アドクロ編集部がお届けする最新の広告費統計分析の解説。最新の広告費統計から見られる傾向と、直近あったオフラインマーケティングで抑えておくべき話題をピックアップし、解説します。
最新の広告費統計から見る傾向(2024年3月)
経済産業省により毎月速報値が公開されている、特定サービス産業動態統計調査。最新2024年3月分の広告業売上高について解説します。
広告費全体では前年同月比93.2%とほぼ横ばい
全体の広告費としては7,007億円と、前年同月比で93.2%とほぼ横ばいで推移しています。前月比では大幅に増えていますが、毎年3月は年度末ということもあり、広告予算を使い切ろうと考える企業が多いため、前月比は大幅増でも、前年同月比はほぼ横ばいになったと考えられます。
4マス全体は104.6%、「新聞」が回復
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの売上高は合計約1,584億円。前年対比では104.6%となっています。
雑誌・テレビ・ラジオはほぼ横ばいで推移していますが、新聞が大幅に増加しプラスに転じています。新聞広告費は毎年3月に増加する傾向がありますが、これは新生活を迎えるタイミングで幅広い層へ向けたプロモーションを大々的に行う企業が増えるため、普段新聞広告を出稿しない企業が新聞広告を出したり、多媒体と新聞広告を組み合わせたメディアミックスを実施したりと、広告費の予算消化として新聞広告が出されやすいことが理由として考えられます。
インターネット広告は112.9%と大きくプラスに
インターネット広告について、前月までは昨年同月比102〜105%程度で推移していましたが、この3月には売上高は合計約1,666億円、前年対比で112.9%と大幅に増加しました。期末消化の影響も考えられますが、4マス合計の売上高を約80億円も上回る好調ぶりで、今後のインターネット広告のさらなる発展が予想できます。
前年比100%超えが続く交通広告はさらに増加
2023年2月から今月にかけて14カ月連続で前年同月比100%を超えている交通広告。3月は売上高が約160億円、前年同月比で129.1%と大幅に増加しました。
交通広告に及ぼしていたコロナの影響は大きく、2023年3月の売上高は約124億円で、コロナ流行前の2019年3月の売上高約219億円と比較すると、回復の兆しは見えていませんでした。この3月もまだ回復したとは言えませんが、2023年5月にコロナが「5類感染症」に引き下げられた影響か、その差は少しずつ縮まってきている印象です。引き続き動向には注目していきたいところです。
その他、4マスやインターネット広告以外のカテゴリーに目を向けると屋外広告が115.5%、先述の交通広告が129.1%と大きく増加。その他、折込・DM89.8%、海外広告が83.1%と若干の減少となりました。SP・PR・催事企画に至っては56.7%と全項目の中で最も大きいマイナスとなりました。
2024年6月の注目トピックス
続いて、広告や宣伝を担当されている方なら押さえておきたい、最新の広告業界トピックスを解説します。
AIモデル起用、相次ぐ
企業でAIモデルを起用し、広告宣伝のプロモーション活動に活用していく動きが出てきています。
走り始めは、2023年9月に「お~いお茶」を始めとした飲料を展開する伊藤園がAIモデルを使ったCMを展開したこと。当時SNSでは、AIタレントであることが拡散されるとともに、AIであることの驚きの声などが散見されていました。
直近では、ブランド買取「なんぼや」を運営するバリュエンスジャパン株式会社が、新しいイメージキャラクターとしてAIモデル「ユタカ」と「ツナグ」を起用しました。高い接遇力を有するスタッフの顔写真をベースに生成されたこれらのAIモデルは、同社を象徴する存在として活躍しています。
また、アパレルを展開する株式会社しまむらでは、AIモデル「瑠菜(るな)」を起用。年齢は20歳、職業は服飾専門学生というプロフィールで、公式Instagramアカウントがスタートするなど、活用が広がっています。
AIモデルの起用には多くの利点があります。例えば、AIモデルは時間や場所を問わず、どんなシナリオにも対応できるため、広告クリエイティブに起用する点においては非常に便利です。また、実在のモデルを起用する場合に比べて、撮影やスケジュール調整のコストを大幅に削減できる点も大きなメリットといえます。
一方で、技術が進化しても、人間らしさの表現にはまだ課題も。現段階ではAIモデルがリアルな人間の感情や個性を完全に再現することは難しいようにも見えます。また、AIモデルの使用には、著作権や肖像権の問題が絡むため、慎重な対応が求められます。
とはいえ、コストの観点や話題性から見ても、AIモデルの活用は今後ますます広がると考えられそうです。特にAI技術の進化により、よりリアルな表現が可能となり、消費者とのエンゲージメントが向上するのではないでしょうか。AIモデルを活用することで得られるデータを基にしたマーケティング戦略の最適化が進み、より効果的な広告展開が期待されます。
また、AIモデルに動きを持たせることで、バーチャルインフルエンサーとしての活動やオンライン学習プラットフォームでの教師役、さらには遠隔医療での医師役など、多様な役割を担うことも考えられます。さまざまなコンテンツの展開が可能となるかもしれません。