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LPに手を抜くのはNG プロに聞く見込み客を逃さないリスティング広告運用
費用対効果の高さから多くの企業が運用を行っているリスティング広告。効果的なリスティング広告の運用には、適切な広告予算の設定やユーザーのニーズを押さえたキーワード選定・広告文作成、そしてコンバージョン率を高めるLPの制作がポイントとなります。
これまで多くの企業のコンテンツマーケティング支援を行ってきた株式会社オンジン代表取締役の今井氏に取材を実施。2回目の今回は、リスティング広告の運用をこれから始める方に向けて、成果に繋がる運用のコツについて伺いました。
キーワードは「考える」よりも先に「拾う」
編集部:リスティング広告のキーワードはどのように選ぶと良いでしょうか?
今井:初心者の方はまず顕在層が検索するキーワードのみを登録すべきだと思っています。例えば、トレーニングジムが商材であれば、「ジム 渋谷」など購買に繋がる検索ワードを登録していただきたいです。
キーワードは細分化すると、“メインキーワード”と“サブキーワード”がありますが、メインキーワードには商材を表す言葉をそのまま入れて、サブキーワードの方は”渋谷”などの地名のように、購買に繋がる行動の検索ワードを入れると良いと思います。
ポイントとしては、キーワードはまず自分の頭で考えるよりも、”拾う”という手法がおすすめです。ユーザーに頻繁に検索されているキーワードを探索して、それを登録するというイメージです。キーワードを拾うには、複合キーワードが調べられる「ラッコキーワード」というツールが無料で使えて便利です。
例えば、このツールに「リスティング広告」というキーワードを入れると、リスティング広告の複合キーワードを洗い出すことができます。その中から登録するキーワードを拾っていくという手法になります。
編集部:洗い出した複合キーワードの中から、何を基準に拾っていくべきでしょうか?
今井:コンバージョンに繋げるには検索ボリュームがあるキーワードをまず登録したいので、検索ボリュームもチェックすると良いと思います。
これはあくまで私のやり方ですが、ラッコキーワードのようなツールで洗い出した複合キーワードをGoogleキーワードプランナーに入れて検索ボリュームを取得し、検索ボリュームのある購買クエリ(購入したいという強い意思を持っていることを示すキーワードやフレーズ)を入れるという手順で行っています。
購買クエリの登録が漏れると大きな機会損失になってしまいます。そのため機械的かつ網羅的にキーワードが探査できるこの手法は初心者の方には特におすすめです。ただこの手法で取得できるキーワードは競合性の高いクリック単価が高めのものが中心になるはずです。競合があまり出稿していない儲かるお宝キーワードを見つけるのは、ツールに頼らず検索意図を頭で真剣に考える必要がありますね。
編集部:キーワードのマッチタイプについてはどうお考えですか?
今井:初心者がCPAを重視するのであれば、マッチタイプは完全一致かフレーズ一致を主軸にするのが良いと思います。
インテントマッチ(部分一致)は検索意図の合った語句に広告を配信してくれるというメリットがあるのですが、商材によっては拡張しすぎてしまい、コンバージョン率が低い語句に多く広告配信されてしまうということもあります。
ケースバイケースなのでインテントマッチが良い場合も全然ありますが、初心者はリスクをなるべく減らすことが大事だと思うので、まずは狙った検索語句に配信しやすい完全一致かフレーズ一致をおすすめします。
編集部:インテントマッチが良い場合とは、例えばどんなケースでしょうか?
今井:わかりやすい例だと、コンバージョンする検索ワードがばらける商材はインテントマッチが良いと思います。過去に私がお手伝いした便利屋さんの広告運用はまさにその典型例で、インテントマッチを用いて「家具移動」など想定外の検索ワードからコンバージョンが多く取れました。このように、コンバージョンに繋がる検索ワードが多岐にわたる商材はインテントマッチがおすすめです。
広告文見出しは15個登録しなくても良い
編集部:リスティング広告の広告文に一番重要となるものとは何でしょうか?
今井:一番重要なのはユーザーが最も求める価値を見出しに入れることです。もっと言えば、ユーザーが求めており競合が提供できていない、自社の商材が持つ独自の価値、いわゆる「バリュープロポジション」です。それを広告の見出しに固定することを推奨しています。
Googleは15個の見出しを設定することで広告の有効性を上げることを推奨していますが、実は有効性は広告の掲載順位やクリック単価を決める「広告ランク」には直接影響しません。わかりづらいですがGoogle広告のヘルプページに「広告の有効性の評価は、広告の配信の要件には直接は影響しません」と書いてあります。
【広告の有効性のイメージ】
それならば、有効性を上げるよりも特定の見出しを固定して使うことで、商材が持つ独自の伝えたいメッセージを明確にする方がコンバージョンに繋がると私は考えています。
2024年2月1日に、Google広告は見出し1だけしか表示されないこともある仕様に変更になりましたので、こういった観点からも見出しの固定化を推奨しています。
編集部:見出し候補をたくさん入れれば良いというわけではないのですね。
今井:なるべく自社の強みに反応したユーザーだけを集客するというのが、コンバージョン率を上げるポイントだと思います。
編集部:見出しには具体的に、どのような内容を入れると良いのでしょうか?
今井:あまりリスティング広告を出す業種ではないのですが、ラーメン屋を例に挙げてみます。名古屋駅の近くにある高級ラーメン屋の広告文であれば、私はシンプルに「名古屋駅徒歩1分の高級ラーメン」のように、その店に足を運ぶ決め手となる情報を見出しに固定して表示させた方が良いと思います。
見出しを最大限登録しようとすると「トッピングが豊富」「店内が綺麗」といったユーザーがそれほど関心のない情報を訴求して、自社の強みに関心の薄いユーザーの流入に繋がる恐れがあります。見出しのバリエーションが増えればオークションに参加する機会が増え、インプレッションは増えるはずですが、コンバージョン率が下がってしまうのであれば避けるべきでしょう。
ユーザーのニーズに焦点を当て、その上で、自社にしか提供できない最高の価値とは何かを考え、それを見出しに固定して伝えるということがコンバージョン率を高める上で重要だと思います。
編集部:広告文を作成する際のポイントは他にもありますか?
今井:広告文とLP(ランディングページ:広告や検索結果などからユーザーがクリックして最初にたどり着くページ)の訴求連動性も大事です。
先ほど例に挙げた高級ラーメン屋のケースで言えば、「高級ラーメン」をLPでアピールしているのに、見出しで「トッピングが豊富」等の特徴をアピールしていると訴求の連動性がなく、LPにたどり着いたユーザーは混乱して、離脱する可能性が高くなるはずです。LPで強く訴求している内容と広告文見出しで訴求する内容は揃えることをおすすめします。
広告を出すならホームページを作る前にLPを作るべし
編集部:広告から自社ホームページへの直誘導より、LPへ誘導した方が良いのですか?
今井:自社ホームページへの直誘導も選択肢の一つですが、基本的にはLPへの誘導がおすすめです。ホームページは複数のページから構成されているので、ユーザーは目的の情報を手に入れるために、いくつものページを移動する必要があります。これはユーザーにとって手間となるため、離脱率を高めコンバージョン率を下げる原因になります。
一方、LPは1ページで完結しているため、ユーザーはスクロールするだけで必要な情報にアクセスでき、離脱率を抑制することができます。そうは言っても、ユーザーのニーズを理解しないままLPを制作しても、ユーザーの求めるコンテンツが配置できないため、コンバージョン率が下がりコンバージョンが取れない可能性が高いです。
『ユーザーニーズの理解度=コンバージョン率の高さ』と言っても過言ではないと思っています。
編集部:コンバージョン率を下げるLPの特徴として具体的にどんなものがありますか?
今井:よくあるのが検索したユーザーに不必要な情報が多いLPですね。少々極端ですが、例えば、30代の女性に特化したパーソナルジムを探すために「パーソナルジム 女性30代」というキーワードで検索するとします。そうすると、このユーザーが求めているのは基本『30代の女性が入るべきパーソナルジム』の情報だけなはずです。
そんなユーザーに対して、LPで「男性向けのトレーニングマシン」や「60代以上のシニア向け」などの情報を提供しても邪魔になってしまい、離脱されてしまいます。『30代の女性が求めるパーソナルジム』の情報だけが載ってるLPであれば、すぐに離脱することは少なくなるはずです。このような意識で、メインのターゲットユーザーに対して、必要なコンテンツをLPに掲載することをおすすめします。
また、情報が不足しすぎている場合も離脱に繋がりますので、過不足なく情報を提供するのが重要です。
編集部:リスティング広告の出稿にはLPが欠かせないのですね。
今井:そうですね。SEOに力を入れて集客することがなければ、ホームページを作る前に、まずはLPを作ることをおすすめします。
LPであれば、制作費を抑えつつ、リスティング広告で素早く集客に繋げることができます。
編集部:LP中で特に重要な箇所というのはあるのでしょうか?
今井:LPのファーストビューは特に重要です。ファーストビューでユーザーに商材の魅力をどれだけ伝えられるかで、コンバージョン率が大きく異なってきます。絶対に手を抜いてはいけないポイントです。
先ほどのジムの例で説明します。商材が渋谷にあるジムだとすると、LPのファーストビューでは「渋谷のジムに通いたいけどどこがいいんだろう?」と興味を持って広告をクリックしたユーザーに対して、ファーストビューでその答えと、ユーザーが期待する結果(ベネフィット)を提供することが重要です。
簡単に言うと、「あなたの悩みが解消できる最高のサービスですよ」というのが伝わるファーストビューにすることがポイントです。
編集部:ファーストビューで商材の魅力を伝えるために意識すべきことは何でしょうか?
今井:ポイントとしては2点あります。まず、1点目が『商品の特徴の提示』です。ユーザーは日常生活で毎日たくさんの広告を見ているので、一瞬で自分にとって価値のある情報だと認識できないと、すぐに離脱してしまいます。先程の例で言えば、「渋谷にあるジム」であることは最低限伝える必要があるでしょう。
2点目は『ベネフィットの提示』です。ベネフィットの提示については大きく、可能であればビジュアルでも見せることが大事です。「3つのNot」(1.Not Read:読まない、2.Not Believe:信じない、3.Not Act:行動しない)というコピーライティングの基礎的な考え方があるのですが、これを意識することが重要です。つまり一目見ただけで内容が分かり、信用もできる。そして行動したくなる視覚的なコンテンツでベネフィットを訴求すべきです。文字を使う場合は大きめのサイズで、写真や図を活用してユーザーに視覚的にアピールすることをおすすめします。
また、CTA(ユーザーに対して特定の行動を促すために使われる言葉やボタン)を露出させることも大事です。ファーストビューに問い合わせボタンなどを露出させることでコンバージョン率を高める効果が期待できます。スマホ表示の際はフッターに追従CTAを追加することをおすすめします。
編集部:LPに配置するコンテンツはどのような内容を盛り込んだ方が良いでしょうか?
今井:まず顕在ニーズを満たすコンテンツを配置すると良いと思います。ジムの場合、場所・料金・営業時間などは誰もが知りたい情報ですので、これらがわかるコンテンツは漏れなく設置したいですね。反対に極端ではありますが「水素水を扱っている」という点を真っ先に強くアピールして、営業時間がわからない、場所もわからないというように、ユーザーが欲しい情報が全然得られないようなLPでは離脱されやすくなります。最低限、顕在ニーズを満たすコンテンツをLPに配置するようにした方が良いですね。
編集部:同じ商材でもユーザーによってニーズが変わればセールスポイントも異なりますよね?
今井:そうですね。なので、可能であればLPもニーズ別に分けた方がいいと思います。
例えば「ジム 筋トレ」と検索するユーザーに対しては、筋力のつくトレーニング器具が充実してるジムだという点がアピールできるLPだとコンバージョン率が高くなるはずです。また、「ジム ダイエット」と検索するユーザーなら有酸素運動ができる器具が多いという点を伝えるLPを設定するイメージです。
LPは複数制作するとその分費用がかかるので、ニーズの濃い訴求から優先して作ることを推奨します。多店舗展開されているジムであれば、店舗別でLPを作るところから着手する感じですね。
広告運用はユーザーの幸せを考える仕事
編集部:最後に、リスティング広告初心者の方に向けたアドバイスをお願いします。
今井:ノウハウや、Googleが示すベストプラクティスのようなものも大事ですが、それ以上にユーザーの価値観やニーズの理解を深めることが重要だと思っています。
広告運用は、抽象度を上げると「ユーザーが何に困っているかを考えて、どんな価値を提供したら、幸せにできるか」を考える仕事だと認識しています。
近年、リスティング広告の運用はAIに置き換わる部分が増えてきましたが、ユーザーの気持ちを考える能力は、今後も人間に求められる能力のはずですし、運用者によって差がつくポイントだと感じます。今回お話ししたノウハウも、ユーザーの検索意図や不(不満、不便、不都合、不安、不快感等)を理解していないと的外れなアウトプットになってしまいます。
また、常にユーザーニーズを真剣に考えていると、プライベートでも回りの人に対して、ニーズを常に考えた立ち振る舞いが身につくはずなので、広告運用ってすごく素敵な仕事だなと思っています。
余談ですが、私はサウナによく行くのですが、外気浴スペースは一番奥から座るんです。入口から一番遠いところですね。理由は多くの方は入口の近くに座りたいと思うからです。そんな風に普段から相手の幸せを考えた立ち振る舞いをしていると、広告運用でもニーズを外すことが減ってくるのかなと思っています。
私はプライベートでできないことは仕事でもできないと考えているので、ぜひ皆さんも日常生活からニーズを意識した立ち振舞を心がけてみてください。コンバージョン率の高い広告運用が自然とできるようになっていくと確信しています。
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