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TOP 記事一覧 ナレッジ SUBARUはなぜスペックの話をしないのか 顧客を主人公にする「ナラティブアプローチ」

更新日:2025年07月30日

SUBARUはなぜスペックの話をしないのか 顧客を主人公にする「ナラティブアプローチ」

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「良い商品なのに、私たちの想いが伝わらない…」。そんな悩みを抱えていませんか?スペックや価格で語るマーケティングは、もはや顧客の心に響きません。その突破口が、顧客を物語の主役にする『ナラティブアプローチ』です。
本記事では、SUBARU(スバル)や熱狂的ファンを持つ中小企業の事例から、広告に頼らず顧客を巻き込み、唯一無二の結びつきを築く具体的な方法を解説します。

なぜ商品の良さを語るほど顧客は離れるのか?

「我が社の製品は、どこにも負けない自信がある。このこだわりや品質の高さを丁寧に伝えさえすれば、きっと顧客は価値を分かってくれるはずだ」。 多くの経営者や開発者の方が、そう信じて疑わないのではないでしょうか。
しかし、その熱意とは裏腹に、商品の良さを語れば語るほど、顧客の心が離れていくように感じることはありませんか。これは決して気のせいではなく、現代の市場で多くの企業が直面している「マーケティングの逆説」なのです。
では、なぜこのような悲しい事態が起きてしまうのでしょうか。その根底には、顧客を取り巻く環境の劇的な変化があります。私たちは日々、スマートフォンやPCを通じて、洪水のような情報に晒されています。その結果、現代の顧客は企業からの一方的な「売り込み」に対して、極めて敏感になり、無意識のうちに心を閉ざす術を身につけてしまいました。
企業が主役となり、Webサイトで職人の技術を語り、SNSで開発秘話を投稿するといった手法を、マーケティングの世界では「ストーリーテリング」と呼びます。この手法は、起承転結の分かりやすい物語で顧客を惹きつけ、かつては絶大な効果を発揮しました。
しかし、顧客が賢くなった今、どんなに美しい物語も「企業側の都合の良い話」と見なされ、スルーされることが多くなったのです。むしろ、その熱意が強すぎるあまり「売り込み」と受け取られ、敬遠されることすらあります。
前回の記事で触れた「お得感の罠」と同様に「品質の高さ」という訴求も、数多ある選択肢の一つとして相対化され、それだけでは顧客の心を掴む決定打にはなり得なくなっています。
前回記事:なぜPayPayは「つい使ってしまう」のか?人の”損失”心理から解く、非常識な顧客ロイヤリティ戦略
この膠着状態を打ち破るための処方箋、それこそが本記事の主題である「ナラティブアプローチ」です。 ストーリーテリングとナラティブアプローチは、似て非なるもので、その違いは決定的です。
  • 主役の違い: ストーリーの主役が「企業」や「商品」であるのに対し、ナラティブの主役はあくまで「顧客」です。
  • 物語の形: ストーリーが「完成された物語」を一方的に語るのに対し、ナラティブは「未完成な物語」を提示し、顧客が参加して初めて完成します。その結果、顧客はブランドを「自分ごと」として捉え、熱量の高いファンへと変わっていくのです。
  • 関係性: ストーリーが「語り手と聞き手」という一方向の関係であるのに対し、ナラティブは顧客との対話によって共に物語を紡いでいく「双方向」の関係を築きます。
例えるなら、ストーリーテリングが完璧に製本された豪華な小説を「さあ、読んでください」と手渡す行為だとすれば、ナラティブアプローチは「この物語の主人公はあなたです。次のページを、一緒に書いていきませんか?」と、白紙のページを差し出す行為に近いでしょう。
企業はもはや絶対的な語り部ではなく、顧客一人ひとりが自身の物語を紡ぐための「聞き手」であり、きっかけを与える「触媒」へと役割を変えることが求められているのです。顧客は、商品を一方的に「買わされる客」でいることに飽きています。そうではなく、そのブランドとの関わりを通じて、自身の人生が豊かになるような「物語の主人公」になりたいと願っています。そして、自らが主人公となった物語を、今度は自身の言葉で友人やSNSで語り始めます。
これこそが、広告費を必要最低限に抑え、ファンを生み出すサイクルの第一歩です。 この視点の転換こそが、熾烈な価格競争やスペック競争から抜け出し、顧客と深く代替不可能な関係性を築くための鍵となるのです。
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山本達巳 つきみ株式会社

著者山本達巳 つきみ株式会社

静岡市出身、関西学院大学卒。地元医療系企業での経験を経て、父親の医療介護系企業に参画。留学をきっかけに輸入雑貨のEC事業を開始し、令和元年に独立。自社アウトドアブランドの展開を経て、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。

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