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タクシーメディアの最新活用例
タクシー車内のデジタルサイネージといえば、OOHの中でも近年大きな成長を見せたメディアのひとつです。特に企業の経営層や管理職などの決裁権を持つビジネスマンに強くリーチするメディアという特長もあり、主に法人向け(B2B)ビジネスを手掛ける広告主に多く活用されてきました。特にB2B系スタートアップが大きな資金調達を果たしたタイミングでタクシーCMを放映するという流れは、ある意味ベンチャー企業の王道パターンとして定着してきました。
一方で最近では、タクシーならではの媒体特性を活かし、前述以外の広告主やシーンでタクシーメディアが活用されるケースも増えてきています。
今回はそんなタクシーメディアの最新の活用事例と実際の効果について2つご紹介します。
「ポケトーク」をかざすことで画面内の外国語が翻訳される。
ひとつ目は、AI通訳機「ポケトーク」のプロモーションで実施されたタクシーメディアの活用例です。
2023年4月3日(月)〜4月30日(日)の4週間、都内を走行する100台のタクシーで、車内のタクシーサイネージメディア「GROWTH」および車窓サイネージ「Canvas」に加え、「ポケトーク」の実物端末がタクシー車内に設置されました。
「ポケトークタクシー」と名付けられた本施策は、訪日外国人旅行客や、海外旅行を予定している日本人をターゲットに、異なる言語間のコミュニケーションで役立つ「ポケトーク」を訴求する目的で企画されました。さらに、コロナ禍を経て観光ビジネスが回復してきている中で、訪日外国人旅行客への対応が求められるタクシー業界への解決策の一つとして実施されました。
タクシーメディアを運営する株式会社ニューステクノロジーによると、訪日外国人旅行客のタクシー利用が増加している中で、ドライバーの確保に加えて訪日外国人旅行客への多言語対応が課題となっているタクシー業界において、ドライバーおよび乗客の双方にとって円滑なコミュニケーションを実現するべく、今回の企画の実施に至ったそうです。
「ポケトークタクシー」はタクシーアプリ「S.RIDE」で呼び出すこともできます。アプリ上のアイコンには、「ポケトーク」のアンバサダーである明石家さんまさんが登場し、アプリ上でタクシーがどこを走っているのかリアルタイムで確認することもできます。また車窓にはポケトークのイメージ画像を投影しているため、車外からも「ポケトークタクシー」を識別できるようになっています。
「S.RIDE」アプリ内で「ポケトークタクシー」が確認できる。
外側から見た「ポケトークタクシー」のイメージ。
タクシー車内のサイネージでは「ポケトーク」の製品情報に加えて、実機を体験できるトライアルコンテンツが表示され、外国語で書かれた文章にポケトークをかざすと日本語に翻訳されるなどインタラクティブな仕掛けが施されています。
また、画面に表示されたQRコードを経由して「ポケトーク」をオンライン上で購入できることも本施策の大きな特徴です。
画面右側をタップすることで、タクシー車内で「ポケトーク」の購入も可能。
7割がポケトークを実際に体験!その場で購入した人も!
「ポケトークタクシー」の乗務員に対してアンケートを実施したところ、約7割の乗務員の方が「実際に乗客がポケトークを使用していた」と回答しました。また乗客の半数が乗務員に「ポケトーク」に関して質問をするなど、商品に対する興味・関心を高めることにも繋げることができました。また乗客の9割以上が体験に対してポジティブな反応であったそうです。
さらに「ポケトーク」を使用した乗客の10%が外国人で、実際に乗務員との会話にも活用されていたことが確認されました。97%の乗務員が外国人の乗客が増えていると回答していることもあり、今後のインバウンド向けプロモーションにおいても効果的な施策になりそうです。
実施期間の中で、乗車したその場で「ポケトーク」が数件購入され、タクシー車内で購入動線を設計することが実際の購買にも直結することが本施策によって確認されました。/div>
本施策はタクシー車内という個室空間を活用し、乗客の移動中の空き時間に製品やサービスの体験を促進する試験的なアプローチでありましたが、以上のことから商品体験の場としてタクシーは非常に効果的であることがわかった事例といえます。また実際に車内で製品を購入される例も確認されていることから、動画訴求と商品体験を掛け合わせることで比較的高単価な商材でも購買率向上に繋がることもわかりました。
訪日外国人旅行客のタクシー利用は確実に増加していることからインバウンド施策の一環としてタクシー広告活用の可能性は十分にあると考えられます。
「タクシーでポイ活キャンペーン」
2つめは、同じく株式会社ニューステクノロジーが展開するタクシーサイネージメディア「GROWTH」を活用したOOH事例です。本施策では、タクシーの乗客に“ポイ活”が楽しめる新しい乗車体験を提供しました。
2023年5月8日(月)から5月21日(日)の2週間、同社は抽選でPayPayポイントが当たる「タクシーでポイ活キャンペーン」を実施しました。都市部を走行する「GROWTH」搭載の12,500台のタクシーを活用。抽選には、「GROWTH」タブレットの下部にあるメニューバーをタッチし、画面に表示されたQRコードからアンケートフォームにアクセスすることで参加可能となっています。アンケートに回答した方の中から抽選で1500名に、初乗り料金500円相当のPayPayポイントをプレゼントするというものです。
タクシー業界では、昨年11月に初乗り料金が420円から500円へ15年ぶりに値上げとなり、5月からは需要と供給で運賃が変動する「ダイナミック・プライシング」が導入されています。また、円安や原材料費の高騰により続いている「値上げ」ラッシュを背景に、お得にポイントを増やす活動である “ポイ活“にも現在注目が集まっています。以上のような背景から、タクシーメディアの媒体社であるニューステクノロジー自身の企画として本施策は実施されました。
メニューバータップ後に表示される、アンケートフォームへアクセスできるQRコード。
本キャンペーンは、タブレット機能「メニューバー」のタップ数が過去最高記録になるなど、タクシーに乗ったオーディエンスの興味関心を引くことに成功しました。また、抽選対象となる1500名に対して、延べ2518名がキャンペーンに参加しました。これらの結果から、乗客にとって興味関心の高いコンテンツを提供することによって、多くの方のアクションを誘引できることが示唆されました。
また、アンケートの結果、タクシーでポイ活をしたいと回答した乗客が76.8%に上り、ポイ活やポイント付与が高所得者層の多いタクシー利用者に対しても効果的であることが明らかになりました。
以上、タクシーメディアを活用した2つの成功事例を紹介してきました。
ひとつ目の例では、ビジネス層だけではなく、訪日観光客などのこれからのマーケットに対応するメディアとしても有効であることが言えます。さらに個室空間かつ比較的長い接触時間といったタクシー車内の媒体特性を活かすことで、製品の体験から実際の購買まで繋げられる深いコミュニケーションが可能なOOHメディアとも言えます。
2つ目の例では、タクシーでポイ活という新しい乗車体験を提供できることが確認されました。このように、タクシーに乗ったからこそ味わえる体験をつくっていくことで、「ポイ活もできるならタクシーに乗ろうかな?」と思ってもらい交通手段としてタクシーが積極的に選ばれるような、タクシーの利用者そのものを増やすことにも繋がるのではないかと思います。
タクシーは、B2B向けのメディアという認識が広まりその人気も一巡したかに見えた時期もありましたが、今回ご紹介したようにまだまだ大きな可能性を秘めたOOHメディアのひとつと言えます。
また「効果がわかりづらい」という課題がOOH業界全体である中で、具体的な効果に繋がっている事例を紹介しました。今後も、こうした成功事例を積極的にご紹介していければ幸いです。
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