AIの進化により、市場調査やデータ分析の速度は飛躍的に向上しました。しかし、どれだけデータが精緻になっても、企業の戦略が「響かない」課題は依然として残ります。その鍵を握るのは、数字の裏に隠された「人の心（本音）」です。今回、マーケター歴30年以上のキャリアを持つ河西氏に、激変の時代でもブレないマーケティングの「核」と、戦略の確度を最大化する「ヒアリング術」について伺いました。
河西氏は、株式会社AOKIホールディングスやORIHICAにてプロモーション・VMDの責任者を歴任し、30年以上にわたり大手と中小企業の戦略構築を担ってきたYKコンサルティング代表です。本コラムでは、マーケティングに関する仕事をしている人、マーケティングを活用したい事業者が集まる「静岡マーケティングサロン」の運営アシスタント・秘書をしている柳井が、河西通友氏にインタビューを実施。特別な予算や複雑なシステムに頼らず、マーケティング活動にすぐに活かせる即戦力の再現性のある「戦略を響かせるヒアリング術」について、具体的な実例とその思考法を深掘りしていきます。
マーケティング・広告に携わる読者の皆様に、ヒアリングを「単なる情報収集」から「確実に成果を生む戦略構築のパートナー」へと進化させるヒントをお届けします。
普遍の知恵：30年で「変わらないマーケティングの核」
柳井：河西さんは30年以上のキャリアの中で、広報やVMD、プロモーションなど多岐にわたるご経験をされてきました。AIを始め、テクノロジーは激変しましたが、マーケティングの本質として「変わらなかった核心」は何でしょうか？
河西：AIは事実関係から情報を組み合わせることは得意ですが、AIではわからない部分は「人の心」なんです。人がどういうところに心を動かされ、購買に繋げるのかという購買心理自体は変わらないので、顧客が商品を手にしたときに、「どんな未来やベネフィットがあるのか」「買うことによるリスクがないか」といった心理的要素は、結局のところいつの時代でも重要であり続けます。
柳井：現代のマーケティングはデータドリブン（データに基づき意思決定を行う経営手法）と言われますが、河西さんが考える「データだけでは絶対にわからない、現場や経営の本音」とは、具体的にどんな部分でしょうか？
河西：どんなデータでも、その裏側には必ず、その数字になった「現場の理由」があります。だから売上という数字だけ見ていると、見落としてしまうこともあるかもしれません。例えば、数字上客数が伸びなくて「集客が課題」だと思っていたら、実際の課題が実は集客ではなく、現場の接客力や商品力にあった、ということもあり得ます。だからこそ、現場に何回も足を運び、スタッフと話し、データを「生きた情報」にするための行動を取っています。
柳井：お客様として行ってみたり、買い物もされたりするんですか？
河西：もちろんそうですね。お店で1時間ぐらいウロウロして、お客様の行動やスタッフの接客を見たりもします。
戦略の確度を最大化する「ヒアリング技術」
1.AI時代に必須の「3つのスキル」
柳井：今後10年でマーケターが失ってはいけない、最も重要なスキルは何でしょうか？
河西：情報や人の言葉を「解釈する力」です。そして、それを土台とした「3つのスキル」が重要になります。
- 解釈力:なぜこの数字なのか、なぜこの人はこういうことを言っているのかを深く理解する力。
- 質問力:問い方が間違っていると、AIを使っても間違った情報しか出てこないため、「何を問うか」という質問の立て方が重要。
- 見抜く力:そのサイクルの中で、「本当の課題」が何なのかを見抜く力。
2.本音を引き出す「独自の事前準備」
柳井：ヒアリングは準備が8割決まる中で、相手の「本音」を引き出すための独自の事前準備を教えてください。
河西：大前提として、相手企業のホームページやSNS、プレスリリースを読むのは当然です。さらに大事なのは、会社や経営者の「世界観」を理解しようとすることです。
柳井：経営者の方だとFacebookなどで人となりを見たり、過去のYouTubeまで調べたりするイメージでしょうか？
河西：その人の心、気持ち、考え方から出る世界観を理解しておく。そうすることで、その人の世界観を深掘りするための質問をベースに、ヒアリング構成を組み立てることができます。
3.潜在ニーズを引き出す「リミット外し」の質問術
柳井：顧客が自覚していない潜在ニーズや、本当はやりたいけど諦めていることを引き出すコツを教えてください。
河西：相手の「リミット（制限）」をちょっと外してあげるような質問の仕方が有効です。
- 「もしこうだったら」:「もし本当にもっとやりたいことがあったとしたらどんなことですか？」や、「本当はやりたいけど、今ちょっと手つけられていないことってありますか？」と尋ねる。
- 表情の変化を捉える:相手の表情が変わる（目が輝くなど）タイミングは、本音が出てくるサインなので、見逃さないことが大事です。
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相手の脳みそに書いてあるものを自分の脳みその中に書くイメージ
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柳井紗緒里 CitrineWebDesign
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