企業が自社の商品やサービスを広く知らしめ、購入してもらうための活動には様々な名称が用いられます。まず一般的にイメージされるのが「広告」かもしれません。他にも、広告活動を担う部署が「宣伝」部という名称で設けられている企業も多いでしょうし、広報、PR、IR、販促など様々な言葉が生まれてきています。
私たちが暮らしている中でも様々な場面でこうした広告活動に接しています。わかりやすいところでいうと、TVを見ているときに流れるCMや、通勤電車の中吊り広告は日々の生活でよく接する広告ですよね。
その他にも、ポストに入っているチラシや、駅前で配布される新商品のサンプル、YouTubeチャンネルでの商品・サービスについてのCMなどのように、生活の中であまり意識せずに触れている広告活動もあります。
いわゆる「広告」以外にも、企業の宣伝活動には様々な種類があります。その手法が多様化してきているため、現代では「広告」や「宣伝」、「PR」を明確に線引きできなくなってきているのも現実です。それはメディアの広告枠を購入する従来の「広告」以外にも様々な形で自社の商品やサービスを宣伝する方法が生まれてきている、ということでもあり、それらをうまく活用することが費用対効果の面でも求められてきています。
今回の記事では、こうした活動の中でも「宣伝」についての定義や手法について詳しく解説していきます。
「宣伝」とは?
では、「宣伝」とは具体的にどのような活動のことを指すのでしょうか?
辞書を引くと、宣伝とは「主義主張や商品の効能などを多くの人に説明して理解・共鳴させ、ひろめること」となっています。英語では「プロパガンダ」と訳され、特定の主義や思想についての政治的な宣伝という意味合いが強くなっています。
ただ、現在の日本の広告業界で「宣伝」とは、対象となるターゲットに対して企業の商材やサービスを理解してもらうことに加え、実際の購入などのコンバージョンまでつなげることを目的とした活動のことを言います。
似たような意味を持つキーワードと宣伝との違い
「宣伝」という言葉と似た言葉に「広告」や「広報」、「PR」という言葉があります。
ここではこれらの言葉と「宣伝」の違いについて解説していきます。
宣伝と広告
宣伝と広告は似ている言葉ですが、2つの言葉の間にはどのような違いがあるでしょうか。
まず宣伝という言葉は、商品やサービスについて消費者に知ってもらい、さらに理解を求めてコンバージョンまでつなげることを目的とする活動のことを指します。
それに対して、広告という言葉は消費者に商品やサービスを広く知ってもらう活動のことを指します。広告は商品やサービスを知ってもらうことを目的としていますが、宣伝は認知してもらうだけではなく、実際の購入までつなげることを目的としているところに違いがあります。
しかし、現実的には宣伝と広告という言葉がこうした定義をきちんと理解されて使われるケースは少なくなってきています。「宣伝」という言葉も「広告」と同じように「広く知ってもらう」という意味の言葉として区別せずに使われるケースも多く見られ、厳密な線引きは難しくなってきています。
宣伝と広報
広報は、商品やサービスを消費者に理解してもらい、ファンになってもらうための活動を指します。そのために、メディアへの情報提供などの活動をするのが一般的です。
広報活動は記事や報道を通して情報を発信するため、メディアに提供した情報の取り上げられ方やタイミングはメディア側がコントロールします。
宣伝は情報を発信するタイミングやその内容も企業側がコントロールできるため、そこが宣伝と広報の大きな違いです。
また、広報活動にはメディアへの掲載費がかからないことが多いため、広告や宣伝のように費用がかからないというのも異なる点です。
宣伝とPR
宣伝は前述のとおり、商品やサービスのことを認知してもらい、実際に購入までつなげることを目的としています。
対して、PRは「客観的な事実を中立的に伝えるコミュニケーション」と定義されています。
企業からの情報がメディアによって中立的に扱われ、企業側でコントロールできないといった点でPRと広報は同じですが、広報が情報をメディアに発信するだけの活動なのに対して、PRはSNSなどを通じて消費者との双方向のコミュニケーションを行うという点が広報とPRの違いです。
宣伝に使える手法例
では、宣伝活動とは実際にどのような方法で行うことができるでしょうか。
ここでは、宣伝に使える手法例について具体的に紹介していきます。
ホームページ
宣伝活動においてインターネットの活用は必要不可欠なものになってきています。その中でも基盤となるのがホームページの活用です。
商品やサービスがインターネット上で販売するようなものでない場合でも、詳しい情報を得るためにホームページの情報を充実させておき、問い合わせや予約にも対応できるようにすることは、見込み顧客に商品を知ってもらい、購入につなげる宣伝活動の中で非常に重要な役割を果たします。
そして、ただホームページを設置しておくだけではなく、関連の検索キーワードで上位に表示されるようにコンテンツを増やしてSEO対策をしていくことや、初めのうちは広告を出して集客していくことも重要になってきます。
SNS
近年はSNSの活用も宣伝活動から外すことはできません。多くの人がスマホを使って情報収集をしていて、ただ単にインターネット検索しているわけではなく、多くの時間をSNSの閲覧に割いています。
特に若い世代は利用率が高いため、ターゲットが若年層の場合は効果的な宣伝方法で、企業SNSのファンになってフォローしてもらうことができればターゲット層に対して自動的に情報を流すこともできるようになります。
そして、ハッシュタグをつけての投稿や「いいね」機能などを利用して、ユーザーを巻き込んだ施策をすることもできます。フォローしてくれているユーザーが「いいね」や投稿をシェアしてくれることで、企業名や商品を知らない人に対しても存在を認知してもらえる可能性が高くなります。
SNSを活用する際には、膨大な量の情報が日々SNS上を流れていく中、印象に残る投稿をすることや、的確にターゲット層に必要な情報を伝えられるかが重要になってきます。
また、SNSの中でもTwitter、Instagramなど、媒体によって特徴や使うユーザー層も違うので、ただやみくもに情報を投稿するのではなく、それぞれの特性を持った媒体に合わせて情報発信していくことも大切になってきます。
メルマガ、アプリ
既存顧客に対してメルマガを送付することに加え、近年ではアプリにメールアドレスや個人情報を登録してもらい、クーポンや割引の情報などをダイレクトに届けることもできるようになってきています。
既存顧客にアプリを繰り返し利用してもらうことで、企業やその商品のファンになってもらいやすいというのが大きな魅力です。
ただ、初めに登録してもらうまでのハードルが高いので、登録に至るまでの道筋をしっかり設計しておくことも重要です。
メール広告については以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
動画配信サービス
近年ではテレビよりもスマホで動画を見る層も多くなってきてきます。YouTubeやTikTokなどの動画配信サービスを活用して文字や画像の情報だけではなく、よりわかりやすく、情報量も多い動画で訴求することも効果的です。
TVCMなどの従来の動画広告媒体と違って高額な広告出稿量も必要なく、SNSでバズれば大きな効果が得られることもあります。
チラシ、パンフレット
インターネットを活用した宣伝について紹介しましたが、一方で紙媒体の果たす役割も依然として大きいものがあります。
たとえば、目立つデザインやキャッチコピーなどで注目させ、商品やサービスのキャンペーンやセールの情報を多くの人に知ってもらう方法のひとつにチラシがあります。
チラシは費用面でもリーズナブルなので、個人商店から全国チェーン、中小企業から大企業まで様々な規模の企業が活用しています。
また、ターゲット層が多く集まる特定の場所でパンフレットを配布し、商品やサービスに興味を持っている層に対してより詳しい情報を提供し、購買につなげるのも効果的です。
ポスティング
不特定多数に対して投函するポスティングの効果も近年見直されてきています。
ポスティングのメリットとしては、コストが低いことや、即効性が高いといったことが挙げられますが、一番大きいのは特定のエリアに絞った宣伝が可能なので、地域に密着した事業や、エリアが限定されるサービスを広告する際には有効な宣伝方法です。
ポスティングが不特定多数に対して行うのに対して、主に既存顧客に対して投函するダイレクトメールも有効な手段のひとつです。ポスティングに比べて既存顧客に送っているので閲覧率が高く、購入にもつながりやすいという特徴を持っています。
ポスティングについては以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
ポスティングって何?ポスティングによる広告効果やそのメリットについて徹底解説!
サンプリング
紙のチラシではなく、街頭などで試供品を配布して実際に商品やサービスを使用してもらうサンプリングも宣伝手法のひとつです。サンプリングでは、実際の商品を配布することで、企業が発信する情報だけでは伝わらない良さや魅力をターゲット層に体感してもらうことができます。
また、サンプリングを通じて市場調査をすることもできます。商品の配布とあわせてアンケートやヒアリングを行うことで、商品に対するターゲット層の生の声を情報として集めることが可能です。
サンプリングにはいわゆる街頭サンプリングの他、見込み客が多く集まる施設や店舗でのサンプリングや、WEBやSNSを通じて申し込みしてもらうサンプリングなど、リアルな場で手渡す以外にも多岐に渡る方法があります。
サンプリングについては以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
サンプリングを使った広告・プロモーションとは? | サンプルを配布して実際に試してもらう広告手法
展示会、イベント
自社の商品をリアルな場で直接アピールできる展示会やイベント開催は、見込み客を大量に獲得できる宣伝方法です。
インターネット上で多くの情報を手に入れられるようにはなりましたが、リアルな場での情報収集を求めて展示会やイベントを訪れる人も多く存在しています。展示会やイベントはそのような見込み客に対して商品やサービスの特徴やメリットを直接、面と向かってアピールすることができるため、コンバージョンにつながりやすいという利点があります。
しかし、ただ展示会に出展したり、イベントを主催したりするだけではターゲット層を十分に集めることができないので、リアルな場を活用する際にも、ホームページやSNSなどのインターネットやチラシなどの紙媒体を活用して広告していくことも重要になってきます。
インフルエンサーマーケティング
近年、WEB媒体を使った宣伝方法の中で注目を集めているのがインフルエンサーマーケティングです。人気のインスタグラマー、YouTuberや、Twitterで多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーなどに商品やサービスの宣伝をしてもらうことで、消費者目線に立って商品を紹介できることが大きな利点です。
また、インフルエンサーが情報を発信することで、フォロワーがその情報をさらに二次的に拡散し、口コミの宣伝効果を高めることができます。
商品やサービスに合ったインフルエンサーを選ぶことで、ユーザーに対して好意的な認知を拡大し、ファンになってもらうことも可能になってきます。
インフルエンサー広告については以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
インフルエンサー広告ってどんな広告?| その種類や費用を解説!
まとめ
企業が自社の商品やサービスを消費者に知ってもらう方法は多岐にわたります。「広告」にもいわゆるマス媒体を活用したものを始め、OOHや交通広告、プロモーションなど、様々な方法が出てきており、他にも今回ご紹介した宣伝、広報、PRなど様々な手法が出てきています。
これらの広告、宣伝、PRといった言葉の定義は日々変わってきており、それぞれの活動の垣根はどんどんなくなってきています。その分、商品やサービスを宣伝したい企業の側にとっては、どういった方法を用いるのが効果的なのか、わからなくなる場面も多く出てくると思います。
そのため、これからは広告、宣伝する際に認知を広めたいのか、認知を広めた上で購入に結びつけたいのか、ファンを増やしたいのか、といった目的を明確にし、それに合わせた媒体や手法を選択していくことが重要になってきます。
今回の記事でご紹介した通り、宣伝が果たす役割は、認知拡大を担うことが多い広告と比べてコンバージョンにまでつなげることです。宣伝活動は不特定多数に対して認知拡大を狙う広告に比べてコストも安く済むことが多いですが、うまく活用しないと狙った費用対効果を出すことも出来なくなってしまいます。
商品やサービス、そしてターゲットとする層を明確にすることが宣伝活動においても重要で、それに合った手法を選択していくことで、ときに多額の予算をかけた広告以上の効果をもたらすこともできるのが宣伝のメリットです。