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リスティング広告成功の鍵 専門家が語る「ニーズ把握」の重要性
低予算から出稿できるリスティング広告は、最近では多くの中小企業が運用を行っていますが、専門的な知識がないと成果が出にくいという側面があります。クリック数が少なかったり、コンバージョン率が低かったりと、費用対効果が高まらずにお悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回は、クライアントニーズを把握するため自らシロアリ駆除作業を体験するなど、徹底したニーズ理解に定評のある株式会社オンジン代表取締役の今井氏に取材を実施。中小企業がリスティング広告で成果を出すためのポイントについて話を伺いました。
300社100業種以上のリスティング広告運用を代行
編集部:株式会社オンジンについて教えてください。
今井:弊社は2022年創業のWEBマーケティング支援会社で、中でもリスティング広告やSNS広告などWeb広告の運用代行やコンテンツマーケティングの支援を得意としています。
私自身、リスティング広告代行会社でのサラリーマン時代を含めて、約300社100業種以上の企業の広告運用代行をしてきましたので、リスティング広告についての知見は豊富だと自負しています。また、月額予算数十万円規模のお客様を多く支援させていただいた経験がありますので、中小企業のリスティング広告の運用については特に自信を持っています。
これまでの経験から力を入れているのは、お客様の商材について理解を深めることと、ユーザーのニーズの把握です。どんな商品で、見込み客がどんなことで悩んでるのかというところは、時間をかけて調査した上で運用するようにしています。特にユーザーニーズの理解は一切妥協していません。疎かにするとキーワード選定や広告文作成など広告運用で行う全ての業務に支障をきたすと考えています。
編集部:貴社HPで紹介されている消費者理解の様子についての動画を拝見しました。中でもシロアリ駆除業者の1日密着ではご自身も床下に潜って施工をチェックされていましたが、この体験は広告運用にどのように生かされたのでしょうか?
今井:シロアリ駆除業者様の密着は、どんなLP(※ランディングページ:Webサイト訪問者が初めに着地するページ)にするかを検討するために行いました。仕事を依頼したことも目にしたこともない業種でしたので、五感で感じた仮説を重視すべく現場にお邪魔させていただきました。経験上、肌で感じて立てた仮説は最も外れにくいです。
仕事を体験してみてわかりましたが、シロアリ駆除の仕事って、暑いし汚れるし狭いし、本当に大変なんですね。そのため、このハードな仕事を誠意を持って丁寧に作業されていること自体に価値があると感じました。自分もそうでしたが、ユーザーはまずここまで大変な仕事であることを理解できていないのではないかと。
害虫駆除の場合、認知度が高い大手でないと「高い技術力やノウハウがある」ことをアピールしてもユーザーに選ばれにくいと考えています。一方で「丁寧にしっかり作業を行っています」という誠意がLPで伝われば、小さな会社でもユーザーからの信頼を得ることができて、安売りせずお問い合わせに繋げられると仮説を立てました。自分の大切な家を守るために依頼する仕事なので、手を抜かれたくない気持ちはどなたも強いと思います。
「とにかく安いです!」とLPで訴求すれば、コンバージョン率は簡単に高められます。ただリソース不足の中小企業が安売り訴求をしてしまうと、利益率が下がり苦しくなってしまうことが多いはずなので、強みでなければ極力提案しないようにしています。
編集部:ユーザーニーズや商材について深く理解することでセールスポイントが見えてくるんですね。実際に、広告運用を依頼されたお客様がアピールしたいポイントと、今井様がその商材に魅力を感じたポイントがズレていたことってあるのでしょうか?
今井:よくあります。例えば今回のシロアリ駆除業者様のケースで言えば、お客様は技術力がある点をアピールしたい、と考えていたようでした。しかし私から見ると、お伝えした通り、ここまで大変な作業を丁寧に行っている誠実さがとても魅力的に感じました。動画のインタビューで登場する家主さんも言っていましたが、一番は安心して任せられる会社かどうかだと思います。
編集部:お客様も気がつかなかったセールスポイントだったわけですね。
今井:お客様にとっては長年行ってきた駆除作業なので、その作業自体はいつも当たり前にやることなんですね。技術力の高さももちろん素晴らしいポイントなのですが、技術のことを言われても素人には伝わりにくく、大手の競合他社と比較された時に差別化が難しいと思っています。そのため、大変な作業でも一切、手を抜かずに丁寧に作業しているという点をアピールした方がユーザーに信頼してもらえるのではないかとお話ししました。
リスティング広告の運用は釣りと同じ
編集部:大企業と中小企業ではリスティング広告の運用方法は異なるものなのでしょうか?
今井:基本は同じですが、注力するポイントが異なります。大企業は予算が潤沢にある分、顕在層だけでなく潜在層まで狙えるようにニーズやターゲットユーザー別で複数LPを用意するなど、様々な施策を実施して、コンバージョンを最大化していきます。一方で、中小企業の場合は少ない予算でいかに効率的にコンバージョンを獲得するかが重要となるため、費用対効果が高い施策に大半の予算を投じるべきです。顕在層への配信に特化することを推奨します。
編集部:X(旧Twitter)で解説されていた予算とコンバージョンの関係についての投稿を拝見しました。釣りに例えた解説がとてもわかりやすかったです。
出典:今井氏 2024年6月14日のポスト
今井:釣れる魚(ニーズのあるユーザー)のいるところに餌(広告)を投げれば釣れるので、釣りと一緒だと思ってます。大企業なら出せる餌も竿(予算)も多いですが、中小企業だと予算が少ない分、餌や竿の数も限られてくるので、魚群の濃い、つまりニーズのある顕在層に絞ってアプローチすることが一番大事だと思っています。中小企業の広告運用は、1本の釣り竿でたくさん魚を釣ることをイメージをして頂くとわかりやすいかもしれません。
LTVが高い商材こそリスティング広告向き
編集部:リスティング広告にはどういった商材・サービスが向いているのでしょうか?
今井:基本的にはニーズのあるもの全て、リスティング広告に向いてるのではないかなと思っています。商品・サービスが認知されていればユーザーは検索をします。検索している方にリーチできるのがリスティング広告の強みなので、いわゆる“購買クエリ”(購入したいという強い意思を持っていることを示すキーワードやフレーズ)のようなものがある程度検索されていれば、リスティング広告にチャレンジする価値はどの商材にもあるかなと思います。
編集部:なるほど。特にリスティング広告向きだと思われる商材はありますか?
今井:わかりやすいもので言うと、緊急性の高いサービスは特にリスティング広告向きだと思います。例えば、給湯器の故障やトイレなどの水漏れトラブル、鍵が開かない、などのようにすぐに解決したいライフライン系や、今すぐどうにかしなければならない葬儀関係のようなものは、真っ先に検索されるのでリスティング広告と相性がいいですね。
リスティング広告は検索結果の上部に出せる広告なので、目に留まる確率が高くなります。急を要する場合、コンバージョン率も高まるので、CPA(顧客獲得単価)が合いやすいはずです。
編集部:反対にリスティング広告には向いていないものってありますか?
今井:LTV(顧客生涯価値)が低すぎる商材は向いていないと思います。リスティング広告は費用対効果の高い広告と言われますが、年々競合が増え、クリック単価が上がっている業種が多いです。採算を合わせるにはコンバージョン率を高めていく必要がありますが、難しくなり採算が合わなくなった。というご相談は正直増えてきた気がしますね。ただLTVが高ければ許容できるCPAも高くなるので、コンバージョン率がある程度低くても採算が合います。よって広告運用の難易度は下がります。
編集部:LTVが高い商材とは例えばどういうものになりますか?
今井:LTVが高い商材というのは、顧客単価が高かったり、長期的にリピートで購入されたり、利用されるような商材のことですが、例えば、お話ししたシロアリ駆除もそうですね。信頼が得られれば定期消毒で家がなくならない限り利用されますので、リピートされます。それに単価も安くないので、リスティング広告との相性はいいですね。
その他にも、注文住宅のように単発でも1回の取引の粗利が大きい商材であれば、リスティング広告に向いています。
編集部:反対にLTVが低い商材って例えばどんなものがありますか?
今井:例えば安いモバイルバッテリーが分かりやすいですね。モバイルバッテリーって紛失しない限りリピート購入することってあまりないと思います。よって顧客単価が低く、リピートされにくい状況下でCPAを合わせなければいけないので、リスティング広告で大きく黒字にするのは難易度が高い印象です。ただクリック単価は低いはずなので採算を合わせることは可能かと思います。
この他にも、数千円程度の格安家具もリピート購入はあまりしないと思いますので、LTVが低めの商材として挙げられます。このような商材で黒字にしたい場合は、まずはアマゾンや楽天などのモールに出す方が良いと思います。
注意点として、今お話ししたことは、あくまで中小企業の場合なので、大企業となると話が変わってきます。大企業はネームバリュー、いわゆるプレファレンス(※消費者のブランドや商品・サービスに対する相対的な好感度)が高いため、コンバージョン率が高いことも多く、戦略が変わってきます(第二回に続く)
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