『優良顧客向けの施策を徹底しているのに、なぜか売上が伸び悩む…』。そんなジレンマに陥っていませんか?本記事では、売上の大半はファンではなく、たまにしか買わない“ライト顧客”が支えているという事実を解説します。
USJをV字回復に導いた「確率思考」の集客術を中小企業の事例と共に学ぶことで、勘や経験に頼らず、これまで見過ごしてきた膨大な顧客層にアプローチする具体的な方法がわかります。この記事が、あなたの集客戦略を効果的で再現性のあるものへと変える、最初のきっかけとなるはずです。
「ロイヤルティ信仰」の罠 なぜファンを増やすほど成長は鈍化するのか
「売上の8割は2割の優良顧客が生み出す」この経験則を信じ、多くの企業が顧客ロイヤルティ向上に多大なリソースを投下しています。CRMの導入や会員限定施策など、いわゆる「お得意様」の繋ぎ止めに懸命になるのは、そのためです。
もちろん、ロイヤルティの高い顧客は事業の安定基盤です。しかし、その努力は本当に企業の「成長」に繋がっているでしょうか。ファンを大切にするあまり施策が内向きになり、シェアが伸び悩むなら、あなたも「ロイヤルティ信仰」の罠に陥っているのかもしれません。
しかし、近年の市場データ分析は残酷な現実を明らかにしました。それは「多くのブランドで、売上の半分近くを、年に数回しか購入しない“ライト顧客”が支えている」という事実です。これは日用品から高額商品まで、幅広いカテゴリーで確認される普遍的な法則なのです。
このギャップを数学的に解き明かすのが、NBDモデル（負の二項分布モデル）という考え方です。重要なのはモデルの数式ではなく、どう活用するかです。顧客の購買を「愛情」という感情論ではなく、「予測可能な確率のパターン」として科学的に捉え直す視点こそが、その核心です。熱心なファンからの売上は「固定給」だとしても、成長という「ボーナス」は、膨大なライト顧客が「たまたま」買ってくれる購買の積み重ねから生まれます。
だとすれば、マーケティングの焦点はどこにあるべきでしょう。少数のファンに更に尽くすことか。それとも、大多数の未顧客に対し「購入の選択肢として思い出してもらう確率」を少しでも上げることか。
この問いこそが、勘や経験に頼る集客から脱却する出発点となるのです。
映画ファン以外を呼び込んだUSJの逆転劇。「リピート率」より「顧客数」を重視する理由
出典：楽天トラベル
「少数のファンより大多数のライト顧客が重要」という考え方を、破綻寸前からV字回復することで証明した企業があります。確率思考を実践したユニバーサル・スタジオ・ジャパン（USJ）の事例は、その有効性を何よりも雄弁に物語っています。
2010年頃のUSJは、経営不振に喘いでいました。「ハリウッド映画のテーマパーク」というコンセプトに固執し、新たな客層を開拓できず入場者数は長期低迷。既存顧客にばかり目を向けた「内向きのマーケティング」の典型例だったのです。
通常であれば、既存ファン向けのリピート率向上策を考えるでしょう。しかし、再建を託された森岡毅氏の決断は真逆でした。目指したのはリピート率ではなく、来場者数の絶対数を増やす「浸透率（ペネトレーション）」の最大化だったのです（出典：確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 | 森岡 毅）
まずパークのコンセプトを「映画のテーマパーク」から「世界最高のセレクトショップ」へと再定義。そして、これまでUSJに興味がなかった層へ「来場する理由」を提供しました。ファミリー向けの「ユニバーサル・ワンダーランド」や、ゲームファン向けの「モンスターハンター」イベントなどがその一例です。これらは狭い関心事で顧客を区切るのをやめ、あらゆる人がUSJを選ぶ「確率」を上げるための緻密な戦略でした。
結果は劇的なV字回復でした。成功の要因は、一部のヘビーユーザーではなく、何百万人もの「新規・ライト層」を獲得したこと。USJの事例は、企業の成長が「顧客数」の増加にかかっているという原則を力強く証明しています。
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顧客の購買データから見えた、意外な行動パターン
顧客の購買データから見えた、意外な行動パターン
山本達巳 つきみ株式会社
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