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渋谷のOOH(屋外広告)事例から見るアイデアのヒント
以前は広告費の大きなウェイトを占めていたのがいわゆるマス4媒体と呼ばれるテレビ・新聞・雑誌・ラジオに出稿する広告でした。しかし、近年はインターネット広告がマス4媒体をしのぐ成長を見せており、2019年にはついにインターネット広告費がテレビCMの出稿額を超え、従来の広告業界の様相も変化してきています。
そのような中、インターネット広告と同様に広告出稿額を伸ばしてきているのがOOHです。OOHは場所によってはマス広告に匹敵するリーチを狙うこともでき、狙ったターゲット層に対して効率的に訴求することもできる費用対効果の高さが注目されています。
OOHは「Out of Home」の略で、自宅以外の場所に設置された屋外広告全般のことを指します。OOHの種類は多岐にわたり、街頭ビジョンや看板、交通広告、広告がラッピングされたトラックなどもOOHにあたります。
また、交通広告の中にも電車内や駅での広告や、バス、新幹線、飛行機での広告、タクシー車内の広告も近年は多く見られるようになりました。
渋谷駅前で掲載された、お菓子の「ばかうけ」の広告です。
目を引くのは、真ん中に大きく描かれたハリウッドザコシショウ氏のビジュアルと「ばかうけ」のパッケージ写真。軽快で楽しいイメージを、どこか親しみやすいスタイルで表現しているように見えました。
キャッチコピーでは、「ばかすばらしい人生を。」と書かれており、初見の人に強いインパクトを与えると同時に、「ばかうけ」という商品の名前と上手く掛け合わせて、記憶に残るメッセージとなっていた印象です。
渋谷駅で展開中、BE:FIRSTの広告。
8月28日発売の2ndアルバムの世界観を表現した広告を展開していました。同広告では、見る角度によってデザインが変わる「ベローズプリント」と呼ばれる特殊演出を採用。ファンには嬉しい仕掛けとなっていました。
道玄坂ハッピーボードの両側をBE:FIRSTの広告がジャックしていました。
渋谷駅前で展開された、ネットフリックスで配信中の「地面師たち」の広告。
鮮やかな黄色と黒のコントラストを使用し、「STOP!」という大きな文字で注目を集めています。作品について具体的な内容を明かさず、謎めいた雰囲気を醸成しています。
渋谷駅前で複数面展開された今回の広告では、上記のように5・7・5のリズムで描かれたパターンも。視覚的なインパクトと謎めいたメッセージを組み合わせることで、人々の興味を引き、話題を生み出すことを目的としていると推測されます。黄色という、目を見張るカラー展開で注目を集めていた事例でした。
渋谷駅に掲載されたレッドブルの広告です。
「夏フェス遊び方図鑑」と大きく描かれた広告では、若者や音楽フェス愛好者をターゲットとした内容になっています。デザインは非常にフォントサイズも小さく、事細かに夏フェスの遊び方が書かれた、逆張りの広告ともいえるかもしれません。
フェスの楽しみ方や注意点などの情報提供と、レッドブル商品の露出を巧みに融合させており、直接的な販売促進ではなくブランドの存在感を高める手法を採用しています。また、「最後まで楽しみ尽くす。エナジー足りてる?」「フィナーレまで、アゲてける?」といったキャッチコピーは、レッドブルの飲用を間接的に促すと同時に、ブランドを「楽しさ」「エネルギー」「持続力」と結びつけることでイメージを強化しているようにも見えました。
渋谷駅前で展開された、ナイキの広告。
複数の大型枠で掲載されたクリエイティブには、「誰もが勝者ではない。だがその道は全員に開かれている。」「記録を残した者に記憶を残した者。」「野望を抱くのに許可はいらない。」「WINNING ISN'T FOR EVERYONE.」と挑戦することの重要性を感じさせるメッセージが展開。ナイキが掲げる「Just Do It」に繋がるものであると推察されます。
今週26日にはパリオリンピックが開幕し、スポーツ熱が高まると想定されますが、そのタイミングを意識したことが推察されます。また、渋谷という場所の特性を活かし、日常的に多くの若者や観光客が行き交うエリアでブランドメッセージを強く発信しているようです。
渋谷駅構内で展開された、ニューバランスの大谷翔平選手シグネチャーコレクションの広告。デザインではモノトーンに近いシンプルな色使いで、落ち着いた雰囲気を醸し出しており、商品の高品質さと洗練さを強調する狙いがあると想定されます。
キャッチコピーには「Shohei Ohtani Signature Collection.」というシンプルなコピーが採用。商品の独自性とともに、“特別感”を演出しているように感じました。
また広告は渋谷各所の大型媒体でも展開されており、大規模広告となっています。
JR渋谷駅方面から井の頭線に乗り換える導線上にあるREGZAの広告です。
REGZAはハイセンスグループのTVS REGZA株式会社が販売しているテレビ受像機の世界統一ブランド。今回の広告は、REGZAの新しいテレビモデルを宣伝したものです。
広告には、「観たいものだけ、好きなだけ。」というキャッチコピーが描かれつつ、まるで映画のワンシーンのような描写が多数掲載されていました。起用されたスーツ姿の目黒蓮さんのスタイリッシュな写真にも目を離せません。渋谷駅は観光客も多く訪れるため、海外の方含め広範な層に製品の認知を広げる意図があったのではないかと推察されます。
渋谷駅前で展開された、アニメ『【推しの子】』の広告です。渋谷エリアの屋外広告数か所でアニメ単独の広告が展開されている規模感を見ていても、話題作である様子が伺えます。
渋谷エリア内、いたるところで展開されていました。内容は同じ「推しの子」の広告ではありますが、各ポイントごとに全てクリエイティブのデザインが異なっており、力の入り具合が伺えます。
渋谷駅構内では2箇所に渡ってTBSの広告が展開されていました。
1カ所目は渋谷キラキラボード(渋谷109近く)です。こちらでは、TBS DRAMA GALALERYと称して、TBS社が配信しているドラマコンテンツがずらりと並んだデザインとなっていました。
「GALALERY」ということもあり、各ドラマのイメージ画像を額に飾ったデザインで、それぞれ説明文に描かれたQRコードから説明に飛べる仕様に。
通路の両サイドを挟みこむような形で展開。渋谷駅の中でも比較的通行量が落ち着いたエリアという事もあって、比較的ゆっくり眺められる広告となっていました。
2カ所目は東横BIG20(ミヤシタパーク出口近く)です。
6月末からスタートするドラマ「笑うマトリョーシカ」の広告で、週刊誌風のデザインが印象的でした。
真ん中に描かれたQRコードからはドラマの説明ページに遷移することができ、興味を持った方がすぐにアクションを起こせる設計となっていました。
同じ「TBS」社の広告ではありますが、若干内容が異なる事もあって、同じ渋谷駅ながら反対側ともいえる場所で展開されていました。
渋谷駅前で展開された音楽事務所「WACK」の広告です。
毎年、6月頃になると渋谷で大規模プロモーションを展開する同社ですが、今年は「無茶しないと、 WACK WACKできない。」をキーフレーズとした広告を展開しました。黒背景にピンク文字と、インパクトのあるビジュアルが印象的です。
本企画実施中は、全国のタワーレコードにて、今回のキャンペーンをテーマにしたWACK特製「無茶本」の配布が実施されます。また、WACKのメンバーが全国6都市に散らばる「WACK WACKかくれんぼ」を6月中の3日間にて開催することが告知されており、広告掲載に留まらず盛り上がりを見せています。
今週の渋谷駅の大型広告では、アサヒが新発売する「未来のレモンサワー」の広告が掲載されていました。
「未来のレモンサワー」は、6月11日から販売されるアサヒビール社の缶チューハイ。2024年1月に「缶を開けるとレモンスライスが浮き上がってくる」というコンセプトが発表された際は、今までにない商品特徴が大きな話題になりました。
今回、エリア限定(首都圏・関信越エリアの1都9県)での販売かつ数量限定商品として展開を予定しており、こちらの広告はその発売にちなんでの展開となりました。
デザインはシンプルで、テキストを抑えたデザインになっており、今までにない商品である雰囲気を感じさせます。まさに「未来」を意識させられる演出です。
また、渋谷PARCOではPOPUPイベントも展開されており、11日の発売に向けて盛り上がりが高まっている雰囲気を感じました。
その斬新な商品コンセプトとともに、広告デザインも非常にシンプルでありながら未来を感じさせるものでした。テキストを抑えたデザインは、消費者に想像力を働かせる余地を残し、商品の新しさを強調。首都圏限定かつ数量限定という販売戦略も、希少価値を高め、消費者の購買意欲を刺激する効果が見られます。
今週、渋谷エリアではフラッグ広告が3エリアにわたって展開されていました。
1つ目が、渋谷公園通りのフラッグで展開されたキリンビール「晴れ風」の広告です。
晴れ風ブルーが印象的なフラッグには、起用されたタレントと商品(ビール)が大きく描かれており、爽やかさを感じるデザインとなっていました。風が吹いてフラッグがなびく光景は、まさに「晴れ風」を表現しているかのような雰囲気がありました。
2つ目が、渋谷センター街のフラッグで展開された、渋谷区のイベント「おとなりサンデー」の広告です。
このイベントは2017年から「6月の第一日曜日」に展開している地域の交流イベントです。同日には、渋谷各所で様々なイベントが展開されていました。
3つ目は、渋谷道玄坂商店街のフラッグで展開された、NCT DREAMの2ndシングル「Moonlight」の広告です。
NCT DREAMは、平均年齢15歳でデビューしたユース世代のグループ。若年層を中心に人気のあるグループです。今回、2ndシングル「Moonlight」リリースに合わせて広告が展開されました。
メンバーそれぞれの写真が掲載されたフラッグや、メンバー全員が全員が映ったフラッグなど、ファンには嬉しいデザイン展開となっていました。
ディズニーファンタジースプリングスのOOHが2カ所で掲載されていました。
ハチコ―ボードに展開された大型ポスターは東京ディズニーシーにオープンする新しいテーマポート、ファンタジースプリングスの壮大なイメージを感じられるような広告になっています。
日本コカ・コーラが展開する「ジョージア」のOOH。渋谷駅前の憲章ボードや仮囲い等で展開されました。街並みが描かれた青背景のクリエイティブで、「毎日って、けっこうドラマだ。」をコンセプトにした展開となっています。
Microsoftが運営するMINECRAFT(マインクラフト)の広告。同サービスが5月17日で、15周年を迎えるにあたって展開されたキャンペーンOOHになります。
マインクラフトは、3D空間でブロックを壊したり組み合わせたりしながら建物を建築したり、モンスターを倒して冒険を楽しむことができるゲーム。ゲームでありつつ、プログラミング教育の一環として取り入れている学校があることや、採用活動に利用する学校もあるなど、教育との関係も注目されているサービスです。
マインクラフト特有のブロック調で作った日本の景色が印象的なクリエイティブでした。
渋谷駅前の大型広告で掲載、池田模範堂のかゆみ・虫さされ薬「液体ムヒS」「ムヒアルファEXシリーズ」のOOH。
イメージキャラクターに起用された平野紫耀氏(Number_i)が大きく描かれたビジュアルが印象的な広告です。同製品において、平野氏がイメージキャラクターを務めるのは2年ぶり。掲載初日の5/6に見に行きましたが、広告の周辺では平野氏のファンが写真撮影をしている様子が印象的でした。
ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」が渋谷駅で展開したOOHです。昨年の同時期にも、同じ面で広告が展開されていました。
「UT」は、2003年から始まったユニクロのTシャツプロジェクト。「Tシャツを、もっと自由に、面白く。」というキーワードのもと、毎年、世界中のアーティストやクリエイター、学生の方々のデザインや、有名企業のロゴなどを同社の企画力・編集力によってTシャツにして販売しています。2007年から現在の「UT」ブランドとして提供しています。
渋谷駅前の大型広告で掲載されたネットフリックスと名探偵コナンのコラボOOH。本広告は劇場版「名探偵コナン100万ドルの五稜星」の公開を記念して実施された広告です。
名探偵コナン内に登場するキャラクター“怪盗キッド”からの予告状風のクリエイティブで、白地背景に「赤きNを頂きに参上する」とキッドからのメッセージを記載しています。
米大リーグ(MLB)・ドジャースの大谷翔平選手を起用した、コーセーのスキンケアブランド「雪肌精」のOOHが渋谷で展開されました。
「大谷VS太陽」をキーメッセージに、紫外線が特に強くなるというこの4月に、日やけ止めの重要性を発信しています。また、広告掲出と同時のタイミングで、SHIBUYA109では、日焼け止め無料サンプルと紫外線チェッカーうちわの配布イベントが実施。
若年層を中心に人気のあるカードゲーム「デュエル・マスターズ」のOOH。
「世の中、お金持ってるヤツが勝つ?世の中、頭のいいヤツが勝つ?世の中、経験が長いヤツが勝つ?その理屈を、ひっくり返せ。」というフレーズが印象的な広告で、ところどころ「逆転こそが、カードゲームだ。」と描かれていましたが、“逆転”というキーワードがクリエイティブの軸に置かれているように感じました。
キャンメイク「ブラウンパレッド」のOOH。渋谷駅内2箇所で展開されました。
目を引くのは、デザインの1/2以上を占める商品企画担当者の想いが溢れ出たメッセージ。手書き風の文字に「使い勝手〇でキュートな新色爆誕しました!!!」「控えめに言ってヤバいのできました…」と距離感を縮める“今時”な言い回しの文章で、まるで友達に言われたような親しみを感じさせる内容でした。
アサヒが展開する「スーパードライ ドライクリスタル」のOOHです。「スーパードライ ドライクリスタル」は「スーパードライ」でおなじみのアサヒビールが展開する、アルコール分3.5%のビール。
ビールの広告ながら、ビールのイラストや写真、説明が一切ない思い切ったデザインですが、その想いきりゆえ駅構内でも存在感のある広告でした。
渋谷駅で掲出されたサントリーチューハイ「−196(イチキューロク)」のOOH。渋谷凪咲さんが演じる-196ウーマンがQ FRONTビル両サイドの壁面に衝突しているデザインで、ファンを中心に話題となりました。
となりのヤングジャンプで掲載している「ワンパンマン」の30巻発売、3000万部突破を記念して実施されたOOH。実際に作中に登場した漫画のワンシーンを集めたモザイクアート中心に構成されたデザインとなっており、ファンの間で話題になっています。
チルドコーヒーブランドで有名なマウントレーニアのOOH。
俳優の菅田将暉さんが出演するテレビCMと連動しており、「自分にも愛を。」というキャッチコピーにぴったりなリラックス感溢れる優しい広告となっています。
ドライヤーのOOH。“プラズマクラスター”と聞くと空気清浄のイメージがありますが、「髪にも」良いことを広告を通して発信しています。
広告では宮世琉弥さんを起用し、複数個所に展開されました。広告デザインは何種類かあり、うちハチコ―ボード2のクリエイティブ内には、手書きしたような質感のメッセージがありました。ちょっとしたプレミアム感を感じるとともに、宮世さんファンには嬉しい仕様となっており、SNSを中心に話題になりました。
具体的にOOHの種類とおおまかな料金について紹介していきます。
OOHで最も特徴的なのが街頭ビジョンなどに代表されるデジタルサイネージです。渋谷駅に代表されるような巨大な街頭ビジョンや、駅構内のデジタルサイネージなど、様々な場所で目にすることができ、ポスター広告などと違って映像を流すことができるのが大きなメリットです。
最近ではDOOH(Digital Out of Home)と呼ばれることも多く、5Gなど通信技術の発展によって、時間帯や気温、通る人の状態など様々な状況に合わせてコンテンツを変化させることができる技術も進んできています。海外ではDOOHの成長が見込まれていて、日本でもこれから市場規模の拡大が期待できる分野です。
デジタルサイネージというと駅などの交通機関のものが思い浮かびますが、店舗や商業施設に設置されることも多く、2020年には美容サロンに設置されることに特化したデジタルサイネージメディアのサービスが開始されるといった動きも出てきています。出稿費用は媒体や場所によって様々で、たとえば渋谷駅スクランブル交差点の街頭ビジョンだと月額300万円程度、渋谷駅構内のサイネージだと1週間で200〜300万円程度になります。
看板広告はOOHの中で一番イメージしやすいものかもしれません。屋外に掲出される看板広告は多岐にわたり、駅周辺に設置されているものから、道路沿いの看板や、スタジアムなどに設置されている広告も看板広告と呼ぶことができます。
人気のエリアでない限り、看板のOOHは長期間での契約が一般的です。道路沿いなど日常的によく通る場所にいつもある看板を目にすることで、高い広告費をかけなくてもブランドイメージを生活者に植え付けることも可能です。
普段の生活ではなかなか広告を注視することがなくても、何度も目にすることで意識に残すことができるのがOOHを長期間掲出するメリットです。広告料金はどれくらいの人に触れられる場所かによって千差万別ですが、たとえば渋谷駅ハチ公口の大型ボードだと1週間で800万円程度の広告出稿費になります。
各種交通広告もOOHのひとつとして数えられます。電車やバス内の中吊り広告や空港内の各種広告、飛行機内にも様々な広告媒体が用意されています。交通広告は種類によってはターゲット層に効率的にアプローチすることができるのが特徴です。
駅でも若年層が多く集まる駅、ビジネスパーソンが日々通勤で使用する駅、大学が近くにあって学生が利用する駅など、街の特徴によって利用する層が変わってきます。そのため、特定のエリアを利用する層に対して効果的に訴求することができるのが交通広告のメリットです。
他にも、飛行機や新幹線はビジネスで利用する人が多いため、空港や新幹線にはビジネスパーソン向けの広告が多く出稿される傾向にあります。近年はモニターが設置されているタクシーも多くなり、タクシー車内もBtoB広告が効果的なOOHの媒体として注目されています。
料金は路線や場所によってまちまちですが、たとえばJR山手線の中吊り広告を1週間掲出する場合、サイズにもよりますが400〜900万円程度の広告費になります。
街中を駆け抜けるアドトラックもOOHのひとつです。多くの人が行き交う繁華街を走るため注目されやすく、走行ルートがある程度決まっているために何度も接触されることも期待できます。
アドトラックは特徴的な装飾にすることも可能で、街中を特徴的なトラックが走行するシーンはSNSなどでの拡散されることも多く、単純な広告接触以上の効果も期待することができるOOHです。
最近はデジタルサイネージを搭載したアドトラックもあり、場所や時間帯によって広告内容を切り替えることができるようになっています。料金は1週間で200万円程度と比較的安価で多くの人の目に触れさせることができるため、コストパフォーマンスが高いOOHとして知られています。
上記でご紹介した以外にも様々な種類が出てきています。たとえば、建設中のビルの仮囲いを利用した広告も多く見られるようになりました。大規模なビル開発の場合、都心の一等地にあることも多く、多くの人の目に触れるため高い広告効果が見込める広告媒体といえます。その他にも、昔ながらの電柱や消火栓に広告出稿することもできるようになっているなど、種類や出稿場所は多岐にわたっています。
OOHのメリットを3つご紹介しましたが、ここではOOHの特徴をうまく活かした事例を3つ紹介していきます。
小田急小田原線の代々木八幡駅のホーム壁面に長さ124mにも及ぶ交通広告看板が設置され、2021年3月にはキリンビバレッジの「キリン 午後の紅茶」の広告が掲出されました。
「午後の紅茶 しあわせ写真館」と題したこの広告は、家族や友達などとの幸せな瞬間を切り取った写真をホームいっぱいに展開した広告で、連続性のある横に長い看板広告の特徴をうまく生かしたクリエイティブとして話題になりました。
明治が販売する「明治プロビオヨーグルトR-1」が2021年2月に展開した受験生向けのOOHが話題を集めました。
受験シーズン真っただ中の時期に、受験生から集めた様々な「受験生あるある」を渋谷駅前の看板や東京メトロ銀座線、丸ノ内線の車内で広告として掲載しました。受験シーズンに学生が多く利用する電車で展開されたことで受験生の間で話題になったのはもちろんのこと、受験生以外でも思わず「あるある」と納得してしまうようなユニークな内容が広く話題になった施策です。
その場所ならではの広告が展開できるのもOOHの特徴のひとつです。2021年に開局30周年を迎える岐阜県大垣市の大垣ケーブルテレビはロゴマークのリニューアルに際して、地元の養老鉄道にてラッピング電車を走らせました。長らく地元住民の足として親しまれてきた養老鉄道を広告媒体として活用することで、メッセージを伝えたいターゲットに対して効果的に伝えることを狙ったOOHの実例です。
都心部だけではなく、地域に密着した広告を出稿できるのもOOHの特徴のひとつです。
2021年7月に新宿駅東口前にあるクロス新宿ビジョンの3D広告が登場してからDOOHの注目度もより高まったのではないでしょうか。思わず見入ってしまうような今まで以上にインパクトのある広告展開が可能となりました。
最近特に話題になったのは、2022年9月に実施されたテレビアニメ『SPY×FAMILY』の3D広告。配信された3D広告は、2022年10月1日に放送開始するテレビアニメ『SPY×FAMILY』第2クールをPRするもので、登場人物の女の子、アーニャが新宿の街を覗き込む可愛らしい広告でした。
さらに、この3Dビジョンの並びにあるアルタビジョンとNEWNO GS新宿ビジョンでも動画広告が同時配信され、新宿東口を『SPY×FAMILY』がジャックする、インパクトと話題性のある広告展開となりました。
ここ十年程度でマス4媒体の力は弱まり始め、代わりにインターネット広告やOOHの広告費が伸びてきています。SNSやデジタルの発展によって広告業界全体が大きく変わってきている中で、多様な形態が選択でき、消費者により近いところで訴求することができるOOHは今後も成長が期待されています。テレビCM などに比べて安価で効率的にターゲットに対して訴求できるのも大きな利点です。
若年層への認知拡大を求めて渋谷駅をジャックする、ビジネスパーソンに訴求したいサービスをタクシーで展開する、観光客の購買拡大を狙って空港で積極的に広告展開する、というように場所や媒体を効率的に選択することで高い費用対効果を見込むことができます。一度、訴求したいターゲットを再設定し、そのターゲットに効率的にアプローチできるOOHを広告施策に組み込んでみてはいかがでしょうか。
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