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国語ではなく口語!バズるショート動画制作の考え方(後編)
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前編では、動画の窓口株式会社代表の池上氏に、企業がショート動画にトライしていく上で必要な、各プラットフォームごとの特性や運用していく上で必要な考え方やマインドについて話を聞いた。
後編では、実際にショート動画を企画、撮影する上でマネできるテクニックやマインドを深堀していく。
企画・撮影編
企画・撮影について、細かいテクニックは様々あるそうだが、今回は池上氏が考える「明日からでもマネできるテクニックや考え方3選」を教えてもらった。
1、冒頭2~4秒が「面白い」と思えるコンテンツ作り
「縦型ショート動画は、とにかく動画冒頭が重要」だと池上氏は力説する。
「前編でもお伝えした通り、動画の“視聴維持率”はとても重要です。冒頭4秒程度の視聴維持率が変化しない、つまり見入ってもらえている状態を作り出すことが制作における重要な考え方になります。」
上記を考慮した上で、投稿前に冒頭4秒については制作者以外の2名以上に動画をチェックしてもらう事がお勧めという。
池上氏によれば「最も時間を使っても良い箇所」と言えるくらいショート動画においては重要で、視聴ターゲットとしているユーザー層と年齢が近い方に第三者視点で見てもらった上で「その後続きが見たいか」や感想、フィードバックを貰いながら手直ししてから掲載した方が良いそうだ。
2、口語を使う
「ショート動画は国語ではなく口語を使う」と池上氏。実際に企業がアカウントを運営する上で陥りがちな点として、とにかく丁寧に説明してしまう点があるそうだ。
例えば、国語では「こちらの方は、犬の真似が得意です。」でも口語では「この方、犬の真似が得意。」で済む。興味がないと判断されれば一瞬の判断で飛ばせてしまうショート動画の特性上、内容さえ伝われば丁寧に伝えることは意識しなくても良いという。
「企業でアカウントを運営する場合、文節・接続詞、言い回し、“てにをは”とか“ら抜き言葉”など、しっかりとした文章(台本)にしなきゃいけない、丁寧に説明しないといけないと思いがちです。ただ、やればやるだけ動画は長くなって言い回しが遠回しになりますし、この数秒の積み重ねがショート動画では命取りになります。
例えば、“そして”という言葉は記事や文章だと必要でも、動画であればちょっとした動作や前後の展開で意味合いを汲んでもらう事ができます。国語ではなく口語と割り切り、思い切って言葉を削除していくことが重要です。」
3、決裁者は普段からショート動画を見ている方に
各企業の決裁フローにもよるが、基本はショート動画だから特別扱いするという事はなく、“動画”というコンテンツにコストを掛けている以上、なるべくPR要素を強く出したいと考えるはずだ。
また、コンテンツ制作側と決裁者で年齢差が大きい場合、“面白い”と考える感性が大きくずれている可能性がある。その状態で決裁側が口を出せば、最終的に誰に対しても差し障りのない内容になってしまい、ユーザーが視聴したいと思うコンテンツにならない可能性が高まるそうだ。
池上氏によれば「特に注意すべきは、指摘が全て“正論”になってしまうことです。作り手が何も考えられず、何も言えずに修正せざるを得ない状態が一番良くない」とした上で、
「例えば、思い切って30代以上は口出しをしないといったルールで運用するのもよいかもしれません。これは、30代以上が悪いというわけでなく、あくまでプラットフォーム利用者層の特性に合わせて、コンテンツの意思決定を任せてしまうという1つの方法です。」
動画編集編
続いて、撮影した動画をどのように編集していくと良いのかについて教えてもらった。こちらも、細かいテクニックはあるそうだが、「明日からでもマネできるテクニック・考え方」を中心に3つのポイントを伺った。
1、プロモーションを入れたい場合はさりげなく
「“言いたい・売りたい・見せたい”というプロモーション意識を極力捨てて欲しい」と池上氏は話す。
各プラットフォームでのショート動画は“受動視聴”が中心のため、ユーザーは見たくない動画を即飛ばして次に進むことができる。
企業アカウントの動画だろうが、一般ユーザーの動画であろうが面白くなければ飛ばすことができる点はショート動画ならではの特性だが、裏を返せば、商品やサービスの宣伝と分かっていても面白ければ見るという事にもなる。
「ユーザーは意志をもって、その動画を見ているわけではなく、表示されているから見ているだけ。」である前提を持ちつつ、「動画の構成で少し物語性を出して見たり、日常のワンシーンを切り取ったドラマ調の動画にテロップで商品の解説を入れてみたり、さりげなくプロモーションを入れていくことがポイント。」ということだ。
【飲食店による動画事例。動画内では美味しそうに仕上げていく焼き鳥の動画が印象的だ(TikTok:katayamatoriniku.asaki)】
2、編集をやりすぎない
「ショート動画においては、編集で動画を作り込み過ぎないことも大切です。」と池上氏。
検索で動画を探しているユーザーであれば、“何かを知りたい”欲求が軸にあるので、その“何か”を知るうえで最も分かりやすい動画を選ぶ。なので、分かりやすい(=編集がしっかりされている)動画が適する。一方で、ショート動画は受動視聴かつ娯楽要素が強いため、「ガッツリと字幕やエフェクトが入った動画よりも自然体な雰囲気の動画の方が相性が良い」そうだ。
教えてもらう・知るという感覚だと、先生と生徒の関係性に近いが、ショート動画においては等身大の感覚、生徒同士のニュアンスが近いかもしれない。
3、不要な間、言葉の間を削除する
「撮影時に入った“えっと”や“あー”といった言葉、発言と発言の間に入った0.5秒の間も動画で見ると長く感じてしまいます。編集をするのであれば、とにかく不用な間や言葉は削除した方が良いです。」と池上氏。
編集用語で“ジェットカット”手法というが、ショート動画の編集においては1曲の音楽のように、流れるような感じで動画を視聴してもらえるようなイメージを持つとよいそうだ。
【画像や、映像を表示させることによりジェットカットを隠す編集手法もあるそうだ(ジェットカット0:48〜)。参照:動画の窓口「テンポのよい動画で視聴維持率をあげよう!ジェットカットとは?やり方や活用法をご紹介します」】
ユーザーは“見たい”意思を持っているわけではない
「繰り返しになりますが、ショート動画は“スキップ可能な受動視聴”。ショート動画においては、ユーザーはその動画を見たいと思って見ていません。たまたま目の前に出てきたから、面白かったら見るというスタンスです。検索をして目的のコンテンツを探している訳でない点は考慮しないといけません。」と池上氏は力説する。
強制的に見させられるのではなく“スキップ可能”だからこそ、常にユーザーが面白いと思うかの一点がとにかく重要だそうだ。この“面白い”という反応は人によって様々で「例えばコストを掛けて、有名人を起用したコンテンツが必ずしも面白いと判断されるとは限らない」のも難しさの1つだという。
実際、直近では“猫ミーム”が人気コンテンツとして話題になったが、決して作り込まれたコンテンツでもなければ、何か有名人を起用したコンテンツでもない。面白いか・面白くないか、単純なようで奥が深いように思える。
また、「これはあくまで一意見ですが」とショート動画活用が向いている企業について、
「ベンチャー企業や小規模事業者は活用すべき手法だと思っています。企業規模が大きくなるにつれ、現場担当者に加えていくつかの階層にチェックのフローが分かれている事が多いと思いますが、あらゆる方面からのコンプライアンスチェックなどで守備的機能が働いてしまい、コンテンツに面白みが無くなってしまいがちです。
その点、比較的担当者の意思で進めやすいベンチャー企業や小規模事業者の方が、ショート動画については使いやすいマーケティング手法だと考えています。」
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