にも刺さる、大胆なクリエイティブでした。
デュオリンゴの広告「僕のこと無視しないで?」
池袋ヒットビジョン
池袋の屋外ビジョンで展開された語学アプリduolingoの広告です。
横長のビジョンにはキャラクターのフクロウが「僕のこと無視しないで?」のセリフと共に固定で放映され、下に設置された縦長のビジョンは定期的に切り替わる仕様になっています。
アニメや漫画文化が盛んな池袋に寄せたビジュアルやクリエイティブは、通常のキャラクターとは異なる世界観が再現されていました。また、新規ユーザー獲得だけでなく、しばらく使用してないユーザーに向けての内容も含まれていたように思います。
duolingoの公式Xでは、本広告に関する投稿に2万件以上のいいねが付くなど反響がありました。実際に現地で見てみると、放映頻度はそこまで多くはないものの、流れたときの存在感がとても大きかったように見えました。“池袋”というサブカルチャーに人気の場所で、若年層が多く、SNS親和性が高かった点もポイントだったように考えられます。
このリアル感がそそられる、8番出口の広告
人気ゲーム「8番出口」のニンテンドースイッチでの配信開始に伴う広告です。
一瞬、広告とは分からず、妙にリアルなポスターはドキッとする内容になっています。
SNSでは、数千のリポストを記録した投稿があったり、各地で「発見報告」の投稿が散見されていました。
また、東京都内に限らず日本の各駅で掲載され、同作を知るファンを中心に大きな盛り上がりを見せていました。
日本ピラー工業新聞の広告「100年やって、この知名度。」
日本経済新聞朝刊 全15段広告
日本経済新聞の朝刊に掲載された日本ピラー工業株式会社の企業広告です。
大きな紙面に、「100年やって、この知名度。」というコピー。さらに、センター寄せのグラフが妙に存在感のあるデザインとなっています。
また、紙面いっぱいに内容を詰め込むのではなく、余白をうまく使いながら情報を絞ることで、つい目を引かれるような内容になっています。良い意味で広告の派手さがなく、色味を抑えている点も、日本ピラー工業の誠実さが表れているように感じました。
周年など企業広告は、どちらかというと商品やサービスを知ってもらうため「説明」が多くなりがちです。ただ、今回の事例のように思い切って出す情報を絞り込み、読者にとって発見のある内容にしてしまうのも、アイデアとして面白い施策だと感じました。
夏の始まりに…液体ムヒの広告
渋谷駅のハチコーボードと新宿駅の新宿ウォール456プレミアム+で展開された、池田模範堂の虫さされ薬「液体ムヒS」「ムヒアルファEXシリーズ」の広告です。
夏のさわやかな青空や自然の風景にムヒがある構図は、夏といえば「ムヒ」を想像させるようなデザインになっています。「液体ムヒS」ではモデルの平野紫耀さんのさわやかで柔らかい表情が目立ち、「ムヒアルファEXシリーズ」では大人っぽさや、力強さを感じる表情になっており、シリーズによってイメージが全く違うものになっています。「ムヒ」=「夏」の印象を上手く表現していて、夏の到来を感じるような広告になっていました。
平野さんのファンを中心にSNSで話題になり、掲載された週は現地で取った広告写真が多数投稿されていました。
ユートラストはじめたら、人生変わった。
日本経済新聞朝刊 全15段広告
日本経済新聞の朝刊に掲載されたキャリアSNSを運営するYOUTRUSTの新聞広告です。
新聞への掲載とのことで、若年層よりも少し上の世代を狙った、認知向上目的の施策の印象を受けました。「ユートラストはじめたら、人生変わった」と「始まり」や「変化」をキーワードに、ある程度キャリアを積んできた世代にライフプランを考えるきっかけや、ライフスタイルの変化や働き方の多様化を投げかける内容になっていたようです。
また、広告内ではビジネス的なキーワード以外にも「推し活コミュニティ」「激辛部」など、気になるキーワードが散りばめられており、サービスを知らない人も興味を持つような引っ掛かりが多数みられ、様々な方に興味を持ってもらえるような仕掛けに。
同社のサービスを利用している方を中心に、実際の新聞紙面の様子と併せて発信された投稿が多数みられました。
「この惑星は猿のものだ。」猿の惑星の広告
渋谷駅工事現場仮囲い広告
「猿の惑星」シリーズ最新作「猿の惑星/キングダム」が2024年5月に公開となり、渋谷駅がジャックされました。
映画は今から300年後の猿に支配された世界が描かれており、「人類よ、この惑星は猿のものだ。」「この支配に立ち向かえ。希望は、まだある。」といったインパクトの強いキーワードが渋谷駅に掲げられています。
インパクトのあるキーワードがメインになっておりビジュアルが少ないことから、300年後の世界が果たしてどうなっているのか想像してしまうような、興味を引かれる広告展開になっています。都内主要駅の複数個所での展開や、少しパンチの効いたメッセージがユーザーの関心を強く引いていた印象がありました。
OfferBoxの広告「みにみにぴにぴに」
渋谷駅で展開された新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」の広告です。
謎すぎる言葉「みにみにぴにぴに」につい目を奪われてしまいます。
広告をよく見ると、就活生の気持ちが前向きになる「口角が上がる広告」として就活生へのメッセージになっていて、緊張や不安に襲われてるときにふと思い出して口に出したくなります。
複数の電鉄が乗り入れてる渋谷駅は、就活生といった若年層や駅利用者への訴求効果も高そうです。
編集部から一言
2024年5月の広告事例を振り返ると、視覚的なインパクトとストーリー性のある広告が多く見られました。
例えば、「リアルゴールド」の唇広告は、物理的な質感とデジタルイベントを組み合わせた斬新なアプローチで、多くのSNSユーザーの関心を引きました。触覚に訴える広告の1事例として押さえておきたいところです。
また、「デュオリンゴ」の広告は、特定のターゲットエリアに対して効果的にアプローチしていました。池袋というサブカルチャーの中心地での展開は、広告コンテンツと場所のシナジーを最大限に活かしています。
「日本ピラー工業」の新聞広告は、100年の歴史をユニークに伝える試みで、ミニマリズムとデザイン性が融合したものです。派手さを抑え、誠実さを感じさせる手法は、ブランドの信頼性を高める効果的な方法でした。
5月全般を通して、広告は表現方法がますます多様化している印象を受けました。デジタルとリアル(フィジカル)の融合、ターゲットエリアを意識した展開、そしてブランドストーリーをシンプルかつ強烈に伝える手法など、興味深いアプローチが見られました。
来月以降も、どういった広告が見れるのか楽しみですね。