「アドクロ」では、広告・マーケティング業界の最前線で活躍する企業や個人にスポットを当て、その取り組みを独自の視点で取材し、記事として紹介しています。今回、直近で取材を実施した5社について、それぞれの現場で得た貴重な洞察や印象的なエピソードをお届けします。
各取材を通じて見えてきた広告戦略の最新トレンドや、業界の未来を占う鍵となる要素とは? 編集部メンバーが肌で感じた、広告の世界の躍動感あふれる現在地をレポートします。
シーライクス 水谷様
SHE株式会社が運営する、女性向けオンラインスクール「SHElikes(シーライクス)」。独自のユーザーコミュニティ施策の裏側に迫るべく、コミュニティマネージャーの水谷様に取材を実施しました。
コミュニティ運営の核心部分として、「コミュニティプランナー」という受講生主体の仕組みが興味深く、毎月100人規模のイベントを企画・運営するという経験は、受講生自身のキャリアにも大きなプラスになっているようです。
また、「SHEのお約束事」という共通認識によって、コミュニティ内にポジティブな空気感が醸成されている点にも注目で、心理的安全性が確保され、受講生が安心して自己表現できる場が生まれているのだと感じました。
取材内でお話頂いた「コミュニティは『マインドチェンジ』を起こす場所」という言葉が、SHElikesの本質を表しているように思います。スキルだけでなく、自信や前向きな姿勢を身につけることで、多くの女性が理想のキャリアに近づいていく。そんな可能性を強く感じさせる取材でした。
キーワードマーケティング 田代様
リスティングをはじめとする運用型広告のスペシャリストであるキーワードマーケティングの田代様に広告運用のコツについての取材を実施しました。
実際の話ではかなり具体的な管理画面やマインドの話を伺いましたが、これまで何十人もの運用者を見てきている経験から来る話には非常に納得感がありました。
中でも結果を出し続けられる人の素養の1つである「疑問を持ち続けられるかどうか」については、日々管理画面と数字のにらめっこをするからこそ、その数字の意味について考えなければならないという強いメッセージを感じました。
AIの台頭が叫ばれるようになっていますが、まだまだ人間のマインド面で成果が左右される時代は続きそうです。
AD-LAMP 中村様
イギリスの広告審査機関を研究しながら、広告の炎上事例を分析し、消費者と共に代替案を作成する独自の取り組みを行う団体「AD-LAMP」代表を務める中村様を取材しました。
今回の取材を通じて、現代の広告業界が直面する「炎上」という課題の複雑さと、その対策の重要性を強く感じました。
具体的な事例分析を通じて、炎上の原因となる要素がより明確になりました。例えば、プロテインの広告では、固定観念に基づいた表現や誇大広告的な見せ方が問題視され、アパレルブランドの事例では、言葉の解釈の違いが思わぬ炎上を引き起こし、ボディーローションの広告では、無意識の差別的表現が問題となっていました。
この取材を通じて、現代の広告制作には、クリエイティビティだけでなく、社会的責任と倫理的配慮のバランスが求められていることを強く実感しました。多様化する社会において、全ての人を満足させる広告を作ることは困難ですが、企業の価値観を明確に伝え、表現の意図を丁寧に説明することの重要性がなお増しているのかもしれません。
オンジン 今井様
シロアリ駆除を自ら体験するなど徹底的なニーズ理解に定評のあるWEBマーケティング支援会社、株式会社オンジンの代表取締役の今井様に取材を実施しました。
リスティング広告運用のコツを、特に初心者の方にも分かりやすく解説してくださいました。リスティング広告の運用には、もちろん知識やノウハウも大切ですが、それ以上にユーザーのニーズを深く理解することが重要だと力説されていました。キーワード選定や広告文の作成など、あらゆる場面で、ユーザーのニーズをどれだけ深く理解しているかが、広告の効果を大きく左右するということは、常に心に留めておきたい点です。
また、Googleの推奨する運用方法だけでなく、自社独自の価値を前面に出した広告運用を行うべきという点に、大きな気づきを得ました。「ユーザーの気持ちに寄り添い共感を得るというのは、AIにはできないことで人間ならではの能力」という言葉は印象的で、今後、広告業に携わる上で忘れてはいけないことだと実感しました。
タイミー 木村様・北山様
スキマバイトサービス「タイミー」のブランディング戦略について、BX部で部長を務める木村様とブランディングチームの北山様への取材を実施しました。
特に印象的だったのは、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションを、あらゆる施策を通じて体現しようとする姿勢です。渋谷での「スキマ広告」や上場時の「間違い探し広告」など、クリエイティブな施策は、単にアテンションを集めるだけでなく、タイミーの本質的な価値提案を上手く表現していました。
また、ブランディングの価値を社内で理解してもらうための努力、特に「共通言語」の創出は、多くの企業が直面する課題に対する有効なアプローチだと思います。「選ばれ続けるブランド」を目指す姿勢は、持続可能なビジネスモデルの構築に不可欠だと感じました。
「スキマ時間」という新しい価値を創出し、それを社会に浸透させていく過程は、企業ブランディングの視点で今後も注目していきたいところです。