株式会社PRIZMAは、2025年2月28日から3月3日にかけて、SNS広告を自社運用しているマーケティング担当者505人を対象に「SNS広告の運用とROI評価に関する調査」をインターネットで実施した。この調査では、ROIを評価する指標、予算配分の基準、ROI向上に重要と感じる要素、重視するデータ、ターゲティング手法、活用している分析ツールなどについて回答を得た。
調査概要
調査方法：インターネット調査
対象者：SNS広告を自社運用している担当者
有効回答数：505名
調査期間：2025年2月28日～3月3日
出典元：株式会社PRIZMA
ROI評価指標で最重視されるのはCPA
「現在、SNS広告のROI（投資収益率）をどこで評価していますか？」という問いに対し、最も多かった回答は「CPA（顧客獲得単価）」で46.9%となっている。CPA（Cost Per Acquisition）とは、1人の新規顧客を獲得するために要した広告費用のことで、数値が低いほど効率的な広告運用ができていることを意味する。
次いで「LTV（顧客生涯価値）」が34.3%、「ROAS（広告費用対効果）」が18.6%と続いている。LTV（Life Time Value）は、一人の顧客が生涯を通じてもたらす利益の総額を指し、ROAS（Return On Ad Spend）は広告費に対する売上の比率を表す指標だ。
この結果から、SNS広告運用者の約半数が短期的な顧客獲得コストを重視しており、次いで顧客の長期的な価値を評価の指標としていることが見て取れる。広告費用に対する直接的な売上効果よりも、新規顧客獲得とその後の価値に注目している傾向が強いと言えるだろう。
予算配分の判断基準は「目的」と「リーチ」
「SNS広告の運用において、予算配分を決定する際に最も重視するポイントは何ですか？（上位3つまで）」という問いに対しては、「広告の目的（認知度向上、リード獲得、販売促進など）」が53.5%で最も多く、「ターゲット市場の規模とリーチ」が47.9%、「過去の広告パフォーマンスデータ」が32.9%と続いている。
この結果から、SNS広告運用者は具体的なマーケティングの目的とターゲット市場の特性を最も重視して予算配分を決定していることがわかる。また、過去のパフォーマンスデータも重要な判断材料となっており、データに基づいた意思決定が進んでいることが分かる。
ROI向上の最重要要素はクリエイティブ最適化
「SNS広告のROI（投資収益率）を向上させるために、最も重要だと感じている要素は何ですか？」という質問に対して、「広告クリエイティブの最適化」が39.2%で最も高く、次いで「ターゲティング精度の向上」が35.3%、「広告予算の最適化」が21.4%となっている。
これらの結果から、SNS広告の効果向上においては、魅力的な広告コンテンツの作成と適切なユーザーへの配信が特に重要視されていることがわかる。広告内容そのものの質と、適切なユーザーへの配信が成功の鍵となっているようだ。
運用者が追うデータはCPA・ROAS・CPC
「SNS広告の費用対効果を高めるために、どのようなデータを重視して運用していますか？（上位3つまで）」という質問に対して、「CPA（顧客獲得単価）」が48.3%で最も高く、次いで「ROAS（広告費用対効果）」が38.8%、「CPC（クリック単価）」が33.1%となっている。CPC（Cost Per Click）は、1回のクリックにかかる広告費用を指す。
ここでも短期的な効果指標であるCPAが最重視されており、運用現場では顧客獲得コストが最も重要な判断基準となっていることがわかる。一方で、エンゲージメント率（いいね、シェア、コメントなどのユーザー反応）やユーザーの行動データ（サイト訪問履歴、購買履歴など）を重視する割合は相対的に低く、直接的な費用対効果に集中している傾向が読み取れる。
業界別に異なるターゲティング戦略の優先順位
「SNS広告の効果を最大化するために、ターゲティングをどのように工夫していますか？」という質問に関する業界別の回答を見ると、業種によってターゲティング手法の優先順位が異なることが明らかになっている。
EC・小売業界（アパレル・食品・家電・日用品・コスメなど）では「詳細なデモグラフィックターゲティング（年齢・性別・居住地などの基本属性に基づいて広告の配信先を絞り込む手法）」が42.3%と最も高く、エンタメ・メディア業界（ゲーム・音楽・映画・アプリ）では「カスタムオーディエンス（自社サイトの訪問者や過去の顧客リストなどを活用して、既に接点のあるユーザーに向けて広告を配信する手法）の活用（リストターゲティング）」が45.7%で最も重視されている。
業種によって最適なターゲティング手法が異なるという結果は、各業界の商品・サービス特性やユーザー行動の違いを反映していると考えられる。特に、繰り返し購入が見込める業種ではカスタムオーディエンスの活用が効果的であり、新規顧客獲得が重要な業種ではデモグラフィックターゲティングが重視されている傾向が読み取れる。
分析ツール利用状況、Looker Studio（旧Google Data Studio）がトップ
「SNS広告の効果を最大化するために使用する分析ツールはどれですか？」という質問に対しては、「Google Data Studio（現 Looker Studio）」が40.6%で最も多く、次いで「Google Analytics」が38.8%、「AD EBiS」が15.3%という結果となった。
Google Data Studioは、データを視覚的に表現するレポート作成ツールで、Google Analyticsは、ウェブサイトのアクセス解析ツールだ。AD EBiSは、国産の広告効果測定ツールで、広告の費用対効果を可視化するのに役立つ。
これを見るとGoogle製の分析ツールが圧倒的に高いシェアを占めており、特にデータの視覚化やレポート機能に優れたData Studioの人気が最も高いことが分かる。
今後は、各業界の特性に合わせた最適なターゲティング戦略と、よりパーソナライズされた広告コンテンツの開発がSNS広告の効果を左右する重要な要素となるだろう。データ分析能力の向上と魅力的なコンテンツ制作の両立がSNS広告運用成功の鍵を握ることになりそうだ。
古田ちほ アドクロ編集部
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