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スタートは紙媒体 あの「きぬた歯科」が看板広告に辿り着くまで
街中を歩けば思わず目を引く派手な看板、黄色やピンクの地色に大きく「インプラント」の文字と眼鏡をかけたおじさんの顔写真。東京都八王子市にある歯科医院「きぬた歯科」の看板広告は、まさに独創的です。
このインパクト抜群な広告の仕掛け人である、きぬた歯科のきぬた泰和院長は、自身の顔写真を使った看板戦略で一躍有名になり、今や多数のメディアにも出演する“看板広告のパイオニア”とも呼べる存在になっています。
アドクロ編集部では、きぬた院長に直接取材を実施。シリーズで「きぬた歯科」の広告戦略に迫ります。
第1回では、きぬた院長が看板にたどり着くまでに実施していた広告やエピソードを紹介。続く第2回では、看板だけで年間2億円を投資する「きぬた歯科」の看板の秘密を深掘りします。第3回では、看板以外の施策や、10年以上続けても攻略できていない“意外な”広告についてお話を伺いました。
「きぬた歯科」とは
きぬた歯科は、東京都の西八王子駅前に店舗を構える歯科医院。一般的な歯科医院の年商が約5,000万円とされる中、西八王子駅の1店舗のみで年商十数億円を超える、規格外の存在です。
【西八王子駅の駅前ロータリーにあるきぬた歯科】
東京都内にお住まいの方なら、一度は「きぬた歯科」の看板を目にしたことがあるかもしれません。2012年頃から、きぬた院長の顔写真が入った看板を多数設置し、その印象的なクリエイティブと集中的な看板展開で知られています。
看板は東京都内を中心に250枚以上を展開しつつ、きぬた院長の出身地である栃木県足利市から、神奈川県小田原市、三重県伊勢市まで展開しています。
一番最初に始めた広告は「紙媒体」
編集部:看板を中心に、様々な広告をやられていると思います。最初から広告は出そうと決めていたのですか。
きぬた歯科:もちろんですよ。僕自身、30歳で独立しましたが、独立前から絶対に広告を打とうと思っていました。
【きぬた歯科といえばこの看板。独創的でインパクト抜群だ】
僕は出身が栃木県足利市で、勤務医時代は江戸川区の葛西で勤めていました。独立して初めて八王子という街に来たのですが、どんな媒体が強いのか、影響力があるのかも分からず、何の広告がいいのかって分からない状態からスタートしましたね。
編集部:最初、実施した広告はどういった媒体ですか。
きぬた歯科:最初にやり始めた広告は、地域情報誌の「ショッパー(※)」でした。紙面に広告を載せるところからスタートしています。
「ショッパー」はポスティング配布の情報誌なのですが、八王子エリアを当時席巻していたんですよ。各戸に全部入っていましたし、当時は24ページぐらいあったんじゃないかな。八王子に住んで、その影響力を肌で感じていました。
商売するうえで、そのエリアに住むことは絶対必要。1年とか住んでみると、その場所に住んでいる皆さんがどういう媒体を見ているのかがわかってくる。隣のエリアでは、別の情報誌が影響力があるってのも見えてきたわけです。
※ショッパー:ポスティングで配布されている無料地域情報紙。2021年2月末で休刊となっていたが、同年7月2日号から復刊。現在は、八王子周辺版、町田・相模原周辺版の2版を毎週発行している。
編集部:ショッパーからスタートされ、他の媒体も実施されていったのですか。
きぬた歯科:朝日新聞に折り込まれる「定年時代」というタブロイド版の本冊子や、読売新聞に折り込まれる「はいから」に広げていきました。中小企業って身近なところからスタートすべきだと僕は思うんですよ。最初から広げすぎても無駄金になってしまうので。
編集部:そこから、インターネット広告、看板と広げられていかれたのですね。
きぬた歯科:そうです。インターネット広告にはお金をすごく使いました。その後、意外と反応が鈍い事に気づき、看板にシフトしていくわけです。
その他、今はテレビやラジオCM、チラシ折込などもやっています。
前提として広告は絶対必要なんですよ。「商品やサービスがしっかり評価されれば、口コミで広がる」って言われるじゃないですか。口コミが広がることは確かにありますが、時間がかかりすぎますよね。
その間に運転資金が無くなれば本末転倒、下手すると口コミって5年10年と長期で見ないと広がらないこともあるから、「口コミを大事にする」なんて簡単に言わない方がいいと思うんですよ。
“口コミで患者さんやお客さんを増やす”って正論なんですけど、そこまで人件費や家賃のランニングコスト、投資額を回収できるかはまた別の話。そう考えると、やっぱり広告って必要です。
時代に合わせて広告も変わる
きぬた歯科:1990年後半にインターネットが出て、徐々に「インターネットがすごい」と盛り上がってきたわけです。
当時、ある会社のCMで酒屋のワンシーンが流れてて。酒屋が忙しく全国各地に商品を出荷している様子が放映されながら、「これはインターネット広告のおかげ」って言うわけですよ。あのインパクトは衝撃的でしたし、日本中がインターネットに向かっていきました。
何でもトレンドとか時代の変わり目ってあると思いますが、広告もそうだし、ビジネスもそうじゃないですか。昔55DPEって「55分で現像しますよ」ってサービスがありましたが、今は無くなりました。“写ルンです”やデジカメもそう。スマホで撮影して現像できるので、必要ないわけです。
【きぬた歯科 羅田泰和(きぬた やすかず)院長】
こうやって時代の変わり目でビジネスも変わりますし、紙からインターネットに広告も変わっていきました。
すぐにレスポンスを求めてはいけない
編集部:広告をやるうえで「費用対効果」は切っても切れない考え方になると思いますが、広告のレスポンスはどのように考えていますか。
きぬた歯科:当然、やったことに対してどのくらいの反応があるかって考えると思いますが、すぐレスポンスを求めちゃいけないと思ってて。
例えば、きぬた歯科で今もやっている「新聞の折込チラシ」。訴求を「インプラント相談会」にして、毎月第1土日の相談会タイミングの当日土曜日にチラシを入れています。折込とか紙媒体って、即効性がありそうと思いがちですが、それは違うと思っています。
編集部:広告物が直接消費者に渡るので、すぐ成果に繋がりそうな印象はあります。
きぬた歯科:例えば「ラーメン一杯800円のところ当日は500円にします」って話であれば、当日に多分来ると思いますよ。
ただ、医療機関はそうじゃないんですよ。長い時間を経て、やっと効果が出てくる。チラシにしても、ショッパーにしてもそうですが、何年も経過してからチラシを持ってくる人がいるわけです。取っておいて、“その時が来た”から来てくれたってパターンですね。
看板も、インターネットも全てそう。媒体によって違うと思いますが、僕の中では平均2年は必要だと思うんですよね。少なくともインプラントっていう分野に関しては、何度も何度も見て背中を押されるといった感じですね(第2回に続く)
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