アドクロ編集部が毎月お届けする「ネットで話題となった面白い広告」。東京都内を中心に、SNS上でバズったり、話題になった面白い広告をまとめました。今回は2024年6月に話題となった広告事例を紹介します。
ぼっち・ざ・ろっく「#負けるなぼっちちゃん」ポスター広告
山手線駅貼りポスター
「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:」の公開を記念して都内の駅に掲示されたポスター広告です。
山手線一周ジャックと題し、41種類のポスターが山手線各駅のホームに掲示されています。各駅の印象や特徴に合わせたデザインとなっており話題を集めました。SNSでは広告巡礼をしている方も。
1週間の短期間ですが、ポスター掲示と合わせて主要駅では特別映像や大型キービジュアルを掲載し、複数の広告形態を合わせた宣伝となっています。
遠方で巡礼できない方へ向けても、公式Xで掲載したすべてのデザインと駅名を合わせて公開しています。掲載期間が終了してからも、SNSで公開することで話題性や拡散を継続していました。
漫画やアニメのファンはSNSの利用率が高いことに加え、「推し」の拡散に熱心な方が多いので、SNSを連動させた宣伝はもはや必須となっている印象です。
ディズニー「ファンタジースプリングス」の広告
日本経済新聞朝刊
東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」がオープンした際の新聞広告です。
東京ディズニーランドがオープンした1983年の様子、めくっていくと東京ディズニーシーがオープンした2001年の様子と、見開きでファンタジースプリングスの全景が4ページにわたって掲載されています。オープン時の時代背景や経営陣の想い、規模を拡大していく過程、新たに誕生するエリアへの気持ちが綴られている内容です。当時を知る人にとっては懐かしく感じられ、知らなかった人も当時の背景を知れる、長年の功績を残し続けている企業ならではの広告となっています。
日本経済新聞朝刊
SNSでは、「保存版」「初めて新聞買った」などのコメントが寄せられています。
元々ファンが多くいるため拡散力は申し分ないですが、オープン時学生だった方や、当時お子さんが小さかった方、最近は行けていないという方でもノスタルジックな気持ちにさせる心温まるクリエイティブでした。
KINCHO「シンカトリ」の新聞広告
日本経済新聞朝刊
日本経済新聞の朝刊に掲載されたKINCHOの広告です。
一面のうち2/3を使って蚊の絵と番号がちりばめられており、線で繋いでいくと文章になるデザインとなっていました。よく新聞にクロスワードパズルやナンプレが載っていますが、それに近い体験型の広告になっています。
最近の広告の流れとして、広告に対する嫌悪感を取り除こうと各社フレンドリーな工夫をこらしていますが、かえってネガティブに捉えられてしまう事もしばしば。KINCHOは現在まで、良い意味で正直で直球な広告を展開しているように感じました。
定期的に広告を行う企業は、購買者が広告する商品や内容に慣れて流されてしまいがちです。ただ、今回の事例のような体験型広告では、誰かに共有したくなる小ネタでSNSでの拡散に繋がったり、体験している間は広告をずっと見てもらえる利点もあります。
体験をメインとし、商品をおまけ程度にしてしまうのも、アイデアとして面白い施策だと感じました。
呪術廻戦展に向けた巨大ラフ画広告
「芥見下々(あくたみげげ)『呪術廻戦』展」の巨大ラフ画広告が渋谷駅に掲示されました。
一見何の広告・何の絵なのか全く分からないほどのラフ画となっており、話題を集めています。中央部分には巨大な看板とは裏腹に、小さな作者の直筆メッセージが掲示されています。
中国のSNS・Weiboでは、「まるでピカソ展」「前例がない」「新しいアート」などと抽象的なアートとして捉えるコメントが寄せられている一方、「何を宣伝しているの?」「アンパンマンかと思った」などと、同作品の広告だと認識できないとする意見も見られました。
しかしこの掲示から2日後、ラフ画から加筆されたものへデザイン変更が施されていました。
かなり攻めた戦略となっており賛否が分かれるところではありますが、原作のファンはSNSで、「この部分のラフ画は○○ではないか」などと予想をしたり、変化の過程を楽しんだりしていました。
宣伝内容が「原画展」と、ファンや原作を見ている人がターゲットなこともあり、思い切ったアイデアが採用されたのかもしれません。
UberEats、50%OFF広告
日本経済新聞朝刊
新聞や街中に掲載されたUberEatsの広告です。一見、「印刷ミス?」「画面がバグを起こしている?」と錯覚するような広告ですが、よく見ると宣伝内容は「今だけPizzaが最大50%OFF」となっており、サービス名もしっかりみえています。
こちらはサービス内容の50%OFFと掛けて、広告も50%OFFにしているUberEatsの宣伝手法です。
せっかくの一面広告枠であれば一面を使って宣伝をしたいところ、かなり攻めた内容となっています。新聞や街中広告だけでなく、公式SNSの宣伝動画やYouTube広告でも同じ手法を使っています。
SNSでは「バグかと思った」「ずいぶん大胆な広告」などの声がありました。
先ほど紹介したKINCHOの広告同様、定期的に広告を行う企業は、いかに流されず見てもらえるかというインパクト重視になります。そういった点では、普段から作り込まれた広告を享受している購買者からするとバグかと思わせ意識を向けてもらえることが、成功と言えるのかもしれません。
媒体によって注釈もしっかり記載されており、アイデアとして面白い施策だと感じました。
ガンダムウィークの休暇申請書広告
Prime Videoにて『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の見放題配信がスタートしたことに合わせ、広告が渋谷駅に掲示されました。
GW(ゴールデンウィーク)の約1か月後の宣伝となりますが、GWをガンダムウィークと掛けたビジュアルとなっています。
また改めてシリーズ全作品の一気見を宣伝するため、休暇申請書を作成し休暇の取得をキャラクターが後押しするプロモーションもスタートさせました。
渋谷のハッピーロードでは申請書原本の配布もされたようです。遠方の方向けに申請書は公式SNSでも原本が公開されています。
SNSでは、「申請書頂きます」「ダメもとで職場で使ってみます」などの声が見られました。
ガンダム世代の働く層にフォーカスしたアイデア・デザインとなっています。「あの戦士たちも、休むらしい。」というキャッチコピーは現代の社会の流れにも合わせた内容です。
おーいお茶「お~いオオタニサン!」広告
株式会社伊藤園の「お~いお茶」の看板広告が渋谷駅に掲示されました。
伊藤園が展開する飲料ブランド「お~いお茶」と、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手とのグローバル契約の締結を記念し、渋谷駅前に看板広告を展開しました。
一面のお茶畑を背景に、「お~いオオタニサン!」のキャッチコピーと、大谷選手が商品を持っているシンプルなビジュアルです。SNSでは、「飲むお茶が決まってしまった」「世界中に広まってほしい」など好意的な声が見られました。
大谷選手を起用した広告は国内のみならず、世界60紙以上の新聞や、屋外広告が展開され、ギネス世界記録認定もされているブランドならではの展開力です。
オリジナルボトルやオリジナル自販機など、ファンにはたまらない「大谷だらけ」の施策となっています。
「夏が香る、アイスティー」午後の紅茶の広告
キリンホールディングス株式会社の「午後の紅茶」の看板広告が渋谷駅に掲示されました。
キリンが展開する飲料ブランド「午後の紅茶」のストレートティー、ミルクティー、レモンティーの味とパッケージが6年ぶりにフルリニューアルし、発売開始に合わせ渋谷駅前に看板広告を展開しました。
海を背景に夏の午後を感じさせる爽やかなビジュアルとなっています。現地ではファンの方々が広告巡礼に訪れ、記念撮影を行っていました。キリンでは、新ビール「晴れ風」でも目黒蓮さんを起用しており、ブランド別での出演となっています。
キリンビール晴れ風同様、SNSや公式サイトでは、撮影の裏側や、紅茶の聖地・スリランカに目黒さんが実際に取材に行った様子を掲載しています。SNSでは、「爽やかすぎ」「中継などで(看板が)映るのが楽しみ」など目黒さんのファンを中心に好意的な声が見られました。
目黒蓮さんと中条あやみさんが出演する新CMも公開されています。CMでは氷のカランとした音が夏を待ち遠しくさせ、涼しげな印象を与えます。3種類のシリーズがありますが、特に夏に飲みたくなるストレートティーとレモンティーを全面に押し出した広告となっています。
未来のレモンサワーの広告
アサヒビールは6月に地域・数量限定で発売した「未来のレモンサワー」の広告を渋谷駅に展開しました。
商品のイメージ写真と簡単な紹介のシンプルなビジュアルとなっています。アサヒビールの広告デザインは、過去の事例を見るとシンプルかつインパクトのあるものが多い傾向です。蓋がフルオープン、レモンの果肉入り、という今までにない見た目を全面に押し出しています。
SNSでは、「おいしそう」「レモンが浮かび上がってる」など商品に興味津々の声が見られました。首都圏・関東甲信越の1都9県のみの販売で、出会えたらレアという点もSNSで話題となっています。
数量・期間限定にも関わらず各駅に大きく広告を展開している点は、さすが大手飲料メーカーという印象です。全国販売ではないため、首都圏での広告展開に比重をおいたと推察されます。
編集部からの一言
2024年6月の広告事例を振り返ると、視覚的なインパクトとアイデアのある広告が多く見られました。
例えば、「Uber Eats」広告は、視覚的な違和感とキャンペーンを組み合わせた斬新なアプローチで、多くのユーザーの関心を引きました。視覚に訴える広告の1事例として押さえておきたいところです。
また、「『呪術廻戦』展」の広告は、特定のターゲットエリアに対して効果的にアプローチしていました。渋谷という原作でも中心とされる場所での展開は、広告コンテンツと場所のかけ合わせを最大限に活かしています。
6月全般を通して、広告の表現方法がますます多様化している印象を受けました。
インパクトを与えるために“違和感”を利用した表現、ターゲットエリアを意識した展開、そして商品をシンプルかつ強烈に伝える手法など、興味深いアプローチが見られました。
来月以降も、どういった広告が見れるのか楽しみですね。先月の記事も併せてご覧ください。