話題化へ導いた地域セグメントとデジタルスタンプラリー
今回、あまり有名な媒体を活用されていませんが、媒体選びにも何か狙いがあったのでしょうか？
小林（博報堂）：今回の広告施策のポイントは、規模の大きい有名な媒体に掲出するのではなく、地域密着のローカルな媒体を活用し、その地域ならではのコピーを入れたり、SNSなどと掛け合わせたりすることで話題化させることを狙った点です。結果的に上手く実現できたと感じています。
高木（博報堂）：今回はあえてターゲットをセグメントすることで、その地域の方々が話題化してくださいました。マス層へアプローチできたわけではないのですが、SNSでは局所的な盛り上がりが拡散していくことがあるので、今回の施策ではその効果を狙いました。
例えば、東大和市駅に掲出した広告クリエイティブの場合、東大和市以外にお住まいの方が見ても、正直ピンとこない内容だったと思います。しかし、東大和市にお住まいの方は「この広告ではあのことを言ってるんだ」「あれをデザインに使ってるんだ」というように共感してくださり、この広告のことを話題にしてくださいます。
【東大和市駅に掲出された広告】
このように、それぞれの駅ごとに広告についての発話が生まれていき、一つひとつの火種は小さいですが、それが同時多発的に燃え上がり、大きな炎になっていくというのを期待しました。
また今回の企画では、ファンの皆さんにより楽しんでいただけるよう、駅の広告を活用したデジタルスタンプラリーも実施しています。
大東（博報堂）：広告掲出して最初のうちは、駅広告をたまたま見かけて写真をSNSに投稿してくださるような方が多かったのですが、多くの方々が発話してくださり、デジタルスタンプラリーという企画の情報がどんどん拡散されていきました。
広告掲出は月曜日から開始したのですが、週末には「ちょっと広告見に行ってきました」というような投稿がとても増えました。また、一つの投稿のスレッドに全駅分の広告の写真をツリー投稿し「全部行きました」という報告ポストを出された方などもいらっしゃいました。
ただ広告を出すだけでなく、ユーザー参加型とすることでより多くの人が発話してくれたという印象があります。スタンプラリーオタクの方にも参加していただくなど、想定外のユーザー層からも反響があったので、大きな話題になったという手応えは感じました。
今回、スタンプラリーの範囲がかなり広範囲で、私も2日間かけて全駅回りましたが、かなりの労力がかかりました。そんな中でも想定の2～3倍の方が全駅達成されていたので驚きました。
関西だけでなく全国の家庭料理の“定番”を目指して
今回の広告施策の反響について教えてください。
小林（博報堂）：今回の広告施策によって、様々な発話が生まれました。今回は無人駅にも広告を出したり、交通広告が出せない場所には電柱広告なども出したりしたのですが、うどんスープファンの方々がSNSで「ヒガシマルさん、わざわざこの駅にまで広告出してくれたんだ！」と話題にしてくださいました。
【東福生駅周辺に掲出された電柱広告】
他にも、この広告をきっかけにラーメン店を営む方が「ヒガシマルさんの醤油を使ってラーメンを作っています」とSNSで投稿してくださったり、SNSでの反響の大きさがとても印象的でした。
その他にも、把握している限り200件以上の記事で紹介されたり、「ヒガシマルは東にハマりたい」というようなキーワードで1万件以上の投稿が確認できたりもしており、多くの反響や注目を得ることができたと感じております。
とても斬新でユニークな広告施策となりましたが、今回の施策についてどのように思われましたか？
窪薗（ヒガシマル）：実は、うどんスープのCMに登場するキャラクターについては、衣装などを着せたりしたことがなかったんです。なので、広告をストーリー仕立てにして、キャラクターたちにネクタイを締めさせて出張に行かせる、という発想には驚きました。
これまで、東日本エリアの方にもアプローチし続けてきましたが、今回の広告施策も含め、より当社のことを知っていただくという十分なきっかけになったと感じています。SNSなどを中心に話題にしていただいただけでなく、「東」のつく駅への広告掲出中には、その駅周辺の一部のスーパーマーケットなどでも同じポスターを貼っていただいたりしたので、より消費者とお近づきになれたのではと思っております。
【東高円寺駅構内に掲出された広告】
当社は歴史の長い企業なので少し硬いイメージを持たれがちですが、こうしたユニークな発想のおかげで、新しいイメージの確立という一歩を踏み出せたと思っています。
2023年に実施された広告も、おなじみのうどんスープのCMソングの歌詞がコピーとなっていてユニークな施策でした。
窪薗（ヒガシマル）：うどんスープのCMは西日本エリアと東日本エリアそれぞれで放映しているのですが、実はCMソングの歌詞が若干異なっています。うどんスープでできる料理名について、関西と関東とで呼び方が異なるものがあるので、定義があやふやな料理名は避けるため、西と東で歌詞が少し違っているんです。
【西日本版のCM】
【東日本版のCM】
2023年に実施した広告には、あえて関西バージョンの歌詞を掲載しました。関西の方は自然と口ずさめますが、関東の方は歌詞が違うので違和感を感じる、というのが狙いでした。
六本木駅のエスカレーターを掲出場所として選んだ理由は、長い距離のエスカレーターで駅利用者がCMソングの歌詞をすべて見終わるまでエスカレーターに乗っているという媒体の特徴や、人の往来が多い六本木という土地柄が好条件だったからです。
この六本木駅の広告のほかに、東京駅と品川駅でも広告を掲出したのですが、こちらはCMソングの歌詞だけでなく、関西人が思う「うどんあるある」を掲載しました。東京駅・品川駅については、時期をあえて年末にして、帰省などで多くの人が目にしやすい2駅で実施しました。当初の狙い通り、多くの方に見ていただけて、話題化に繋がったと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
窪薗（ヒガシマル）：関西だけでなく全国において、毎日のお料理の中で、当社の商品を使っていただくことを定番化させたいですね。うどんスープのパッケージに青い星が7つ付いているのですが、これは1週間の7日間を表しており、毎日でも使ってもらいたいという思いが込められています。うどん以外にも鍋、パスタなど、いろいろなメニューに使えるので、飽きずに使い続けてもらえるということを今後も伝えていきたいと思っています。
小松未知子 アドクロ編集部
眞鍋早来 アドクロ編集部
記事ランキング
