なぜ炎上?見落としがちな差別表現
中村:この事例は、動画のボディーローションの広告です。

動画は、いろんな肌色の人が服を脱ぐたびに画面が切り替わる内容で、黒人の方が服を脱いだ後に画面が切り替わって、白人の方が出てくる、その白人の方が服を脱ぐとまた別の方が…といった連続で服を脱ぐ動画だったんですね。その順番によって、黒人の方が白人になっているように見えたことが炎上のポイントです。
長い歴史の中で、実際に黒人の差別表現は存在し、そのたびに人種差別だと指摘されてきました。今回の事例でも、広告主としては意図していなかったかもしれないのですが、やはり黒人が差別的に表現されてきた過去事例がある以上、表現が不適切であると指摘する方がいても仕方ないと私は考えています。
編集部:どのような代案が出されたのでしょうか。
中村:元の広告の多様な人種のモデルを起用していることはそのまま踏襲し、いろんな人が商品を持っている様子を表現し、みんなのためのローションですよ」というメッセージを表現しました。それを実際にデザイナーがデザインしてくれました。

黒人差別と誤解されるような小難しい表現手法は使わず、徹底的にシンプルにみんなのためのボディーローション、と伝える広告デザインになっています。
このクリエイティブを制作するにあたって加味したのはこれらの新設定だけではありませんでした。
編集部:と言いますと…?
中村:このクリエイティブを作るにあたって、イメージを生成AIで作っているんですね。「様々な人種の方がボディローションを手の上に乗せている」といった具合にプロンプトで指示して、出てきた画像がこちらです。

AIで良いデザインになったと私は思ってたんですよ。ただ、クリエイティブ制作に生成AIを使うとステレオタイプ的な表現になる懸念もあったため、AI倫理学の専門家に「このAI画像をどう思いますか?」と話を聞きにいったんです。
編集部:どういったコメントがあったのですか?
中村:そのときに言われたのが「黒人の手のひらは白いんです」って。「AIはステレオタイプを助長するから気を付けて使わないと」って。
もし私がこの広告を出したら黒人の方は不快に思うわけですよ。ステレオタイプ的に黒人を表現した絵になってしまいました。炎上広告を作った企業と同様に、私も当事者の声を聴かないまま、広告制作してしまうのだ、と身をもって気づかされました。
こういった出来事もあり、実際に黒人の方に協力いただいて広告クリエイティブ案を作成しました。広告を作るとき、該当する方に意見を聞いて作ることの重要性を改めて感じた事例でした。
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炎上しやすい広告の特徴とは
炎上しやすい広告の特徴とは
