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SHElikesの熱量を絶やさない ユーザーコミュニティの舞台裏
SHE株式会社が運営する、女性向けオンラインスクール「SHElikes(シーライクス)」。受講生の多くは自分のキャリアに不安を抱えており、スキルを身につけることで「今の現状を変えたい」という強い思いを胸に秘めています。
しかし、シーライクスの真骨頂は、スキルを学ぶだけでなく、受講生同士の交流を通じて「マインドチェンジ」を促す点にあります。受講生主体の活発なコミュニティに学びと成長を加速させる仕組みが、随所に散りばめられています。
シーライクス独自のユーザーコミュニティ施策の裏側に迫るべく、コミュニティマネージャーの水谷氏に取材を実施。第2回では、シーライクス独自の取り組みや、コミュニティ運営に当たって注視しているポイントについて触れていきます。
先輩から後輩へ文化が伝播していく
編集部:コミュニティ運営において、重要視している指標はありますか。
水谷(SHE株式会社):大きくいうと、今は「コミュニティに主体的に参画できている受講生がどれくらいいらっしゃるか」を重視しています。その指標で具体的に追えるものとして、「コミュニティイベント参加者数」、「拠点イベント参加者数」、「SHEstation(※受講生同士や講師とのコミュニケーションツール)利用者数」、「SNSでのUGC数」などをみています。
例えば、銀座拠点であるSHE Ginza(※取材は銀座拠点で実施)では、定期的に交流会や自習勉強会など実施しますが、18時半から開催しても、毎回30人ほど参加があります。
編集部:どういった目的で来られるのですか。
水谷:イベントのテーマにもよりますが、もくもくと作業を進めたいって方もいれば、受講生と交流する目的で来る方もいたりと様々です。
自主勉強会では、参加目的に応じて空間を分けることで、参加者がやりたいことを叶えられるよう工夫をしています。
【SHElikesの銀座拠点(SHE Ginza)の様子。SHEらしい世界観が演出されている空間だそうだ】
その他、シーライクス受講生の先輩からナレッジシェアっていう時間もあって、例えば「キャリアチェンジできました」とか「シーライクスを通してフリーランスになりました」といった身近なロールモデルになる方に登壇頂き、シーライクスをどう活かしたのかを共有したり、激励の言葉をいただく機会もあります。
編集部:先輩が時間を取って来てくださるのですね。
水谷:そうなんです。
さらに言えば、SHE社員も元々受講生だった人も多かったり、シーライクス入会前に実施する体験レッスン担当者もシーライクスの受講生だったりします。だから、シーライクスの熱気がどんどん伝播していく。“シーライクスの文化”が先輩から引き継がれていくような流れになっています。
公式コミュニティ以外にも“自主”活動が盛ん
編集部:シーライクスのコミュニティページのヘッダーにある「自主企画」って何ですか?
【自主企画によるイベントの例】
水谷:19個の公式コミュニティがある事をお伝えさせて頂きましたが、それ以外にも自主企画として、受講生が自由に参加者を募ってイベントや勉強会を実施しています。
自主的に受講生が集まって作業時間を設定したり、「インテリア好きの方の交流会」、「東北に住んでる人の会」といった交流会、「Notion」や「STUDIO」などのツールを学ぶ会など、自発的に受講生の方が企画し、運営しています。ここにはSHE社員は特に介在しておらず、受講生が自主的に実施しているものです。
編集部:このイベントバナーは、その主催者が作っているという事ですか‥?
水谷:はい、このイベントバナーもシーライクスで獲得したスキルを生かして、運営者が自分自身で作っています。「バナーを1個作る」という行為がデザイン学習のアウトプットになっていたり、「イベント詳細ページ作成」や「集客」もライティングやマーケティングのスキルといった、シーライクスで学んだスキルを生かせる実践の場として、皆さん自主的に実施頂いています。
「受講生」と「SHEの社員」を繋ぐ立場
編集部:シーライクス内のコミュニティでの投稿もそうですが、他のSNS(Xなど)でも受講生の投稿を数多く見ます。
水谷:受講生の皆さんには、SHE社員と接するポイントがいくつかあるのですが、その中の1つで「ぜひ今日学んだことを感想ハッシュタグ『#シーライクス』をつけて、発信してくださいね」と必ずお伝えしつつ、“なぜやった方がいいのか”理由を伝える機会があります。
編集部:なるほど、投稿を促す仕掛けもあるのですね。その上で、ハッシュタグ「#SHE捗」をよく見ます。
水谷:実はそのハッシュタグ、数年前に受講生の方が進捗を「#SHE捗」って言って投稿で使っていたことがきっかけなんです。気が付いたら広まっていったっていうか。投稿してる先輩の姿を見て、真似して投稿されるっていう方が多くいらっしゃって定着しているイメージです。
【「#SHE捗」で検索すると日記のように学びや作業が書かれた投稿が出てくる】
あと、SNSで投稿を促す事例として「コミュニティイベントの感想の投稿」がありまして。
編集部:感想の投稿ですか…?
水谷:はい、コミュニティイベントって「参加してよかった」という感想をいただくことが多いのですが、コミュニティプランナー(イベントを運営する受講生)が、SNS投稿を意識してワンタッチツイート(クリックしたら、ハッシュタグも既に用意されててすぐ投稿できる仕組み)を用意してくださるんです。これは私たちからお願いしているわけではありません。
コミュニティプランナーが準備して、参加者がそれを使ってみんなで投稿しましょうっていう声掛けをしてくださったりします。
編集部:受講生の方の高いモチベーションがすごいです。
水谷:本当にそう思います。だからこそ、投稿を活性化させる意味でも、発信に対してしっかり応えられる体制を整えています。
受講生と最も距離が近い私のようなポジションは、受講生とSHE社員を繋ぐ立場でもあると考えていまして。
会社のメンバーに受講生の声や発信を共有したり、それに対するレスポンスを促したり。本当に地道ですが、SHE社員と受講生が繋がる機会を作る役割だと思っています。
【SHElikesコミュニティマネージャー 水谷 有沙氏】
実際、ありがたいことに「SHEの人がレスポンスしてくれて、それが嬉しかった」といった声は多く、ポジティブに受け取っていただいています。
編集部:「発信したら、誰かが必ず見て応援してくれる」という心理的安全性が活発化している大きな要因なのですね。
定量的な実績ではなく、定性的な側面で想いを語るイベント
編集部:シーライクスならではの、何かオリジナルな取り組みはありますか。
水谷:毎年1回、SHEアワードっていうイベントを開催しています。
“シーライクスを通して、自分らしい生き方働き方を実現した受講生の方をお祝いする”というコンセプトで開催しており、実際に受講生に登壇いただいてスピーチをして頂いています。
今年は大手町三井ホールとオンラインとで実施し、合計1,562名の方が参加してくださいました。
編集部:参加された1,562名のうち、どれくらいの方がスピーチするのですか。
水谷:5人です。エントリーシートは、「シーライクスを通して人生が変わった」とか「こんなふうに工夫をしたら変化を遂げられました」っていう、結構長い応募フォームをご提出いただきますが、毎年300人規模の応募があります。
こういった“アワード”って、定量的な側面で成果を出した人を対象にすることが多いと思いますが、このSHEアワードで大事にしているのは「全ての受講生の進歩をたたえ合うこと」、その上で「一緒にまた明日から頑張っていこう」という気持ちになっていただけるような、イベントにすることを重要視しています。
なので、自分がどれだけ頑張ったのかだけじゃなくて、「こんなふうに頑張ったら、あなたも変われるよ」って具体例を交えたり、頑張ろうと思える言葉を添えて伝えるスピーチになっている点も特徴です。
その人なりのリアルなストーリーなので共感されやすく、本当にみんな涙を流して聞いていたりされていて。皆さん、同じバックグラウンドだからこそっていうのもあるんだろうなと思います。過去には「SHEアワード」がSNSでトレンド入りすることもありました。
編集部:自分だけじゃなく、みんなで一緒に頑張るって姿勢が強く根付いているのですね。
【SHE AWARDS 2024 当日の様子】
水谷:自身の経験で誰かの力になれたらっていう方が本当に多くいらっしゃるんです。
アワード登壇者の中には、SHEに入会するまでは自信がなく挑戦することが苦手だったところから、SHElikesで周りの方と関わり合いながら少しずつ行動を重ね「自分にもできるかも」と自信をつけた方がいます。そこから、フリーランスのライターとしてのキャリアを実現したことで、自分の挑戦を後押しする存在となったコミュニティに感謝の気持ちを伝えたいという思いを持って、スピーチしていただきました。
熱い思いを持った人を絶やさない
編集部:コミュニティ運営における、事業への影響度合いは大きいのでしょうか。
水谷:はい、サブスク型の収益モデルである事からも、コミュニティの存在で継続率に繋がっていくので、そこは数字インパクトは大きいかなと思っております。
あと、広報PRの観点ではありますが、コミュニティの存在で対外発信する方が増えているメリットがあります。自然発生的に広がっていくところで、「女性キャリアスクールならシーライクス」と想起されやすいところは大きいと思っています。
一方で、規模の拡大に合わせた「コミュニティ文化の維持」ってすごく難しいという実感もあります。その中でも私達が重要視しているところは、コミュニティマネージャー(SHE社員)がハブになる存在となり、受講生の声を聞いて、それを社内にしっかり共有していく。そして受講生の方に「ちゃんと見ています」っていうスタンスが分かるようにすることが大事だと考えています。
熱量を持って、シーライクスのコミュニティを良くしていきたいと熱い思いを持った人を絶やさないっていうところを大事にしながら、それを伝播していく事が私たちの役割だと思っています。
編集部:今後の展望について、最後に教えてください。
水谷:コミュニティはスキル獲得より「マインド」が変わるきっかけになると思っています。
その原動力になるのが、シーライクス受講生同士の出会いです。だからこそ、コミュニティ運営を通して引き続き、よい出会い作りをしていきたいと思っています。
あと、現状利用者の多くが東名阪のエリアだったりするので、国や自治体とも連携しながらもっと広く、多くの方にサービスの提供ができればと考えています。
SHEでは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」というビジョンを掲げており、ゆくゆくは日本の女性の課題だけでなく、より多くの人が性別や年齢でキャリアを諦めない社会にしていきたいと考えてきます。日本の女性のキャリア課題でいうと、出産後、結婚後でも続けることができるか、ということがよく言われますが、それでも日本は産休・育休制度が存在します。一方で、他の国や地域ではもっと厳しい状況も存在します。女性のキャリアを支援することは、日本だけの課題でなく、もっと世界でも展開できる可能性があると思っています。
多くの女性のキャリアを支援してきて、学習データも蓄積されているので、もっと仕事に繋がりやすいとか、転職を実現しやすい状況を作っていくためにアップデートしながら、再現性の高い顧客体験を作っていければと思っています。
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