ヒガシマル醤油「東にハマりたい」創業400年超の老舗が挑んだ驚きの広告

更新日：2025年03月03日

ヒガシマル醤油「東にハマりたい」創業400年超の老舗が挑んだ驚きの広告

兵庫県たつの市に本社を置く、創業400年以上の歴史を持つヒガシマル醤油株式会社。「うすくち醤油」や「うどんスープ」などの調味料を製造・販売しており、関西を中心に多くの方に支持されています。

今回、2024年12月に首都圏エリアにて実施された「うどんスープ」の広告キャンペーンが話題となりました。この広告施策について、ヒガシマル醤油株式会社の窪薗氏と、企画・制作を行った株式会社博報堂の高木氏、小林氏、大東氏の4名にお話を伺いました。

地域で異なる食文化関東での定着化を目指す「うどんスープ」

ヒガシマル醤油の商品や顧客層について教えてください。

窪薗（ヒガシマル）：うすくち醤油をはじめ、様々な液体・粉末の調味料の製造と全国販売を展開しています。

当社の商品は家庭用商品と業務用商品があるので顧客層がそれぞれ異なりますが、家庭用商品は一般消費者の方で、特に家庭で調理をされる方、食事をされる方などです。

業務用商品については、飲食店やホテル、スーパーなどで調理されている方や食に携わる職業をされている方が顧客層となります。当社の業務用商品はお総菜や冷凍食品など様々な製造物の味付けにご活用いただいています。

出典：うどんスープブランドサイト

関西では多くの方に認知されている商品だと思いますが、今回なぜ首都圏エリアで広告キャンペーンを実施することになったのでしょうか？

窪薗（ヒガシマル）：当社の主力商品であるうすくち醤油やうどんスープは西日本エリアでは様々な料理に使っていただき、多くの方に親しんでいただいているのですが、東日本エリアではまだ定着していないと感じていました。全国の1／3の人口が首都圏に集中しているので、もっと東日本エリアでも当社の商品を定着させたいと考え、実施を決めました。

「ちょっくら東にハマってきます」ストーリー性も重視したデザイン

今回の広告施策の企画に至った経緯を教えてください。

高木（博報堂）：元々、関東エリアに向けて何か面白いことをしたいという要望をいただいていました。

検討を進めていく中で、これまでは関西に根付いている資産をベースにしてきた分、関東に攻めていく際には何かしら別のアプローチを仕掛けていった方が、関東の方にはより効率的にアプローチできるのではと考えました。

そこで、関西の会社である「ヒガシマル醤油」の社名に「東（ヒガシ）」が入っていることを逆手に取り、「ヒガシマルは東にハマりたい」というコピーを考え、駅名に「東（ヒガシ）」が付く駅をジャックしていくという広告施策を企画しました。

【東大島駅に掲出された広告のデザイン】

各駅ごとにクリエイティブが異なっていましたが、どのように制作されたのでしょうか？

高木（博報堂）：各駅ごとのコピーについては、社内メンバーのつてで各駅に住んでいる方々にアンケートをとって、それをベースに考えました。

クリエイティブについては、CMでおなじみのキャラクターたちを各駅ごとにカスタマイズしたビジュアルで登場させて、その駅のモチーフとなるようなデザインにしています。

【一度は聞いたことがある、ヒガシマルのCM】

CMキャラクターに服を着せたり、カスタマイズしてクリエイティブにあしらうというのは初の取り組みで、各駅ごとのモチーフに合わせて作るのは大きなチャレンジでした。

また、首都圏での広告展開で最も悩んだのは、既存のブランド資産の活用方法でした。特にうどんスープは、キャラクターと共に親しまれている人気商品です。このキャラクターを活用することで、既存のファンの方々にも共感していただけると考え、広告に取り入れることにしました。

【東京競馬場に近い東府中駅に掲出された広告】

広告を制作する上でどんなことに苦労されましたか？

高木（博報堂）：今回、28駅それぞれの駅の近くに住んでる方々に共感してもらえるようなクリエイティブを検討する中で、その駅を象徴する施設をコピーやモチーフとして使いたいという場面が多々ありました。その中で、すべての施設に一つひとつ、許諾を取っていくというところは大変でした。

大東（博報堂）：ある企業様は、メールと電話だけでは前に進めることができませんでした。そんな中、東京へ行く予定が入ったため、この機会を活用して直接訪問。アポは取れていませんでしたが、企画書と名刺を持参し、概要を説明させていただきました。

思い切って訪問して良かったことに、翌日先方から電話があり、提案を承諾いただくことができました。この地道な許可取りの活動が実を結び、広告施策を無事に実現できたことを、今でも嬉しく思っています。

高木（博報堂）：今回のクリエイティブは、徹底的にその駅について調べ上げ、クリエイティブ制作を行ったり、様々な施設への許可取りを根気強く行ったり、みんなが協力し合って作り上げたものだと思っています。

今回様々なクリエイティブの広告を出されましたが、その中でも特に気に入ってらっしゃるクリエイティブはどれでしょうか？

高木（博報堂）：どれも可愛らしいデザインで気に入っているのですが、一つ挙げるのであれば、東京駅に掲出させていただいた広告ですね。横長のポスターで、今回タイアップした全駅名がバーっと並んでいて、今回の企画のまとめのような広告となっています。このクリエイティブは今回の企画の“扉”として、とても分かりやすい広告だったなと思っています。