公開日:
更新日:
2年で約430枚!武蔵コーポレーションの看板戦略(前編)
この記事は約7分で読めます。
「アパート売るなら武蔵コーポレーション」と書かれた真っ青な看板を見たことがあるだろうか。
埼玉県さいたま市に本社があり、不動産ビジネスを中心に展開する武蔵コーポレーション株式会社では、2022年の秋頃からおよそ2年間で埼玉エリアを中心に約430枚の看板(※2024年5月時点)を展開し、地元での認知を高めている。その集中的な展開に魅了され、今や看板の同人誌まで発売される人気となっている。
【(参考)JR大宮駅にある看板】
今回、武蔵コーポレーションで看板展開を担当しているマーケティング部の末長氏、佐々氏に同社の看板展開について、戦略や目的、実際の反響について話を聞いた。
2年で約430枚の看板を設置
武蔵コーポレーションは収益不動産の売買や管理などを中心に事業を展開している。同社がビジネスを行う上で「経営者や開業医など、不動産投資を考えている投資家」と「既にアパートやマンションを保持している物件オーナー、地主」の顧客集客を必要としており、マーケティング部として集客に取り組んでいるそうだ。
「看板広告をやる前から、投資家はWEB集客で順調に獲得できていた一方で、物件オーナーや地主については高齢の方も多く、WEBだけでは情報を届けられていない状況を感じていました。どうしても営業マンとの関係性依存になりがちでしたね。そう考えた時、看板などリアルな広告の方がWEBよりも効果的なのではないか、と目を付け始めたのがきっかけです」と佐々氏は話す。
2022年の秋からスタートした武蔵コーポレーションの看板設置だが、最初は駅前のビルボードや駅看板ではなく、ロードサイドの野立て看板から始めていったそうだ。「ターゲットとして意識していた地元の物件オーナーや地主の方に見てもらう意味で、まずは郊外で車移動が必須なエリアを狙いました。」と佐々氏。
【(参考)栃木県下野市にある看板】
国道16号沿いに出した最初の1枚を筆頭に、現在では約430枚の看板広告を展開。そのうち、野立て看板が240枚と半分以上を占めており、140枚が駅、残りがビルボードやビル壁面の看板だという。
※野立て看板:道路沿いにある看板。道案内等で多く活用されている。
※ビルボード・ビル壁面:ビルの壁面や屋上に設置された看板。駅前や歓楽街に多い。
2年で400近くまで設置した意図について「ランチェスター戦略的な考え方で、本社があり事業のメインマーケットである埼玉周辺にターゲットを絞って展開しました。スピード感もって取り組むことで好立地を抑え、先行者優位でエリア認知を一気に上げてしまうことが目的」としていたそうだ。
「加えて、19年目で比較的若い会社ですが、“勢いがあって元気な会社”だと対外的にアピールしていきたかった」といいます。
【(参考)JR川崎駅近くにある看板。駅構内・駅前のビルボードにも展開している】
また一気に伸ばした背景に「効果計測まで考えた時、1枚だけ出したところで影響力は測りにくいと考えていたので、スタート当初から30枚程度は出す計画をしていました。結果的には現在の枚数になりましたが…」と佐々氏は振り返る。
看板以外にも多彩なオフライン施策
武蔵コーポレーションでは、看板に限らず様々な媒体で広告を展開している。例として挙げて頂いた媒体で以下のようなものがある。
・WEB広告
・NACK5などラジオCM
・車体のラッピング(バス・電車)
・テレビCM
・さいたまブロンコスや大宮アルディージャなどスポーツチームへの協賛
・地元のスポーツチーム、少年サッカーや野球など子どもの活動への協賛
現状、広告費はWEB広告とオフライン系の広告でほぼ半々だそう。
「2023年8月に東京から大宮へ本社機能を移転しました。もともと創業の地は大宮ですが、地元での認知がほとんどない状態でしたので、ローカル特化のブランディングに割り切ってオフライン施策を進めています。」と末長氏は話す。
テレビやラジオCMなどマス施策を通して、社名を知ってもらいつつ、電話やWEB広告経由での問い合わせで獲得していくのが同社のマーケティング施策軸となっている。
とにかく足を使って設置場所を選定
話を看板広告に戻そう。2年という短期間で数百枚の看板を設置した武蔵コーポレーションだが、設置する場所のエリア選定基準はどのようにしているのだろうか。
末長氏によれば「現在は、さいたま市内を集中的に実施しています。特に、大宮駅周辺は優先度が高く、枠が空けばいったん問い合わせています。」という。他エリアについては、交通量が多い国道・県道など幹線道路(国道16号・17号など)を中心に検討しているそうだ。
幹線道路は交通量も安定して多いが、道幅が広くて速度も安定して走行している印象がある。看板を視認してもらう意味で不利なようにも感じるが、佐々氏によれば「確かに、1枚単体で出しても景色として関心も持たれないと思います。なので、幹線道路沿いでは目安3㎞ごとに設置しています。50~60㎞/時で走行する想定でドライバー目線を考慮し、ある程度一定時間で再度接触できる設計にしていますね。」と話す。
【看板を設置しているポイント一覧。都市圏と主要道路沿いに並ぶ様子が確認できる】
では、どうやって400枚以上を確保していったのか、佐々氏によれば「最初は、実際に埼玉県内を車で周り、看板の大きさや立地を全て写真に撮って記録して、1軒1軒看板業者に電話していました。」と、足を使って面の場所選びを進めていたそうだ。
【上記のような空き看板を見つけては、看板記載の連絡先に1件ずつ連絡していったという。写真はイメージ】
「WEB上に情報が載っている事もありますが、交通量など定量的な情報はあっても、ドライバー特性や導線といった定性的な情報は現地で見ないと分かりません。現地で見て感想を持ったうえで、価格との総合判断で決定していきました。」と話す。今は、既に取引のある看板業者からオファーや案内を個別に貰うことも多いようだが、設置にあたって現地を見るプロセスは変わっていない。
また、看板を新設する事はほとんどせず、既存の空き枠を狙って出稿することがほとんどだそうだ。
「看板の新設は場所も調整できるので良いですが、やはり掲載までに時間がかかる。その点、既存で立っている看板であれば、シートを貼るだけなのでスピード感が出せる良さがあります。また、少なくとも前の企業が立地的に良いと判断して設置していると考えれば、既存の看板を見つけるアプローチの方が効率がよかったりします。」
他に意識しているポイントを聞いたところ、看板サイズは重要視しているそうだ。
「例えば野立て看板の場合、埼玉県屋外広告物条例で10平米以下のサイズに抑えないといけないと決まっています。その点を考慮しつつも、なるべく視認性の良い(=大きい)看板の選定を意識していますね。」
【エリアで規則は異なるが、埼玉は10㎡以下の規則がある。引用:埼玉県屋外広告物条例のしおり(令和4年4月版)】
看板を選択する上で、「現地で見た感想とドライバー目線で見た印象」と「看板のサイズ(なるべく大きいサイズのもの)」については、意識して確認しているそうだ。
前編では、武蔵コーポレーションが展開する広告施策や、看板広告の場所選びのポイントを聞いてきた。後半では、看板広告において欠かせないデザイン面や実際の反響について話を聞いていく。
この記事は役に立ちましたか?
- 週間
- 月間