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ブランド指標を共通言語に タイミーが仕掛けるブランド施策の秘密
スマートフォンの普及により、私たちの生活は大きく変化しました。そして今、「働き方」にも革新の波が押し寄せています。その最前線に立つのが、スキマバイトサービス「タイミー」です。
企業の「働いてほしい時間」と個人の「働きたいスキマ時間」をマッチングするタイミー。従来の労働市場では見過ごされてきた「時間の隙間」に、新たな価値を見出しました。
しかし、全く新しいこのサービスには、世に広める力強いブランディングが不可欠です。今回、タイミーでブランディングを担うBX部で部長を務める木村真依氏とブランディングチームの北山玲央菜氏に取材を実施。第2回の今回は、上場時の「間違い探し広告」の事例や、ブランディングの考え方について話を伺いました。
間違い探しで「これからの働き方」を表現
編集部:7月に上場されたと思います。その際にも新聞やOOHで広告展開していましたね。
【2024年7月26日 日本経済新聞朝刊に掲載された広告】
木村:ブランドコミュニケーション施策として実施しました。
渋谷で展開した“間違い探し”のOOHは主にtoC(一般生活者)向けに、日本経済新聞に掲載した15段広告は主にtoB向け(企業や事業主)に発信しました。
編集部:OOHはどういった意図で実施されたのですか。
木村:XなどSNSで話題化されるという、PRの観点を重要視していました。
上場するタイミングで、私たちは「新しい働き方を提案する企業」として、労働のあり方をよりポジティブに変えていきたいというメッセージを効果的に伝える方法を模索していまして。パートナー企業との協議を重ねた結果、「間違い探し」という誰もが親しみやすいコンテンツを活用することにしました。
北山:タイミーがある、これからの働き方をビフォー・アフターで見て頂くことで、新しい働き方を提案していくことをポイントにしており、実はクリエイティブ内にタイミーの様々な機能紹介を描いています。
例えば、お気に入り機能を表現するハートがあったりとか、今までだと1人が働いていたところをタイミーによって何人かで働けるようになった様子、今すぐお金が即金されるといった、タイミーのサービスに関する説明も散りばめていました。
【お気にいり機能や即金されるといったサービスの特徴を間違い探しの中に取り入れた】
間違い探しを通して、まずサービスを知っていただき、どういう働き方の違いがあるのかを見ていただきたい気持ちがありました。
編集部:間違い探しのイラストでは、ファミリーレストランのサイゼリアで間違い探しイラストを担当している方を起用されていましたね。
木村:はい、イラストレーターの山崎秀昭さんにデザイン頂きました。
「間違い探し」は多くの人が経験したことのある、親しみのある遊びです。これを広告に使う事でより親近感を持ってもらえると考えました。
また、サイゼリヤの「間違い探し」は、多数の方に認知されています。実際、多くの方に「サイゼリアの間違い探しと同じイラスト」だとお気づき頂いていましたが、「知っている」「やったことがある」という感覚をより強く持ってもらえると思いました。
身近で馴染みのある「間違い探し」という形式の中に、タイミーの新しい働き方という「変化」を組み込むことで、私たちのメッセージをより受け入れやすくする効果があったと考えています。結果として、親近感が生まれるようなクリエイティブになったのではないかと思います。
北山:今回制作した「間違い探し」は単なる一回限りのキャンペーンではなく、様々な場面で活用できると思っています。
例えば、スポットワーク中の休憩時間を楽しく過ごしていただくために、食事で使うトレイに貼り付けたり、イベント行列の待ち時間を有効活用するために配布したりするなど、社内からも自発的にアイデアが出てきています。
【株式会社タイミー BX部ブランディングチーム 北山玲央菜 氏】
こうした使い方の提案を見ると、この広告フォーマットにはまだまだ活用の余地があると感じており、今後も様々な形で展開していきたいと考えています。
OOHや新聞広告を出す事が目的ではなく、あくまで手段
木村:ブランドの状態を把握するため、半年ごとにブランド認知度やミッションの浸透度、そして顧客の心理的ロイヤルティの変化の調査を行っています。
【株式会社タイミー BX部 部長 木村真依 氏】
最近の調査結果ではとても良好で、これらの指標が大幅に向上しました。もちろん、上場に伴うPR活動が効いていた側面もありますが、体感でもOOHや日経新聞への広告掲載の影響もとても大きかったと思います。
編集部:OOHや新聞広告など、リアル媒体を使う意図は何かありますか。
木村:BX部として、OOHや新聞広告を活用している理由に、私達がオンラインサービスである事が挙げられます。ワーカーや事業者を始めとしたステークホルダーとWEB以外の接点を増やし、「ブランド認知を高める」「ミッションを体現する」意味でも今後もやっていくつもりです。
あと、実施するからにはPR効果を意識し、広告が出されたエリア内だけで見られて終わりではなく、話題化を狙って仕掛けていきたいと考えています。
一方で、OOHなどリアル媒体を活用するのはBX部だけではありません。
例えばマーケティング部が、工場や物流倉庫で働く方向けに「タイミー」を知ってもらいたいと考えたときに、最寄り駅に交通広告をすることがあります。場所の特性上、そこで勤務する方しか行かなかったりすると思うのですが、個別にターゲティングしてアプローチする手段としてOOHを使ったりすることもあります。
編集部:各部が持つKPI達成のため、それにマッチした媒体を使っていくわけですね。
木村:はい。なので、クリエイティブにもその違いは反映されています。
例えば、マーケティング部が出す広告は「その場で即金されます」「案件量が一番多い」など実際にワーカーが使う事を想定した、よりサービス詳細や特徴を訴求しています。
一方、BX部としては「ミッションを伝えていく」ことが中心なので、スキマ広告のように「スキマの可能性」とか「人生の可能性が広がる働き方ができる」といった概念に近い部分を訴求しています。
【福岡でマーケティング部が展開した広告】
各部で目的とKPIが違うため、訴求の仕方は全然違いますが、同じ手法をとることはあって、その1つがOOHであり新聞広告ということはありますね。
「共通言語」でブランディングの価値を社内に理解してもらう
編集部:今回お話を聞く中で、ブランディング施策について社内の理解が非常に強いように感じました。
木村:はい、BX部が実施する各キャンペーンの目的や意義が経営陣を含めて広く理解されています。ですので、アプリダウンロード数などの短期的な指標ではなく、ブランド価値の向上という長期的な視点で評価されているのはとても心強いと思っています。
一方で、ブランディング施策への予算配分は常に難しい課題です。私自身も、多くの企業がこの点で苦労していると聞きます。この課題に対処するには、ブランド指標など共通言語を作り、それが間接的にでも事業にどう繋がるかを説明することが重要だと思っています。
ブランディングの価値を社内で理解してもらうのは簡単ではありませんが、取り組むべき重要な課題だと考えています。
編集部:中長期的な視点で実施を検討している施策や予定について教えてください。
木村:タイミーのブランド戦略において、「選ばれ続けるブランド」であり続けることが重要だと思っています。これは単に好かれるだけでなく、嫌われないようにすることも含まれます。
上場を果たし、事業が成長する中で、競合他社も増加しています。こうした競争の激しい環境下でも、タイミーが選ばれ続けるブランドであるために、様々な施策を展開する必要があると思っています。
一方で、これまで築き上げてきた信頼関係や実績のデータも私たちの強みです。これらの資産を活用し、ブランドとして選ばれ続けるための施策を考え、実行していくことが今後の課題です。競争が激しくなる中で、タイミーならではの価値を常に提供し続けることが、ブランド戦略の核心となっています。
編集部:現状、何か考えている施策はありますか。
木村:ブランド戦略は、広告やプロモーションだけでなく、ユーザーが直接触れるプロダクトと現場でのアルバイト体験がブランドイメージを形成する上でとても重要な要素です。なので、これらの領域での改善や新たな施策に力を入れていこうと考えています。
「スキマバイト」というキャッチコピーに代表されるように、従来の労働市場の課題に対して、「なぜこれまでこうだったのか」という疑問を持ち、解決していきたいと思っています(取材協力:株式会社タイミー)
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