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最初は完全一致・フレーズ一致から プロが語るリスティング運用
WEB広告の代名詞ともいえるリスティング広告。世界的に見ても検索の数は年々増えており、SNSの台頭があるとはいえまだまだ検索ニーズが高い中、売上を最大化させるためには欠かせない広告の1つです。
今回は中小企業の中でもあまり運用に慣れていない方に向けて、リスティングを中心とした運用型広告業界で高い成長と実績を持つ株式会社キーワードマーケティングの広告事業部 シニアマネージャーである田代氏にリスティング広告で成果を出す方法をはじめとした運用のコツについて話を伺いました。
高い実績を持つからこそのノウハウ
編集部:まずはじめに御社について教えてください。
キーワードマーケティングは2004年創業の運用型広告に特化した広告代理店です。1,400社以上の支援実績があり、2022年12月にはPRエージェンシーのベクトルグループに参画しました。現在は運用型広告を活用したご支援はもちろんのこと、PRと広告の知見をかけ合わせた「検索創出型マーケティング」で、低予算での認知拡大施策にも取り組み、お客様の事業拡大に貢献しています。
編集部:これまでかなり高い実績を出し続けてこられてますが、そもそも成長戦略上で効果的な施策はあったのでしょうか?
田代:オウンドメディア「キーマケのブログ」の運営です。インバウンドで、過去1年で約400件ほど広告運用に関する相談をいただいており、33.8%のお客様がブログに接触していることがわかっています。ブログは運用型広告の基本的な知識だけでなく、最新のアップデート情報や、マーケティング用語、ランディングページの改善手法なども解説しています。全てのブログを社員が執筆しており、毎月8~10件ほど公開しています。
編集部:そこでリスティングをはじめ運用型広告系の権威付けもされたんですね。
田代:まだまだこれからだとは感じていますが、普段からブログを読んでくださっている方は、広告運用に対する熱量が高かったり、会社そのものに対して信頼いただいていると感じることがやはり多く感じます。中にはノウハウを発信しているから相談したとおっしゃっていただけることもあり、オウンドメディアは多くの信頼とご相談をいただく重要な役割を持っていると感じています。
インテントマッチ(部分一致)は多用しすぎないことがコツ
編集部:それではリスティング広告運用ついて色々とお伺いします。中小企業のリスティング広告運用担当者が共通してやれていないことは何がありますか?
田代:情報のキャッチアップはかなりやられているイメージはあるんですが、専門的な知識になるとどうしても理解に時間がかかってしまうので、専門性の高い設定の部分になると出来ていない方が多いと思いますね。
編集部:具体的にどのあたりができていない印象ですか?
田代:ターゲティングの種類やマッチタイプの違いについての理解はお持ちだと思いますが、何をどの順番でやればいいのか、というセオリー的な部分は悩んでいる方は多いのかなと。
例えばマッチタイプの話でいくと、インテントマッチ(部分一致)で拡張しながら進めていくことがGoogleの推奨にはなっていますが、初心者であれば完全一致とフレーズ一致の2つでキーワードの登録を進めていったほうが余計な費用もかからず良いと弊社では考えています。
しかし、Google推奨のままインテントマッチ(部分一致)での拡張を進めていく人が非常に多いです。
【マッチタイプの種類別特徴まとめ。インテントマッチ(部分一致)は登録したキーワードに関連する検索語句を幅広く収集するため関連性の薄い検索語句も拾ってしまうことが特徴。】
編集部:初心者にはあまりおすすめできないやり方なんですね。
田代:もちろん代理店さんによって考え方は違うと思います。
でもインテントマッチ(部分一致)から進めていくやり方は管理がしっかりできるならいいかもしれませんが、リソースも限られている中で管理はできないという方が多いのでおすすめはできないですね。
編集部:AIが賢くなったとは言え、人の手の管理はまだまだ必要そうですね。
田代:おっしゃる通り、最近では特にこのAIの賢さについては語られていますが、インテントマッチ(部分一致)では全然コンバージョンと関係のない検索語句を拾ってきてしまうことがまだまだあるため、一概にAIが賢いからほとんど任せても大丈夫でしょう、という考え方は危険です。
編集部:では初心者の方であればあるほど完全一致とフレーズ一致でスタートするほうがいいんですね。
田代:だと思います。
どうしてもインテントマッチ(部分一致)の場合は管理が必要になるので、そこまでリソースのない特に中小企業の方であれば、まずはコンバージョンの可能性の高いキーワードを完全一致とフレーズ一致中心で登録して確実にコンバージョンを取りに行くほうがいいですね。
ただ、始めて間もなくても、相当な自信があるのであればインテントマッチ(部分一致)を取り入れたやり方で進めていくのも否定はしません。
それでも管理とひと口に言っても、広告文の変え方によって拡張性は変わりますし、入札戦略によっても変わるので本当に最初は難しく感じてしまうと思います。
したがって無理にインテントマッチ(部分一致)を豊富に取り入れる必要はないですね。
編集部:インテントマッチ(部分一致)に拡張するタイミングはあるのですか?
田代:完全一致とフレーズ一致で登録を続けていると、やがて頭打ちになるときが来るのでそれがタイミングですね。
フレーズ一致もかなり拡張して色んな検索語句を拾ってきてくれるようにはなっていますが、それでもこれ以上拾ってこれないという時は訪れます。
その時に多少CPA(コンバージョン単価)が上がったとしてももっとコンバージョンを取りに行きたいと、いうフェーズであればインテントマッチ(部分一致)も取り入れていっていいかなと思います。
編集部:CPAに対してどのような考えを持てばよいのでしょうか
田代:利益率とか受注率とかそのあたりを計算したうえで、CPAをどれくらい上げてもいいのかを見る必要がありますね。
固定費がかかるような店舗の場合はどうしても数を稼がないといけないということで多少CPAに対して寛容な部分があると思うので、店舗かWEBかで考え方は変わりますね。
編集部:運用当初はCPAが上がりやすい傾向にあると思いますが気にしなくてもいいですか?
田代:そもそも完全一致とフレーズ一致で登録を続けていくと、そこまでCPAの高騰が起こることはないと思います。
むしろ、その2つでキーワード構成しているにも関わらずCPAが高騰している場合はすぐに対処したほうがいいです。
インテントマッチ(部分一致)で拡張させることを前提に運用を始めて、それでCPAが高騰してしまう場合は確かに焦る気持ちはわかりますね(笑)
ただここは自動入札か手動入札かで大きく変わりますが、自動であれば学習期間が約30日間必要と言われていますので、その期間内であれば焦る必要は特段ないかなと思います。
おすすめは目標コンバージョン単価の設定
編集部:入札の種類について、業種によってどちらがおすすめなどありますか?
田代:ありますね。
まず自動と手動の違いに関してはGoogleが色んなシグナルを見て運用してくれるか否かがあります。このシグナルとはユーザー情報のことで、デバイス、実際の検索語句、所在地等を指し、Googleはこのシグナルを見て誰にどんな広告文を出せばいいのかをやってくれます。
そのため、シグナルに入っていないようなものであれば、手動で入札するほうがいいと思います。例えば店舗系ビジネスなどの天気に左右されるものであれば、Googleは天気まではシグナルに入れていないので、Google側の学習を期待するよりも自分で手動で入札戦略を組むほうが良い成果は出やすいと思います。
編集部:中小企業の方がよくやっている自動入札はありますか?
田代:クリック数最大化をしている企業様のアカウントはいくつか見たことはありますね。どうしてもクリックを取りたい場合であれば導入しても良いとは思いますが、目標次第では別の自動入札を使うことをおすすめする場合があります。
例えば一定のキーワードで必ず露出をしたい場合ですね。クリック数最大化は、文字通りクリック数を大きく取りにいくための戦略になるので、常にユーザーに対して見せておきたい、という時には使ってもいいと思います。
SEOで急激に順位が落ち込んだときに取り入れることはたまに見かけたりしますので、コンバージョンを取りに行くのとはまた別の観点になりますね。
【Google広告の自動入札の一覧】
編集部:クリックが取れるということはLP(ランディングページ)に自信があるなら使ってもよいですか?
田代:あまりその考えに至ったことはありませんね。
仮にクリック最大化にしたうえでインテントマッチ(部分一致)で広く取っていく戦略を取っている場合、上述したようにインテントマッチ(部分一致)の場合は本来必要ではないキーワードまで拾ってくる可能性があるので、その場合インテントマッチ(部分一致)の拡張に対応できるLPが無いと考えています。
編集部:業種問わずおすすめな入札戦略はありますか?
田代:まずは手動ですね、自動であれば目標コンバージョン単価の設定をおすすめしたいです。
【目標コンバージョン単価(上から3つ目)の説明】
※手動入札とは:広告主が各クリックに対して支払う金額を自分で設定する入札戦略。この方法では、入札額を細かくコントロールできるため、特定のキーワードや広告グループに対して戦略的に入札額を調整することが可能。
目標コンバージョン単価の場合は設定したとしてもそのCPA以下で本当に取れるの?と疑問を抱く方もいるかと思いますが、過去の経験上スタートしてから2~3か月目からうまくいけば安定してCV獲得ができるようになります。(うまくいかないと広告の配信量が出ない”シュリンク状態”になる)
実は、昔は目標コンバージョン単価の設定は一定のコンバージョンが取れているアカウントしか使えない設定だったんですよね。
そのため初心者の方にはなかなか馴染みのない設定ではありましたが、近年その制約が無くなりましてコンバージョン実績が0のアカウントでも使えるようになりました。
そのため初月から目標コンバージョン単価以下でコンバージョンが出る可能性はありますが、初月からいきなりCPAが良くなる可能性は50%以下くらいかなと思います。
やはり2~3カ月は見ておいたほうがいいと思います。
編集部:色んな設定を試して初月からコンバージョンが出ずに苦労する方は多いと思いますが、何かアドバイスはありますか?
田代:入札戦略の話でいくと自動ではなく手動入札にしたほうがいいと思います。その方が正直社内でも説明がしやすいと思います。入札に入れているキーワードを一覧で見せて、どのキーワードでクリックが取れて、コンバージョンに至っていないのかが可視化されるのでどこに問題があるのかがわかりやすくなります。
次に向けた改善案の話をする際もボトルネックがあると他の人に改善の依頼もしやすくなりますからね。
編集部:初心者の方であればあるほど手動のほうがいいんですね
田代:自動も種類があるのと学習期間が必要になりますし、管理も大変なのでまずは手動から始めたほうが効果も出ますし楽かなと思います。
競合サイトからキーワードを見つける手法も
編集部:手動入札を行う際のキーワードの見つけ方について教えてください。
田代:まずはキーワードプランナーですね。
【キーワードプランナーの実際の画面。入力したキーワードの関連キーワードを検索ボリュームや競合性などの指標とともに一括で表示してくれる】
Googleで検索した時にサジェストワードが出ると思いますが、それも参考にするといいと思います。
【Google検索時のサジェストの例】
後は競合のサイトを見るというのは意外と良いキーワードを発見できる方法です。
LP内には当然該当のキーワードを含んでいると思いますので、キーワードプランナーだけで言い換え語句などが見つからない場合は競合サイトの活用をしてほしいですね。
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